考福2.彼女の未来を解いた日
【タワー】
登る。昇る。
己の未来を隠すよう、閉ざすよう。
降る希亡の中、希望を抱いて歩みを止めない。
音の鳴る瞬間、視界がその歩みを止めさせる。
この名は、アメ。
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「とは言っても、何か手がかりになるものは…」
僕の記憶を呼び覚ます手がかり。それらしきものはどこにも無かった。申し訳なさそうな表情に変える。
「んー…じゃあとりあえず俺が有他とあった場所にいこう。」
「ここだ。」
ゴミ捨て場だった。僕はここで倒れていたという。
「それはもう、ボロボロな姿で、ぐったりしてたぞー。」
そうだったのか。一体誰が、いつ、僕を捨てたのかよく分かっていないが、人間が行ったことに間違いはないようだ。
一瞬、記憶の一部が現れる。
「僕を捨てた人は、白い服を着ていた…。気がする。」
「え?」ユーリさんは驚いた様子だった。
「何か分かるかもしれない。俺、色々漁ってみるよ。」
「ありがとうございます。」
ユーリさんの話すスピードが、少しだけ早いように思えた。
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「雨、降ってきたね。」
幸せに満ちた黒目。
「見て見て黒海!タワー!」
外気と手を繋ぐ白い歯。
「あんまりはしゃがない、雨なんだから。」
「えー、でも早く登りたいし〜…」
「分かった、分かったから!」
「先行っちゃうもーん」
後ろに1歩、また1歩。活発な紅色に赤色を塗り重ねる。
「だぁもう待てってー!」
「待ちませーんだ!ふふふ!」
笑顔で後ろを前にする。
その瞬間、彼女の未来は解かれた。
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