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都市対抗野球大会

 さて、前話で社会人野球の歴史を追ってきましたが、ここからは現在の社会人野球の大会を紹介していきたいと思います。


 社会人野球の大きな大会は以下の3つです。


①都市対抗野球大会

②社会人野球日本選手権大会

③全日本クラブ野球選手権大会


 このうち、③についてはクラブチームしか出場権が無いので、企業チームを含めた社会人野球の頂点を決める戦いとしては、①の都市対抗、②の日本選手権が2大タイトルとなっています。




◆都市対抗野球大会


 例年7月に東京ドームで開催される大会。1927(昭和2)年、日本の各都市を代表するチームを競わせる大会、つまり街の代表同士が競う大会として開催された経緯から、チーム同士の戦いではなく街同士の戦いという側面があって、昨年の決勝を例に取ると、


 東京都代表・東京ガス 対 横浜市代表・ENEOS 


 というように、チーム名の前に所属する自治体の名前が冠されて、企業名ではなく自治体名メインで紹介されます。


◆社会人野球日本選手権大会


 例年11月頃に京セラドーム大阪で開催される社会人2大大会の1つ。


 日本選手権と言うくらいですから、一番権威のある大会のように思われるかもしれませんが、実を言うと社会人野球においては、都市対抗の方が歴史もあって相対的に人気が高く、日本選手権はちょっと影の薄い存在だったりする。


 大きな理由としてはその開催時期にあって、現在の社会人野球はプロ野球選手になるための登竜門のような位置づけでもありますが、新人を獲得するためのドラフト会議が開催されるのは10月後半。つまり、11月開催の日本選手権はプロを目指す選手のアピールの場として機能しておらず、7月に開催される都市対抗がプロへアピールする実質最後の大会となっており、日本選手権と言いつつその立ち位置がやや微妙な感じなんです。


 なので連盟の方も対策として、「ならドラフト直前の10月頭に開催してはどうか」なんて意見もあったようですが、残念ながら京セラドームはオリックスバファローズの本拠地。10月頭はプロ野球シーズンが終了するかしないかのタイミングであり、バファローズがクライマックスシリーズ、日本シリーズに進出した場合、会場が使えないというリスクがあるのです。


 ちょっと前なら、バファローズが優勝を争うことなんて無い無いと笑い飛ばせました。担当者がどうせ出れるわけがないと思ったかは分からないけど、実際にクライマックスシリーズに進出したら球場を使うであろう期間、アイドルかなんかのコンサートに貸し出しちゃったこともありますしね。


 しかし今やパリーグ2連覇中ですからね。前倒しはかなり厳しいという状態です。




 どちらも本大会に出場できるのは32チーム。両大会で予選の地区割りとか出場資格が若干異なるところもありますが、基本的に予選大会を勝ち抜いてきたチームが本戦に進みます。


 ちなみに言うと、関東に住む私は日本選手権を映像でしか見たことがありません。


 こんな偉そうに社会人野球に注目しろとか言っておいて申し訳ない。が、そんな事情なので、ここからは都市対抗を中心に話をさせてもらいます。




 都市対抗の地区予選はまず都道府県単位で1次予選を戦います。その後2次予選(東海とか近畿など全国11のブロックに分かれる)のトーナメントを各地方で勝ち抜いたチームが本戦出場権を得るシステムです。出場枠の少ない地区は総当たりの一発勝負なんてところもありますが、1度負けても敗者復活のトーナメントでもう1回チャンスがあるという地区が多いですね。


 近畿地区を例に取ると、本戦出場枠は5つ。まず全チームがトーナメント戦を行い、優勝者が第1代表となります。一方で準決勝、決勝で負けたチームは第2代表決定戦、1,2回戦で負けたチームは第3代表決定戦の敗者復活トーナメントに進みます。


 第2代表では、準決勝で敗れた2チームが戦い、勝った方が決勝で敗れたチームと本戦出場を争う。ここでも負けると今度は第3代表の決勝にシードされ、1,2回戦で負けたチームの中から勝ち上がったチームと第3代表の座を争う。


 といった形で第5代表まで決めていきます。基本的に第1代表決定トーナメントで上位に進んだチームの方がチャンスの多いシステムですが、何度も負けると「もう後がない」と、心理的なプレッシャーがのしかかってきますし、実際に第1代表決定戦で決勝まで進んだのに、その後の代表決定戦をことごとく負け続けて本戦出場を逃したチームもあるので、中々難しいところもあります。


 出場枠の多いチームはそれだけ参加数が多いということです。例に挙げた近畿地区は過去に本戦で4強以上に勝ち残った経験のあるチームだけで7チーム、他にも実力のあるチームがひしめく激戦区。予選とはいえ気の抜けない戦いなのです。それこそ最後の椅子を賭けた戦いなんてプロ野球では感じることのあまり無い、悲壮感が半端ないピリピリした空気で試合してます。


 それで負けた方なんかお通夜状態です。いい年した大人がガチ泣きします。それだけ本気で向き合っているということの証です。だからマニアは地区予選からチェックしてます。本戦よりお客さんが少ないのでゆったりと見ることができるのもオススメポイントです。あ、この人プロ野球のスカウトかな? って人も時々見かけます。




 他に都市対抗ならではの制度として、「補強選手」制度というのがあります。


 これは本戦出場を決めたチームが、地区予選で敗退したチームからその大会期間限定で選手をレンタルすることができる制度で、1チーム最大3名まで補強することができるものです。


 元々はプロ野球が2リーグ分立となったとき、多くの選手が社会人野球から引き抜かれて数が足りなくなったことを受けて、レベルの低下を懸念した連盟が、地区予選で敗退したチームから選手を期間限定で借り受ける制度として始まったものですが、今でも何故か続く制度です。


 強豪チームでも予選で敗れることがあるのは前述のとおりなので、そのチームの主力選手の中から、自チームの弱点を補えるメンバーを補強できればかなりの戦力アップとなり、活用次第で本戦の結果が変わることもありえます。


 ただし、必ず補強選手を取らなくてはいけないルールはありません。補強をしないパターンは大きく分けて2つあり、1つは自チームの戦力で十分戦えると判断した場合。もう1つは良い選手が残っていない場合です。あと、前年優勝チームは予選無しで出場権を得ているので、補強制度は使えません。


 補強選手の指名順はその地区の予選を早く勝ち上がったチームから。先ほど挙げた近畿の場合、第1代表から順に選んでいくのですが、仮に第1から第4代表までが3人ずつ、計12人を補強した場合、最後の第5代表の順番になると、欲しい選手が残っていないことも多く、補強しない、もしくはしても1人か2人なんてことも往々にしてあります。


 他の例で言うと、南関東地区(千葉、埼玉)は強豪と呼ばれるチームが4つ(日本通運、Honda、JFE東日本、日本製鉄かずさマジック)に対し出場枠が3つ。西関東(神奈川・山梨)は3つ(東芝、ENEOS、三菱重工East)に対し枠が2つ。順当に勝ち進むと敗れた1チームが補強選手の草刈り場と化します。もし本戦で勝ち進んで同地区同士のチームで対戦となった場合、補強選手で敵味方に分かれるなんてこともあったりします。それはそれで面白い。


 そして、選手の方にも補強されるメリットがあります。この大会では10年連続本戦出場した選手を表彰する制度があるのですが、自チームだけで10年連続突破するのは至難の業。そこで補強制度が生きてきます。


 補強選手として違うチームで出場しても連続出場にカウントされるので、実力のある選手は自チームが予選で負けても補強で選んでもらえれば連続出場が果たせる。10年連続出場は選手個人の力量を評価する表彰というわけです。


 もう1つのメリットは、補強で参加したチームが優勝すれば、翌年の予選にそのチームが出場しない=出場枠を争うライバルが1つ減る。と言うことにあります。


 本戦出場の常連ではない中堅チームから補強された選手は特にその思いが強いようで、自分が活躍して補強チームを優勝に導けば、次年度の予選で自分のチームが本戦に出るチャンスが増えると張り切るのです。


 実際にとあるクラブチームの選手が補強で選ばれ、その補強チームが優勝したことがあります。


 次年度、自チームで本戦出場を狙ったその選手は、残念ながらあと一歩で出場を逃しましたが、そういった夢を追いかけられる制度でもあるのです。

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