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第7話:母が訪ねて三千里07


「ゴホン」


 と担任の咳払い。


 そして漸く異界が解ける。多数多方向から憎恨泥濘の視線を感じる。


 ――うーん。普通って何かね?


 そんな哲学を考えてしまう俺だった。


「ではホームルームの続きだ」


 そういえばそうだったな。


「分かっているだろうが二学期最初の文化祭が二週間後に迫っている。各サークルの部員は奮起するように」


 ちなみに鶏冠高校は無駄にサークルが多いため教室単位ではなくサークル単位で文化祭の催し物を開く。帰宅部だけが例外か。そんなこんなで後は夏休み中の模試の結果が返されて、幾つか連絡事項が話されると担任はホームルームを終えた。担任が教室から出てパタンと扉を閉めるのが早いか、


「「「「「ゴールドーンさん!」」」」」


 男子女子問わずフレイヤに話かける愛すべきクラスメイトたち。お馬鹿さんの集まりだ。とはいえ、あまり人のことを言えた義理でも無いな。


「どこから来たの!」


「電話番号交換しようよ!」


「これ俺のラインID!」


「うちらのグループ入らない?」


「私たちのサークルに入部しない?」


 などなど。人気者も大変だ。消化事項なのでしょうがない。美少女が一度は通る道だ。実際に鏡花と朱美も入学当初に似たような目に遭った。今では『鐵金也の嫁』認定されている。…………それはそれでどうだろう?


「ん~……」


 俺は立ち上がる前に背筋を伸ばす。そんな俺の首根っこを掴んでグイと後方に引っ張って倒す人物。俺の後ろの席なのだから必然フレイヤに決まっている。体ごと持って行かれて後頭部が柔らかい何かにダイブ。それがおっぱいだと二秒後に気づいた。


「金也ちゃん」


「何でっしゃろ?」


「一緒に帰ろ?」


 うわー。素で言うかよソレを……。プヨンとおっぱいの反動で体勢を立て直し、俺反転した。待っていたのは彼女のニコニコ笑顔と、クラスメイトの殺意および軽蔑の視線。


「…………」


 振り返らなきゃ良かった。後悔先に立たず。これは言葉とは当たり前すぎて諺じゃ無いと思うのであれども……。


 とまれ、


「断る」


 キッパリ言って俺は席を立った。


「兄さん?」


「金ちゃん?」


 だから何で俺を睨むのよ。原因を作ったのはフレイヤだろう。そんな彼女は、


「それでは私はこれで」


 あらゆる誘いをはね除けて、俺たちの後を追ってきた。クラスメイトたちの恨み辛みの視線が痛い。


 俺ぁ何もしとらんじゃあないですか……。


 面倒だから抗弁はしないが。


「今から帰り?」


「いや。サークル活動」


「サークル活動ね」


「お前に付き合う暇は無いぞ」


「金也ちゃんはクールだね」


「……………………」


 面倒が嫌いなだけとも言える。


「文芸サークルでしょ?」


「何故知ってる?」


「事前に下調べはしてきたから」


「へぇ」


 俺や鏡花や朱美の名前を知っていたのもソレか。


 ちなみにサークル棟が教養棟とは別にあって、あらゆるサークルが部室を持っている。うちもその一つ。俺と鏡花と朱美だけの弱小サークルだ。ところで通路をすれ違う度に生徒が俺らに驚くのは何とかならんのか? 特に目新しい巨乳美少女は噂が噂を呼んでちょっとした炎上になっている。あくまで生徒たちの集合無意識下でな。


「それでさ」


「へえへ」


「建前ではサークルって言い張ってるけど結局鏡花ちゃんと朱美ちゃんを隔離するための部活でしょ?」


「どこまで調べた?」


「失礼にならない範囲で」


 ちなみに後にコレが嘘だと判明する。


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