第40話:涙の意味07
で、使用人を見送った後、放課後になる。
俺たちは部室に足を運んだ。
エアコンを点けて涼風の中、文芸サークルの活動をする。
メイド服の作製についてはフレイヤ邸でやっているため学校では行えない。家庭科室は文化祭の衣装作りを望む生徒で予約いっぱい。こんな弱小サークルが割って入る余地がないのだ。
では何をするかなら、
「沸騰してすぐのお湯は厳禁だよ?」
「はい」
教養を修めたフレイヤが朱美に茶の淹れ方を教授していた。茶葉は最高級品。さすが財閥の御令嬢とは思うが、さて……そこまで本気にならんでもとも思う。
「金ちゃん。どうぞ」
朱美が淹れた紅茶を俺に差し出した。
「ども」
受け取って飲む。
「へえ」
ポロッと感心が漏れた。
「どう?」
「美味い」
率直に言った。雑味がなく飲みやすい。香りもいつもより高く、素人である俺をして違いの分かる紅茶だった。
「すごいな」
「フレイヤの用意した茶葉が凄いんだよ」
「謙遜謙遜」
フレイヤが朱美の肩をバシバシ叩いた。
「にゃはは~」
と笑う。
「金也ちゃんのお嫁さんになりたかったらこれくらいは出来ないと私が認めないからね」
――何できさんに認可を得なけりゃならんのだ。黙っているけども。
ちなみに鏡花は紅茶やコーヒーの淹れ方に一家言があるため練習には参加していない。で、読書に没頭している……と思いきや、
「ふえええ……」
と泣き出した。
「はいはい」
嫌な予感が当たった。鏡花のすぐ隣に席を移して、その頭部を抱きしめる。
「ふえ……ええええ……」
鏡花は泣き虫だ。よく泣く。慰めるのは兄の仕事。それは俺たちが兄妹となってからの鉄則とも言える。
 




