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第39話:涙の意味06


「…………」


 嘆息。


 教室の愛すべきクラスメイトたちはメンインブラック……フレイヤの使用人たちに怯えている様子だった。さもあらんがな。


「退学で」


 サクリと言ったフレイヤに、


「待たんかい」


 俺がツッコむ。


「なぁに金也ちゃん?」


「可愛い悪戯程度で退学処分は過分だろ」


「何言ってるの?」


 本気で「――理解できない」と碧眼が語る。碧玉の瞳には一切の躊躇が存在しない。


「金也ちゃんを傷つけたんだよ? 私の最も大切な宝物を。むしろ退学程度で済んで万々歳じゃない? その気になれば家族ごと破滅させてる所なんだけど」


「むしろそうしてください」


「同意だね」


 鏡花と朱美まで物騒なことを言い出した。


「お前ら俺を好きすぎだろ……」


「金也ちゃん可愛いから」


「兄さんは優しいですから」


「金ちゃんは格好良いし」


「好きにしろよ」


 他に言う言葉を俺は投げ捨てた。多分このかしまし娘には何を説いてもしょうがない。そんな確信があった。であれば譲歩すべきはこちらだ。


「退学反対」


 と叫べば、より過激な方法論に移行する可能性がある。こちらの承諾も得ずに。結果、不幸をばらまくのはあまり気持ちの良いものでもない。


 俺自身、


「指を切った程度で大げさすぎるだろ」


 なんてフォローしたいが、かしまし娘にとっては天変地異のような事柄に相違ない。鈍感主人公じゃあるまいし、その程度は理解できる。


「愛されてるな俺は」


 嘆息。コーヒーを飲む。


「愛してるよ金也ちゃん」


「愛しております兄さん」


「愛してる金ちゃん」


 さいですか~。


 三者三様の理由だろうが真摯な言葉ではある。それをもっと社交性の方面に向ければ俺とて嫌がらせを受けずに済んだものの……。見ていた資料を机に置く。


「ではその通りにしなさい」


 フレイヤが使用人に命令した。


「承りました」


 慇懃に一礼。可哀想に。想像力の貧困さがこの際の失敗だ。喧嘩を売る相手を間違えた。


「自分が嫌がることを他者にされればどんな気持ちになるか?」


 ことその一点を想像出来るか出来ないかで人生の明暗は分かれる。ま、コレも一つの教訓ってことで。


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