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第36話:涙の意味03


 気づけばフレイヤ邸の寝室。そのベッドの上だった。


「……懐かしいな」


 泣き止まない鏡花を慰めた日のことを夢に見た。あるいはあれからだろうか。鏡花がブラコニズムに傾倒したのは。


「兄さん。兄さん」


 とインプリンティングした雛鳥の様に俺に懐いたのは。


 とりわけ特別なことはしていない。俺には親を殺して思うところがなかった。鏡花は実父の死に涙した。そこには明確にラインが引ける。であるから、


「鏡花なら答えを知っているかも」


 そう思ったのだ。結果は収穫無しであっても。


「よっと……」


 俺以外の誰も居ないベッドから抜け出す。欠伸をしてダイニングへ。ダイニングに直結しているシステムキッチンでかしまし娘が料理をしていた。


「毎度毎度飽きないねお前らも」


 九月も一週間とちょっと過ぎた。鶏冠高校は目前に文化祭を控えている。そしてフレイヤは鏡花と朱美と肩を並べて昼食の弁当を作るのがルーチンワーク。朝食と夕食は使用人が作ってくれるのだが……。


「すんません」


 控えている使用人に声をかける。


「コーヒーを」


「承りました」


 そして朝のブラックコーヒーを飲んでだらだら。文化祭に向けて邁進してはいる。自作で縫っているメイド服もそろそろ出来上がるだろう。


「何で俺までメイド服?」


 結論と了解は揃っていて反論も出来ないも、そう思わざるを得ない。コーヒーを飲む。黒を基調としているエプロンドレスだからメイド服兼ゴシックロリータ風ファッションなのだが……。黒いロングヘアーのウィングも完備。涙が出るな。


「何を作ってる?」


「卵焼き!」


「八宝菜!」


「煮豆!」


「ふーん」


 かしまし娘の腕ならゲテモノは出てこないだろう。コーヒーを飲む。しばしかしまし娘を肴にコーヒーを飲んで、それから朝食。食べ終わるとクールビズの喪服姿になって(ってのも白シャツに黒のトラウザースだからだ)俺たちは登校した。


「我々はー! 金也の不当には決して屈せずー!」


 相も変わらず乙女解放同盟はシュプレヒコールの波に乗っていた。


 鏡花。朱美。フレイヤ。この超絶かしまし娘を独占すれば不満も出ようものだろう。


 ――知ったこっちゃないね。


「金也ちゃん大人気」


「顔だけが自慢だからな」


「嘘つき」


 朱美が半眼で言った。


「ですね」


 鏡花まで便乗してきた。


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