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第23話:乙女心の行く先は03


「準備は出来ましたか?」


「問題ないぞ」


「では参りましょう」


 まるで当たり前のように鏡花は俺の右腕に抱きついた。それを見咎めた朱美が、


「あたしも!」


 と左腕に抱きつく。


 フレイヤはそんな光景を微笑ましげに見つめていた。


「何か文句でも?」


 俺が視線で刺すと、


「いやぁ。格好いい男の子に生まれてお母さんは誇らしいよ」


 フレイヤはサラリと受け流すのだった。


「しっかし……」


 お母さんねぇ……?


 良くもまぁ裁けない罪で転生して言えた義理だ。


「金也ちゃんはモテモテだね」


「鏡花と朱美は趣味が悪いからな」


「偏に兄さんが格好良すぎるのがいけないんです」


「そうだそうだ」


「好きにしろよ」


 反論すらも億劫になって俺は両腕に妹と幼馴染みを抱きつかせ、三歩後ろにフレイヤを従えて登校した。元より鏡花と朱美は絶世の美少女だ。そしてそれはフレイヤにも言える。むしろグラマーな彼女はセックス相手には垂涎の的だろう。そんなかしまし娘を一人の男……つまり俺が率いているのだ。衆人環視は、


「何事か」


 と瞠目していた。気持ちは分かる。俺も俺に重きを置いていない。


「お前ら……」


「何でしょう兄さん?」


「何かな金ちゃん?」


「なぁに金也ちゃん?」


 分かっていないらしい。


「俺の何が良いの?」


「優しさ」


「男らしさ」


「血かな?」


 どれも備えてねーよ。


 よっぽどそう言ってやりたかったが、俺の自己同一性と他者の主観は入り交じることはない。ゾンビワールドとまではいかないが人は自分の主観から自由には為れないのだ。


「はぁ」


 ので……嘆息。他に対処のしようがない。


「今更ではあるな」


 そう思ってしまうのもしょうがないのだろう。


 都立は鶏冠高校の校門を潜るといつもの政治的主張とそれに伴うシュプレヒコールが聞こえてきた。


「鐵金也ー!」


「はいはい」


 小声で応答する。


「我々は乙女解放同盟の有志であるー!」


「知ってるよ」


 精神的疲労が……。


「鏡花さん……朱美さん……ならびにフレイヤさんの私的独占保有に対して我々は断固抗議するー!」


「勝手にしてくれ」


「むー」


 と膨れたのは鏡花と朱美。


「凡才が兄さんの素晴らしさも知らずに責め立てるなぞ……」


「金ちゃんに嫉妬するのもいい加減にして欲しいね」


 ちなみにフレイヤはニコニコ顔だ。


「金也ちゃんがモテモテでお母さんも鼻が高いよ」


「一応お前もその範疇に入れられてるんだがな」


「金也ちゃんを愛してるのは本当だしね」


 軽やかにウィンクするフレイヤ。


「お前がいいならいいがな」


 他に言い様もない。


「鏡花さんを返せー!」


「朱美さんを返せー!」


「フレイヤさんまで巻き込むなー!」


 そんなシュプレヒコールを側面に聞きながら俺は昇降口に向かった。かしまし娘を連れて。因果な渡世だよ……全く。


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