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第14話:璃音カーネーション04


「つまりお前が言う魂ってのは……」


「そ、肉体の設計図を想像して貰えれば一番近い」


「けいそうとしつりょうって何?」


 こんなことを言うのは朱美に決まっている。


「アリストテレスの提唱した智学……哲学だ。材料を質料と称し、そこに付与される情報を形相と呼ぶ」


「もうちょっとわかりやすく」


「十円玉は銅という質料と十円玉という形相を持つんだ。が、不動明王の銅像なら質料は等しく銅なのに形相は仏像ってことになるだろ? あるいは不動明王の銅像と木像を並べれば形相は二つとも仏像という形相を持つのに質料は銅か木かで別れる。つまり情報と物質の関係性を指してアリストテレスは質料と形相という概念を生みだしたんだ」


「あう」


 わかってねーだろお前。


「それについては後で講義してやる。それで……」


 俺は茶を飲んで喉をしめらせると閑話休題。


「その魂がどうだってんだ?」


「要するに私は魂を通したエネルゲイアなんだよ」


「ちょっと待て……」


 それはつまり、


「他者の意識を……ってことか?」


「だね」


 さも平然と……それこそ……、


「だから?」


 と彼女は言ってのける。ちなみに他の連中は会話についてこられていない。


 おそらく地頭のいい鏡花は理解しているだろうよ。


 なのに淡々と茶を飲んでいた。


 どちらも怪物だ。


「んで。魂の定義が確立したところでソウルユビキタスネットワーク……っていう概念について話しておこうか」


 ソウルユビキタスネットワーク……。


「金也ちゃんや鏡花ちゃんには字面で分かるかな?」


「ああ」


「ええ」


 さっくり答える俺ら。


「どういうことだ?」


 父親が狼狽えた。


 わかれよ。


 某大文学部卒。


「魂が人を象るための設計図……即ち形相であることは話したよね?」


 だな。


「ソウルユビキタスネットワークは人間の魂を網羅して情報を共有するネットワークのことなんだよ」


 だろうとは思ったがな。


「人の魂同士を共有させるネットワーク……と?」


「そうだね。わかりにくければ集合無意識を仮想すれば話は早いかな?」


 そう言ってクイとフレイヤは緑茶を飲んだ。


「魂同士の繋がり。要するに人類を管轄する機関。目に見えないけど形相は質料が無ければ存在し得ない。そんなシステムが物理的に存在するんだよ」


「あらあら」


 と母親。こいつも分かってねぇな。


「で、後は簡単だね。要するに私……白銀璃音は死ぬ間際にソウルユビキタスネットワークを通してフレイヤ=ゴールドーンに干渉。結論、自意識……脳構造……もっと言うならシナプス地図を自身のソレに書き換えたってわけ」


 クイと茶を飲んで、


「めでたしめでたし」


 と全容を明らかにする彼女だった。


「お前……」


 俺は言葉も無いがツッコまざるを得ない。矛盾。


「罪悪感は無いのか?」


「形相が璃音ってだけで質料はフレイヤだから」


 それで解決。


 そう綴る彼女だった。


「はぁ」


 こめかみを押さえて俺は嘆息。


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