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告げ口  作者: 泉田清
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監視社会

 桜が満開の頃、いつもは人影のない公園の近くで車がひしめき合う。宴会ができなくとも人々はやってくる。川向からスマホを向ける若者がいた、彼らは何かと写真を撮りたがる。SNSやInstagramに上げるのだろう。

 橋の辺りで我が公用車は花見客の渋滞に捕まった。前の車に張り付けてある「ドライブレコーダー録画中」の警告にぶつかった。我がしかめ面が録画されているのかと思うと不気味だ。


 「今ドライブレコーダーの特約があるんですが」自動車保険の更新で勧められる。もはやドライブレコーダーと保険はセット、もしもの時の備えだ。「いえ、結構です」いつものように断った。プライベートまでこんなもに煩わされてたまるか。

 もちろんこの公用車にもドライブレコーダーは搭載されている。「もしもの時の備え」は、むしろドライバーの監視に向けられている。スピード違反などはもちろん、大きな振動にも反応する。GPSでどこにいるかすぐわかる。職場に戻り、上司から「危険信号が出たらしいんだけど」と注意処分を受けるハメになるのだ。「もしもの時の備え」により仕事上のストレスが増えただけだ。

 相変わらず前の車は動かない。前の車はこちらに録画のカメラを向ける、我が公用車もカメラを向けている、お互いにらみ合ったままだ。何とも変な感じだった。


 「あのショッピングセンターで陽性出たんだってよ」実家で茶を飲んでいると妹がいった。「そ、そうか」と言い淀んだ。そのショッピングセンターに二日まえ後輩と映画を観に行った。そういえば少しのどの痛みがある。


 妹によればTwitterだかSNSでコロナ感染の情報が逐一報告されているという。「〇〇小学校で×人が陽性」、「△△営業所で□人が陽性」。寒気を覚えた。住所実名こそ出てないものの、陽性患者の情報が漏洩している。

 恐ろしいのはその情報が投稿によるもの、という所だ。「善良な市民による地域の安全」が動機にあるのは間違いない。善意や正義感から人々は行動を起こす。陽性患者が特定されるのは時間の問題、個人情報が晒されるに違いない。


 そのうちすべての国民にGPSが取り付けられてもおかしくない。仕事だろうがプライベートだろうが関係ない。「あのショッピングセンターに行ってきたね?」当局の追及からは逃れられない。思わず身震いした。

 「なんか顔色悪いね」、「いや気のせいでしょ!」妹の勘繰りを、ムキになって否定したのだった。

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