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森羅万象の厚生記録  作者: 星川ほしみ
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ホットケーキ鎮静剤

「まず、フードを被っていたとはいえ長い濃紫の髪を晒して堂々と歩いてる時点でおかしいじゃないですか」

「ああ。なるほど、ヴィンズの迫害が活発化してるから。俺には属性までは見えなかった」


 ヴィンズは白銀の色を持つ光属性を神の使いとして敬い、濃紫の色を持つ闇属性を魔王の使いとして迫害する。

 〝彼岸の悪魔〟が闇属性であるせいで、ヴィンズの闇属性迫害は日に日に酷くなっていく。咲良が〝彼岸の悪魔〟を目の敵にするのもそのためだ。


「もう。神楽ったら弱いんですから~。まああれは認識できただけよしとしましょう」

「俺が弱いんじゃなくお前が規格外なんだ」


 神楽も一般からすれば十二分に規格外だが、『森羅万象』を前にしてはその実力はかすんでしまう。

 元より自分の実力を過信しているわけではないが、はっきりと弱いと言われると反論したくなる。

 そんな神楽に気づかず、咲良は得意げに片目をつぶって人差し指を立てる。


「ここ、ヴィンズの信者どもが多いですし町の人たちが嫌な視線投げてなかったです。その時点で明晰使うじゃないですか。緑とかなら無視しましたけど濃紫なんですもん」


 光、闇、水、炎、草、無。

 魔導士には六つの属性があり、無を除いた五つの属性の色を髪と瞳に宿して産まれる。

 濃紫なら闇属性。白銀なら光属性。赤なら炎属性。青なら水属性。緑なら草属性。

 属性によって使えない魔法は存在しないが、扱いやすい、扱いにくいは属性に大きく関係する。

 

 一般人は黒、茶、金の色をしていることが多いため、髪色を見れば属性だけじゃなく魔導師かどうかさえ分かってしまう。


「〝彼岸の悪魔〟が闇属性だということはわかり切ってますし、何よりもあの人にまとわりつく瘴気みたいな気持ち悪い魔力残滓が壊滅した村の空気に似ていたんですよね。あとは直感です」

「……お前。瞳に魔法陣仕込んでたりするか?」

「やるわけないじゃないですか~。ずっと疲れるし、あれやる人ただの変態ですよ」


 あのレベルの姿隠しを前にして明晰の魔法を使わず姿がわかっただけでなく魔力残滓まで読み取る咲良に呆れる。相変わらず笑えるくらい意味の分からない実力をしている。


「ま、とにかく……」


 くるりと〝彼岸の悪魔〟が消えていった方向を向いた咲良の周りの空気が冷え込む。咲良を信頼している神楽ですら冷や汗を流すほどに冷たい、鋭い咲良の怒り。


「この私を出し抜くなんて、なんて可哀そうな『魔女』なんでしょうね」

「時が来れば思い知らせてやればいいさ。何か一つに特化した『魔女』なら特定もしやすそうだしな」

「〝紅の舞の君〟みたいにですか?」

「俺は自ら名乗っただろう『魔女』だとバレた時に」


 神楽にも咲良を凌ぐことができる分野がある。

 何かに特化した性質をしていたり、その分野に入れ込んだりした『魔女』の中でも上位十パーセント辺りの実力保持者ならその分野に限って咲良を上回る実力を持っている可能性は大いにある。容易ではないが。


 それは咲良も神楽に合った事で十分理解している。それでも、明確に敵認定している〝彼岸の悪魔〟に逃げられたことが許せないらしい。


 咲良の言った通り、可哀そうなやつだ。

 神楽は〝彼岸の悪魔〟に形ばかりの同情を示す。


「神楽はいいんですー。もうっ。早く帰ってホットケーキ食べます」

「思ったよりは冷静でいてくれて助かるよ。そしてホットケーキはおやつだからな? 俺たちまだ昼も食べてないんだからな?」

「わかってますー!」


 咲良が比較的大人しいのはホットケーキが食べたいがためなのだろうか。


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