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竜の女王  作者: M.D
2170年夏
99/688

06

 バスに5分乗った後、ようやく家にたどり着いた。


「これが樹君が生まれ育った家なのね。」

「美姫さんは東京シールドの外にある家を見慣れていないからかもしれないけど、いたって普通の家だと思う。暑いから早く入ろう。」

「そうね。」


「ただいま。」

「おかえりー。母さん、いっくん帰ってきたよー。それにお姉ちゃんも一緒。」


 玄関の扉を開けると妹が出てきて、母さんを呼びに行った。


「樹君って”いっくん”って呼ばれてるんだ。これから私も樹君のことを”いっくん”って呼ぼうかな。」

「それは勘弁して下さい。」


 妹に呼ばれて母さんが奥から出てきた。


「樹、お帰り。」

「ただいま。」

「美姫さん、いらっしゃい。さぁ、あがって。」

「お邪魔します。」

「ねーねー、いっくん、お土産は?」

「あとであげるから、ちょっと待ってろ。」

「はーい。」


 靴を脱いで、家に上がる。


「母さん、美姫さんの部屋はどするの?電話では準備しておくって言ってたけど。」

「お姉ちゃんは、私の部屋。」

「いや、あんな物が散らかった部屋に2人は無理だろ。」

「ちゃんと綺麗にしたもん!」

「高校の入学式に椿を連れていけなかったでしょ。それで、写真を見せたら椿がどうしても美姫さんとお話したい、ってお掃除を頑張ってしたのよ。」

「明日は雨か?」

「そんなことない。皆お姉ちゃんとお話したことがあるのに、私だけないなんてず―るーいー。」

「美姫さん、どうする?」

「私は椿ちゃんと一緒でいいけど。」

「やったー。お姉ちゃん、いっぱいお話しようね。私の部屋はこっち。」

「椿ちゃんかわいいね。」

「そう思うのは最初だけだと思うよ。」


「樹も美姫さんも、荷物をおいたらリビングに来てくれない?暑かったでしょうから、冷たい飲み物とか用意しておくわ。」

「了解。」

「ありがとうございます。」

「お姉ちゃん、早くー。」


 部屋に荷物を置いて着替えてからリビングに行くと、美姫さんは母さんと話しており、椿はお土産のチョコレートを食べていた。


「おそーい。お土産は?」

「椿が食べているチョコレートが美姫さんと共同のお土産。」

「えー。いっくん、けち臭い。」

「高校生なんだから、こんなもんだろ。それに、そのチョコレートは都市国家東京の地下構造の模型になっていて、人気なんだぞ。」

「へー、そうなんだ。変な形をしていると思った。」

「椿はもうちょっと考えながら食べなさい。」

「はーい。」


 僕もチョコレートを食べようとしていると、母さんが話しかけてきた。


「樹、1日だけじゃなくてもう少し家にいられないの?美姫さんもせっかく来てくれたんだし、1日だけじゃ短いでしょう。」

「魔法使いになったばっかりだから、いろいろ忙しいんだって。」

「いっくん、魔法見せて。」

「学校以外では魔法を使っちゃいけないんだぞ。」

「えー。けちー。」


「忙しい、って何するのよ?」

「『突然魔法使いになったから、皆に追いつくために夏休みの間も魔法の特訓をしなくちゃいけないから忙しい』って前に電話でも言ったはずなんだけど、、、」

「あら、そうだったかしら?」

「『成績表を見たら分かるから』とも言ったのに。もう送られてきてるはずだろ。」

「そうだったわ。でも、成績表はまだ見てないのよ。」

「見ろよ!」

「じゃぁ、今見ましょう。」

「いや、今でなくてもいいだろ。」


 僕の意見を無視して、母さんは情報端末に僕の成績表を表示させる。



「なになに。魔法実技が1なの以外は3か4ってところが樹らしいわ。座右の銘が”可もなく不可もなく”だものね。」

「違う!」


「そうなの?」

「美姫さん、違うから。母さんはたまに嘘をつくからあまり信用しちゃダメだ。」

「息子に嘘つき呼ばわりされた。ちょっとからかっただけなのに。シクシク。」

「どの口でそんなことを言うんだよ。」


「でも、樹が夏休みに自主的に特訓をしようと思っているなんて、母さんまだ信じられないわ。ねぇ、美姫さん、樹の言っていることは本当なの?」

「はい。私も樹君と一緒に魔法の特訓をするつもりです。」

「ははーん。樹、あなた、美姫さんと一緒だからやる気になっているのね。」

「どうでもいいだろ。」

「否定しないってことは、そうなのね。あの小さかった樹がもうそんなことを考える歳になったかと思うと、母さん感慨深いわ。」


「おば様、樹君が小さい頃ってどんな子だったんですか?」

「美姫さん、私のことはお義母さんって呼んでもいいのよ。」

「はい。」

「母さんは何を言っているんだ。それに美姫さん、母さんのしょうもない提案は拒否してもいいから。」

「別に私は嫌じゃないよ。」

「嬉しいわ。ねぇ、美姫さん、夕食までまだ時間があるから、それまで樹の小さい頃の写真見る?」

「はい。是非。」

「ちょ、待てよ。」

「私もいっくんの写真見る―。」

「椿ちゃんも一緒に見ようね。」

「うん!」


 結局、夕食後も強制的に自分の小さい頃の写真を見せられ、あれやこれや聞かれて、ゆっくりなんてできなかった。

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