02
「で、樹を選んだ理由は何なんですか?」
「何?諒太も気になるの?」
「それは、もちろん。」
「いいわ、教えてあげる。樹はね、高校に入る前に突然魔法使いの能力を獲得した激レア魔法使いなのよ。要するに普通じゃない、ってこと。」
「そういうことですか。」
「確かに森林は高校から魔法科への編入生で、そんな生徒はほとんどいないらしいが、普通じゃないような感じはしないんだよな。」
源蔵さんが僕の方を見て、頭をかしげた。
「源蔵には樹の良さが分からないだけよ。」
「でも、樹には美姫さんがいるんだし、百合子さんは樹を美姫さんから強奪するつもりなんですか?」
「違うわよ。私は見る目がある方だと思うし、樹は美姫さんと私をお嫁さんにできるくらい優秀な魔法使いになれると思うの。」
「能力があると認められた男性の魔法使いは最大3人の女性と結婚することが許される、ってやつですか。樹がそうなるとは思えませんが。」
「そうだな。俺も森林がそんなに優秀には見えん。」
「お前ら今なんつった?」
「「いえ、何も、、、」」
源蔵さんと諒太さんは蛇に睨まれた蛙みたいになった。
「それに、美姫さんと樹君が結婚することも、しれっと言いましたよね。」
「わ、わたしは、、、」
「美姫さんも樹君のことは憎からず思っているんでしょ。」
「そうですけど、、、」
美姫さんは顔を赤らめて俯いた。
「樹君はどうなの?」
「僕ですか?そうですね、、、僕はまだ魔法使いの世界に慣れていないせいか、授業についていくのが精一杯で、そんなことを考えている暇なんてない、という感じですかね。」
「回答が真面目過ぎて面白くない。やり直し。」
「そうだな。樹も生徒会の一員になったことだし、生徒会長の名のもとに命ずる。やり直し。」
「え、そう言われても、、、」
「いいじゃない、YOU、言っチャイナYO。」
「誰の物まねですか。」
「さぁ、早く。」
「そうですね、、、美姫さんも百合子さんもどちらも魅力的な女性だと思いますけど、僕としては美姫さんの方が好きです。」
「キャー!言っちゃったわ。」
「よく恥ずかしげもなくそんな事言えるな。」
「諒太さんが言わせたんじゃないですか!」
「あれ?百合子さん、樹君に美姫さんの方がいい、って言われても平気なんですか?」
「別に私は2番目でもいいし、樹に魅力的な女性って言ってもらえただけで十分よ。」
「前向きですね。落ち込んだりしないんですか?」
「おちんこでたりもするけれど、私は元気よ。」
「いやー!百合子さん、それ間違っちゃいけないやつですよ。」
「気にしすぎよ。」
「気にして下さい!」
「樹君に好きって言ってもらえた。嬉しい。」
「こっちはこっちで自分の世界に入ってるし、桐谷、どうする?」
「どうするもこうするも、放っておくのが一番じゃないですか?」
「そ、そうか。」
そんな話で盛り上がっていると、配膳ロボットが食事を運んできた。
「ご注文の品をお持ちしました。鉄板が熱くなっているのでご注意下さい。」
「いいところに来たわね。樹、みんなに配って。」
「了解です。」
箱型の台車から各自が注文したものを取り出し、配る。
「じゃぁ、頂きましょうか。」
「「頂きます。」」
「ハンバーグ美味しいね。」
「同意。ファミレスでこの美味しさだったら十分だと思う。」
「何も分かっていないな、君たちは。ハンバーグなんてくず肉で作るんだから原価も安いし、それを美味しいだなんて。」
「何も分かっていないのは桐谷の方だぞ。かっこつけてステーキなんて食べているが、ファミレスなんだからどちらも培養肉だろ。それに、このファミレスのハンバーグは培養ステーキ肉から作られているから、美味しいんだよ。」
「そ、そのくらい分かっていますよ。ファミレスで食事するのが久しぶりだったから、ちょっと間違えただけです。」
「諒太はいいとこのボンボンだからなぁ。」
「ボンボン、っていうな!」
「はいはい。」
ハンバーグを食べながら、ふと気になったことを聞いた。
「ちなみに、生徒会の慰労会って毎年やっているんですか?」
「いや、今年の慰労会は百合子さんの発案で、毎年やっているわけじゃない。」
「そうですよね。こんなことあまり聞いたことがないですし。」
「でも、こうやって皆で集まるのもこれが最後なんだな。」
「源蔵、何しんみりしてるのよ。」
「これから寂しくなるな、と思っただけだ。」
それを聞いた百合子さんは、少し思案した後、
「だったら、夏休みに生徒会で旅行に行きましょう。夏には夏らしいことをしないといけないんだから、夏と言えば花火と海水浴よね。」
などと言い出した。
「いきなり旅行に行くと言われても、予定というものがあるのですが。」
「いつも百合子さんは強引ですね。」
「行き先は私が探しておくから、予定をあけておくこと。いいわね?」
「「あいあいさー。」」
皆、百合子さんの強引さには敵わない、と言った表情で旅行に行くことに合意したのだった。




