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竜の女王  作者: M.D
補講3
90/688

06

「今日は”楯系”の魔法の腕輪をつけた訓練をしようか。」

「はい。お願いします。」

「私も”楯系”の魔法の腕輪をつけるのは初めてなので、楽しみです。」

「美姫さんは”楯系”についても適正が高いからすぐできるようになると思うよ。では、2人とも魔法の腕輪をつけ下さい。」

「はい。」


 ”楯系”の魔法の腕輪をつけてみたが、特に違和感は感じない。


「”銃剣系”の魔法の腕輪をつけたときと何も変わらない。魔力の吸収され方が変わると思っていたんだけれど、ほとんど同じだ。」

「そうね。私もちょっと意外だった。」

「2人がそう感じるのは、訓練用の魔法の腕輪の特性で、どの魔法系統の訓練用の魔法の腕輪でも魔法を発動していない状態では魔力の吸収され方はほとんど同じなんだよ。でも、実際に魔法を発動してみると魔力の吸収され方が変わるのを実感できるはずだ。」

「そういう事だったんですか。」

「では、魔法の腕輪に送る命令規則を覚えていこう。この命令規則は訓練用の魔法の腕輪にあらかじめ登録してあるもので、”楯系”の魔法使いの誰しもが最初に発動させる魔法だ。」


 純一先生に命令規則を教わり、魔力隠蔽によって魔力を開放・抑制して魔法の腕輪に命令をおくるが、魔法は発動しない。


「上手くいきません。」

「私も。」

「それは、”銃剣系”と”楯系”では、魔力の開放や抑制が続く状態と、開放と抑制が入れ替わる状態の時間周期が微妙に違うから、”銃剣系”と同じような時間周期で命令を送ってしまうと失敗するからだろうね。」

「なんだか音楽に似ていますね。」

「そのとおり。美姫さんの例にならうと、命令規則のリズムが違うと言える。」

「なるほど。」


 美姫さんは閃きを得たのか、それからすぐに魔導楯の発動に成功した。


「できました。」

「さすがは美姫さん。それに、始めたばかりだというのに、もうそんなに素早く命令を送れるようになるなんて、この先が楽しみだ。」

「ありがとうございます。魔法が発動されるとこんなに魔力の吸収され方が変わるんですね。」

「普通の”銃剣系”の魔法使いが”楯系”魔法を発動させると、魔力の吸収され方が違うせいで最初はうまく魔力を送り込めなくてすぐに発動した魔法が消滅してしまうんだが、最初から”楯系”魔法の発動させ続けられる美姫さんは”楯系”の魔法の腕輪に対する適性を差し引いても、優秀な魔法使いだ。」

「そんなことないです。」

「亜紀様が期待されるのも無理はない。すまないが、美姫さんがつかんだコツを樹君にも教えてあげてくれないかい?」

「分かりました。」


「美姫さんはすごい。こんなにすぐに魔導楯を発動できるなんて。」

「小さい頃からピアノを弾いていたから、先生が『命令規則のリズムが違う』と言うのを聞いてピンときたのよ。」

「僕には音楽の素養がないからなぁ。」

「大丈夫、私が教えてあげる。”銃剣系”の命令規則はこんな感じで、”楯系”はこんな感じ。」


 美姫さんは僕の腕を指で叩いて命令規則のリズムを教えてくれる。


「どう?違うでしょ。」

「本当だ。なんとなく違いが分かったような気がする。」

「じゃぁ、やってみて。分からなくなったら、聞いて。また教えてあげるから。」

「感謝。」


 それから20分くらい練習したところで、美姫さんと比べると明らかに小さくて密度の低いプレパラートみたいな楯だったが、魔導楯の発動に成功した。


「で、できた。」

「樹君、やったね。おめでとう。」

「でも、すぐに消えてしまった。」

「樹君、おめでとう。すぐに発動した魔導楯が消滅してしまうのは、普通のことだから気にしてはいけないよ。美姫さんが特別なだけだから。」

「はい。」

「この後は魔導楯の発動させ続けられるよう、魔力の送り込み方に慣れて行こうか。」

「了解です。」


「魔導楯の発動させられた、ということは、樹君にも”楯系”の魔法の腕輪に適正があるということでしょうか?」

「訓練用の魔法の腕輪を使った訓練では、”銃剣系”の大半の魔法使いが魔導楯の発動できるから、今日の結果をもって樹君が”楯系”の魔法の腕輪に適正がある、とは言えないね。」

「でも、魔力検査では3つの魔法系統すべてで合格点を超えていたはずです。」

「今後、本格的に訓練用ではない”楯系”の魔法の腕輪をつかった鍛錬を始めれば、樹君に”楯系”の魔法の腕輪に適正が本当にあるかどうか分かると思うよ。」

「そうですか。」

「樹君は大器晩成型かもしれないから、じっくり取り組めばいいんじゃないかな。」


「魔法の腕輪への適正に関わらず、魔力量を早急に上げたい場合はどんな鍛錬をすればよいのでしょうか?」

「美姫さんは樹君の魔力量が皆と比べて少ないことが気になるのかな?」

「そういうわけでは、、、」

「樹君の魔力量をどうにかしてあげたいという気持ちは分からなくはないけれど、魔力量を早急に上げる方法を私は知らないし、そんな方法はないと思う。」

「そうですか。」

「しかし、魔力量を着実に増やすことができるよう国防軍で行われている鍛錬の方法であれば知っている。」


「どんな方法ですか?」

「魔力量は魔力を使えば使うほど増加していくから、魔力循環や身体強化を使った鍛錬を常に行うことによって、魔力を使い続ければいいんだ。」

「なるほど。」

「ただし、継続して魔力を使用するのは非常に難しい。美姫さんも魔力循環を行う時には集中して魔力の流れを感じるようにしてただろう。これは、別のことに気を取られるとすぐに魔力循環が中断されてしまったり、魔力制御に失敗して魔力が暴走してしまうからで、魔力を消費し続けるためには意識せずとも鍛錬が行えるようにならなければいけない。

 それに、魔力の消費量が少なすぎても魔力量は増えないから、ある一定上の負荷をかけて鍛錬をし続けることが必要になる。逆に魔力の消費量が多すぎると、魔力制御に失敗した際に大怪我をしてしまうことになるから、使用する魔力量の見極めも難しい。」

「分かりました。がんばってみます。」

「美姫さんのことだから大丈夫だとは思うけれど、ほどほどにね。」

「ありがとうございまいました。」


(そっか、魔力を使い続ければいいんだ。樹君、さっそく試してみようよ。)

(やっぱり僕もやるんだ。)

(エレナ様が天界に帰るために一緒に頑張ってくれる、って言ったじゃない。)

(了解。一緒にやろう。)

(ありがとう!)


(ワレのためにそこまでしてくれるとは、美姫と魂の結合をしたことは間違いではなかったのう。ワレも樹の魔力量とやらの増加に協力しようかのう。)

(いや、僕の方はいいので、美姫さんに協力してあげて下さい。)

(ワレは美姫の精神エネルギーを吸収しておるからのう。ある意味、美姫が魔力とやらを使用し続けることに協力しているようなものじゃ。じゃから、樹の方に協力してやろうと言っておるのじゃ。)

(エレナ様の顔が見られるなら、今絶対悪い笑顔になっているはず。)

(そんなことはないのじゃ。)

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