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「今日は魔法使いの階級について説明をしよう。」
「「はい。お願いします。」」
「魔法使いの階級には、無印、初級、中級、上級、特級、外級がある。もちろん国防軍に入ればもっと細かい軍の階級があるけれど、魔法使いの階級としては基本的に6階級だけなんだ。」
電子ボードにそれぞれの階級の説明が映し出されている。
「それぞれについて説明していこう。まずは無印の魔法使い、つまり称号のない魔法使いになるための条件は、魔力検査に合格すること。美姫さんや樹君は今はこの階級だ。」
「あの検査にそんな意味もあったんですね。」
「魔力検査は魔法使いの資質がある者を見つけるのが目的だから、魔力検査に合格した時点で魔法使いとして認められる、というわけだ。」
「なるほど。」
「では、次の初級魔法使いになるための条件は、もうすぐ習うことになるけど、”全身の”身体強化、つまり魔力で”全身を”強化する技術を身に着けること。初級以上の魔法使いになることができるのは全魔法使いの9割程度で、時間をかければ大抵の魔法使いは初級以上になれる。」
「時間をかければ、ってそんなに難しい技術なんですか?」
「体の”一部を”魔力で強化することはそれほど難しくはないんだが、”全身”ともなると感覚を掴むのが難しい。樹君が魔力を感じるために美姫さんとした鍛錬は教え方が確立されているから、すぐに魔力を感じるための感覚が掴めたはずだ。
それに対して、身体強化についてはまだ教え方が確立されていないんだ。だから、感覚でしか教えることができなくて、感覚を掴むのに個人差がでてしまう。教えられなくてもできている者もいるし、なかなか習得できない者もいる。」
「教え方が難しい、というのは、魔法使いには長い歴史があるのにまだ教え方が確立されていないなんて意外です。」
「知識として理解することと実践できるようになることは別物だからね。しかし、初級魔法使いになるための条件は技術の習得だから、余程のことがない限り初級魔法使いから無印の魔法使いへ降格することはない。」
「魔法使いにも降格があるんですね。」
「もちろんある。私も以前は中級魔法使いだったんだけど、今は初級魔法使いだから。」
「それは知りませんでした。」
「話が脇にそれるけど、いい機会だから説明しておこう。前にも説明したと思うけれど、魔法使いの魔力量が自然に増加するのは25歳前後までで、それ以降は鍛錬や経験によって魔力量を増加させることもできるけれど、30歳前後からは何もしないと魔力量は下限値まで減少していく。
そして、その魔力量の下限値というのが魔法使いの資質として、魔法の腕輪への適正や魔力量の最大値の次に重要視されている。私はこの魔力量の下限値が低かったことが、中級魔法使いでいるための条件を満たさせなくて初級魔法使いに降格してしまった原因の1つなんだ。」
「嫌なことを思い出させてしまい、すみません。」
「降格は私にとって望ましいことだったから、嫌な思い出ではないよ。」
「そうなんですか?」
「私は学者になりたかったんだが、従姉に強引に国防軍に入隊させられたんだ。中級魔法使いから初級魔法使いに降格になったことで、国防軍から除隊できるようになった時には嬉しかったよ。」
「国防軍は自由に除隊できないんですか?」
「普通は自由に除隊できるよ。私の場合は従姉が強弁でね。なかなかやめさせてもらえなかったんだ。」
「先生の従姉はどんな人なんですか?」
「えーっと、まぁ、私の従姉の話はまた今度にするとして、魔力量の下限値は人によって異なるけれど、高い人で最大値の8割程度、低い人は最大値の2割程度まで落ちてしまう。私の場合は3割程度に落ちてしまったんだ。」
「低い人は最大値の2割程度まで落ちるって、そんなに減ってしまうものなのですか?」
「こればかりは本人の素質で決まるから、如何ともし難いね。しかし、魔力量の減少をある程度は鍛錬で防止することはできるから、下限値が低くても何とかなるよ。私は早く国防軍をやめたかったから、魔力量が4年くらいで下限値まで減少したけどね。ハハハ。」
「先生も苦労されたんですね。」
「まぁね。」
「では、気を取り直して、魔法使いの階級の説明に戻ろう。中級魔法使いになるための条件は、例外を除くと、”大砲系”と”銃剣系”の魔法使いについては、悪魔に対する弾幕をはることができる最低限の魔導力を放出することができること、”楯系”の魔法使いについては、都市制御装置を1人でも制御できる程度の魔導力を放出することができることだ。」
「中級魔法使いになるための条件は、”楯系”の魔法使いだけ別なんですね。」
「”楯系”の魔法使いは魔導力を飛ばすことが苦手だから別条件になっているんだよ。しかし、どちらも一定以上の魔力量が必要とされるから、中級魔法使いになるためには、まずは魔力量の検査を受け、その後で魔導力放出の試験や都市制御装置制御の試験を受ける。中級以上の魔法使いになることができるのは全魔法使いの3割程度だ。」
「一気に狭き門ですね。」
「だから、中級魔法使いになれないと分かった魔法使いの中には、国防軍を止めて別の道に進む者もいる。ただし、有事の際には強制的に呼び戻されるけどね。」




