表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の女王  作者: M.D
2170年春
84/688

33

 ドンドン!


「誰だ?」


 ドンドン!


「涼宮、いるんだろ?扉を開けてくれ。話がしたい。」


「南部みたいですが、どうしますか?」

「いいんじゃない。話を聞いてあげましょう。」

「樹、扉を開けてやってくれないか?」

「はい。」


「涼宮、何をしたんだ!俺の手下に裏切らせるなんて、卑怯だぞ!」

「卑怯って、嘘の噂を流して私を貶めようとしたあなたの方が卑怯じゃない。」

「何だと!」

「紫を責めるのはお門違いよ。あなたの友達を翻意させたのは私だもの。」

「俺の手下に裏切らせたのは、高科先輩、あなたでしたか。俺を会計に選ばないばかりか、副会長になることも阻止するとは、俺に何か恨みでもあるんですか?」

「あなたに恨みなんかないわ。あなたよりも紫の方が適任だと思っただけよ。」

「そんなことはない!」

「友達のことを手下呼ばわりするような人を生徒会役員になんてさせられないわ。」

「何を!」

「それに、あなたの友達は裏切ったんじゃなくて、私が優しく問いだたしたら、自分のした行いの間違いに気が付いただけよ。償いとして紫に協力することも約束してくれたわ。」


(ほほう。俺っちの魔術が破られるとは、心が壊れぬようにするため少し弱くすぎたかもだな。)


(何か南部さんから声が聞こえなかった?)

(私も聞こえた。)

(奴には悪魔が取り付いているようじゃのう。)

(そうなんですか?今まで全く分かりませんでした。)

(悪魔といっても本体ではなく分体だからじゃろう。それに、人目のある所では活動しておらんようじゃったから、今まで気づかれんかったんじゃろう。)

(エレナ様は気づいておられたんですか?)

(気づいておったのじゃ。じゃが、ワレらに害を及ぼす訳でもなかったし、いざとなれば退けるのはたやすい故、放置しておったのじゃ。)


「高科さんの脅しに屈するとは、不甲斐ない奴らめ。」

「友達をそんな風に言うのはどうかと思うけど。」

「涼宮を利するようなことをする奴らなどどうでもいいわ。かくなる上は、、、」


(俺っちの出番というわけかもだな。小童どもなど俺っちにかかれば赤子の手をひねるようなもの。奴らを支配できれば南部も用済みかもだな。)


(聞こえていないと思って、いろいろ喋ってくれるね。)

(ここにエレナ様がいるとは思わないだろうし。やっぱり南部さんは操られていたのか。)

(そうみたい。エレナ様、何とか南部さんを救うことはできませんか?)

(任せておくのじゃ。奴が南部の体から離れようとするときが、絶好の機会じゃ。ワレが一撃で仕留めてやろうかのう。)

(一撃で仕留めたら、あの悪魔が南部さんを支配していた理由を聞き出すことができなくなるんじゃないですか?)

(奴は分体じゃから、重要な情報は持たされていないじゃろう。)


(高科とやらは面倒そうだから後回しにして、まずはあの小娘から操ったほうがよさそうかもだな。)


 南部さんの体からピエロのような姿をした悪魔が出てきた。


(今じゃ。〇ンパーンチ。)

(ぐはっ!)


 エレナ様の一撃により、悪魔は一瞬で消滅した。


(〇ンパーンチ、って、その掛け声はどうかと思いますよ。)

(なんじゃ、樹は細かいのう。それに、人間は攻撃するときに気合を入れるためにその技名を叫ぶのではなかったのかのう?)

(エレナ様、漫画やアニメの見すぎです。わざわざ技名を叫んでいたら初動が遅れるじゃないですか。)

(そのくらい分かっているのじゃ。気分じゃ、気分。)


「うぅぅ。」

「大丈夫ですか、南部さん。」


 頭をおさえてうずくまる南部さんに美姫さんが駆け寄る。


(もう、悪魔の分体は残っていないようじゃのう。)

(良かったです。)

(しかし何のために南部さんを操っていたんでしょう?探れたりしないでしょうか?)

(あの分体は独立して行動できるようじゃったから、本体に繋がるものは何もないようじゃのう。痕跡を残さないようにするくらい慎重な奴じゃから、今の段階で本体を探すことは無理じゃろう。)

(そうですか。)


「あれ?涼宮に何か言おうとしていたんだが、思い出せない。」

「本当に大丈夫か?」

「島崎さんですか。急に頭を殴られたような感じがして、うぅ、頭が痛い。」

「すぐに病院に行った方がいい。森林、救急車を呼んでくれ。その後、先生にも連絡を。」

「了解。」


 情報端末を操作して救急車を呼ぶ。


「頭は痛いが、ここ数年ずっと湧き出ていた、涼宮に対する不満というか怒りのようなものが急になくなった気がする。涼宮、今まですまなかった。」

「はぁ?何言っているの?」

「謝って許されるようなことではないが、今後償いは必ずさせてもらう。」

「そんなことはいいから、救急車が来るまで安静にしていなさい。ちゃんと良くなってもらわないと今度は私がモヤモヤを抱え込んじゃうじゃない。」

「あぁ、すまない。」


(南部さんは大丈夫なんでしょうか?)

(今まで悪魔によって操られていた部分が正常に戻ったのじゃ。情報処理が追いついておらんだけじゃろう。2、3日すればよくなるのではないかのう。)


 エレナ様の言うとおり、南部さんは2日後に退院し、その後は生徒会に協力を惜しまないようになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ