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竜の女王  作者: M.D
2170年春
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30

「以上が、今期の生徒会役員よ。もう知っていると思うけど、生徒会は6月の終わりに選挙があって、会長と副会長が選任されるわ。今年も会長は立候補者が1名だから信任投票になるけれど、副会長は立候補者が2名だから、来週から1週間選挙活動が行われるのよ。」

「それで臨時の生徒会役員会議を開くんですね。」

「そういうことだ。副会長の立候補者は今のところ涼宮と南部の2名だからな。涼宮が勝つとは思うんだが、南部が涼宮の印象を悪くする噂を流しているようだから、何か対策を考えないといけない、と話していたところだ。」

「だから、私は立候補なんてしたくなかったんですけどね。会計になれただけで満足だったのに。」

「何を言っているんだ。俺は南部みたいなやつと生徒会活動はしたくないぞ。紫が副会長になってくれないと困る。」

「私も諒太と同意見ね。彼は生徒会を自分の出世の踏み台、としか考えていないようだから、副会長になったとしても生徒ためになるようなことはしないでしょうね。」


「そんな風に思われている生徒が副会長に当選できるんでしょうか?」

「普通科と魔法科の対立を煽るようなことをしているのよ。普通科の方が生徒が多いから、そちらを味方に引き込んだほうが有利になると考えたのね。」

「せっかく俺たちが苦労して普通科と魔法科の相互理解を深めようとしているのに、それをぶち壊すようなことをされるのは許せない。」


「そう言えば、修学旅行で涼宮さんの噂をクラスの生徒がしていたのを思い出しました。なんでも涼宮さんは2股をしていて、その1人が書記の桐谷さんだとか。」

「誰よ、そんな噂を流したのは。それに、どうして私が玉の輿を狙ってまで桐谷と付き合わないといけないのか分からないわ。桐谷のクソさを知らないのかしら。」

「それは俺の台詞だな。それに、俺は魔法使いの女性としか結婚できない、ということが普通科の生徒にはどうして分からないのか。」

「普通科の生徒は魔法系統のことは知っているが、その重要性を理解できていないからな。俺も生徒会に入るまでは、一般の生徒と同じ程度の理解しかできていなかったし。」

「それは僕も同じです。」

「紫は魔法使い派だから副会長に当選したら普通科の待遇が悪くなる、と南部は訴えているわけね困ったものだわ。」


「百合子さんだったら何んとかできるんじゃないですか?」

「そうね、紫が2股をしている、っていう噂だったらもうすぐ下火になると思うわよ。」

「えっ!?そうなんですか?」

「私は2股なんてしていませんから。」

「涼宮がそんなことをする人間じゃないことは分かっているさ。で、高科、何をしたんだ?」

「噂を流した本人を特定して、鎮火するようお願いしただけよ。」

「さらっと言ってくれるが、そんな簡単なことじゃないだろう。」


「さて、問題です。私は噂を流した本人をどうやって特定したでしょうか?」

「いつもながらに唐突な投げかけですね。でも、それが分かればとっくにやっていますよ。」

「諒太の言うとおりね。紫がクズ宮呼ばわりされるようになった噂について、あなた達がどうやって対処するのか静観していたけど、全然ダメだったものね。」

「百合子さんもあの時は分からない、って言ってませんでした?」

「ごめんね、紫。本当は噂の出所を知っていたの。あの時は紫個人に限定されていたから、あなた達がどう対処するのか試すことができたけど、今回は普通科と魔法科の対立に火がつくかもしれなかったから、さすがに静観していられなくてすぐ対応したわ。」

「百合子さん、ひどくないですか?」

「そんなことないわよ。」


「あの、、、」

「美姫さん、何かしら?」

「噂が出始めた時ならその噂を知っている人数も少ないでしょうから、噂の流れを逆にたどっていけば噂を流した本人を特定することも可能じゃないでしょうか。」

「正解。」

「でも、噂が出始めた初期でないと難しいから、百合子さんの情報網が相当広くないとできないと思うのですが。」

「さすがは美姫さん。次期生徒会にとっては頼もしい役員になってくれそうね。」


「確かに校内で出回っている情報について高科が知らないことはほとんどなかった気がするが、どうやってそんな情報網を築いたんだ?」

「たまたま私に噂好きの友達がいて、たまたまその友達が噂好きの友達や下級生と仲良くなって、たまたま校内の噂をその日のうちに知ることがでるようになっただけよ。」

「絶対たまたまじゃなくて、高科が仕込んだんだろう?」

「仕込んだなんてひどい言い方しないでよ。私の友人が噂好きだったから、もっと新鮮な噂を集められるように対人関係の構築の仕方を含めて、その友人にあった方法を教えてあげただけよ。」

「それを仕込んだ、というのではないでしょうか。」

「そう言う人もいるわね。そこは、見解の相違よ。」

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