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竜の女王  作者: M.D
2170年春
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29

「お疲れ様です。」


 百合子さんと話をしていると、他の生徒会役員の学生が生徒会室に入ってきた。


「3人揃ってどうしたの?」

「桐谷と涼宮とはたまたま階段で出会ったんだが、もうすぐ生徒会選挙だろ。涼宮のために臨時の生徒会役員会議を開こうということになったんだ。」

「それで3人揃って生徒会室に来たわけね。」

「私は『必要ない』って言ったんですけど。」

「生徒会室に高科がいればよし、いなければ改めて呼びに行こうと決めたんだよ。で、高科は1年生と何をしているんだ?」

「見て分からないの?高校からの編入生に対する心理的なケアの一環として、美姫さんと樹とお茶しながらお話をしていたのよ。」

「今日そんなことをするとは聞いていないのだが。」

「私が2人を見ていて必要だと思ったからよ。」


(今日のこれって、僕らのケアが目的なんかじゃないよね?)

(そんな目的じゃなくて、ただ百合子さんが樹君と話をしたかっただけだと思う。でも咄嗟によくあんな出鱈目が言えるよね。そこだけは感心する。)

(同感。)


「高科がそう言うのであればそうかもしれんが、1年生の2人、えーっと、龍野さんと森林君だったけか、何か高校生活で問題でもあったのか?」

「特に困ったことはありませんが。」

「高校に編入してきてもうすぐ半年だから、環境の変化に慣れてきて疲れが出るころなのよ。2人は『困ったことがない』と言っているけれど、逆にこういう時程こまめなケアが必要なの。それに、美姫さんは次期生徒会の役員にもなってもらうんだし、その説明も必要でしょう。」

「確かにそうだが。」

「美姫さんには事前にお願いしていたように次期生徒会の役員になってもらうし、いい機会だから今の生徒会役員を紹介しておこうと思うけど、いいかしら?」

「は、はい。」


(百合子さん、話題転換も含めて強引に押し切った。)

(私もつい、『はい』って言っちゃったし。あの3年生では百合子さんには勝てそうにないね。)

(でも、3人でかかればなんとかなる気もする。)

(そうよね。1年間、生徒会役員として一緒にやってきたんだから。)


「今話していたのが、副会長の島崎源蔵君。普通科で、中学から今まで総合1位を誰にも譲ったことがない文武両道の頼りになる副会長さんなの。」

「よろしく。副会長の島崎です。高科、自分の成績を自慢しているのか?魔法科と普通科を合わせた学年全体では今まで一度も総合1位を取ったことがないのだが。」

「そんなことはどうでもいいじゃないの。前に話したと思うけど、生徒会の会長は魔法使い御三家の本家筋、分家筋の誰かが務めることが慣例になっているのよ。会長が魔法科から選任されるから、副会長は普通科から選任されるのも慣例になっているわ。」


「普通科の生徒は魔法科の生徒と比べて学力が高いという自負があって、問題を起こす生徒にかぎって魔法科の会長からとやかく言われるのを嫌うんだよ。それで、普通科から副会長を選任して普通科の生徒が起こした問題に対応するわけだ。逆に副会長は魔法科の生徒が起こした問題に対してはお手伝い程度でいいから、俺は高科ほど苦労はしていない。」

「麗華さんのことでは私ばっかり苦労して嫌になるわ。それに、源蔵の言うとおり、魔法科と普通科にはお互いのことをよく思っていない生徒がいて、私も何とかしたいと思っているのだけれど。」

「そうだな。俺たちも頑張って少しは良くなったと自負しているが、魔法能力という絶対的な能力差がある限り、完全な相互理解は難しいかもしれん。」


 百合子さんは他の2人の紹介に移った。


「2年生の諒太と紫のことは修学旅行で一緒だったから知っているかもしれないけれど、一応紹介しておくわね。彼が書記の桐谷諒太君。桐生家外家筋の生徒で、この中では一番格上の家系ね。」

「一番格上だと思っているのなら、そのように接して下さいよ。絶対そんなこと思っていないでしょう。」

「思っているわよ。でも、私と諒太は魔法系統が違うし、それに私は魔法使いの血統から離れたところにいる存在で諒太の気持ちを慮る必要もないから、本当は桐谷家の誰かが行うべきだった、諒太の曲がった根性を叩き直す、という役割を担ってあげたのよ。感謝してよね。」

「生徒会に入ってから丸くなったって言われるし、友達と呼べる生徒が増えたのは百合子さんの厳しい指導のおかげだとは思いますが、鉄拳制裁はどうかと思います。」

「何を言っているの。私も心が痛んだけど、諒太のことを思ってこその愛のムチだったわけよ。」


(絶対に心を痛めてなんかなくて、喜々としてやったに違いないよね。)

(禿同。)


「たまにはアメをくれてもいいのではと。」

「諒太は私以外から甘やかされているから、私からアメは必要ないわね。」

「そんなぁ。」


「最後は、会計の涼宮紫さん。紫は陰でクズ宮って呼ばれているくらい性格が悪いと言われているけれど、本当は優しい子なのよ。」

「百合子さん、性格悪いとか言わないで下さい。合理的な思考をしている、と言って下さい。森林君とは修学旅行のバスで隣同士だったから少し話をしたけど、龍野さんと話すのは始めてね。よろしく。」

「こちらこそ、よろしくお願い致します。」


「紫、バスでは樹の隣に座ったの?」

「えぇ、そうですけど。森林君はすぐに寝てしまったから、少ししかお話できなかったんです。」

「寝ている樹に何もしていないでしょうね。」

「寝顔がかわいかったから、指でほほを突いたくらいですよ。」

「なんて、うらやま、、、けしからん!」

「どうしたんですか。今日の百合子さんは何か変です。」

「そんなことはないわよ。」

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