表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の女王  作者: M.D
2169年秋
8/688

08

 嵐のように来て去っていった3人を見送った後、ベルトを腕に巻かれて魔力検査を受けた。


「それでは、森林君。何もせずに安静にしていて下さい。」

「はい。」


(美姫さんの時と違って、ベルトにつけられた3つの線のどれも光らない。)

(そんなはずはないんだけど。)

(前も不合格だったんだから、こんなものでしょ。)


 しかし、小野先生は意外な答えを言った。


「うん。微弱だけれど魔力があるようだし、ギリギリ合格ってところだね。おめでとう。」

「合格、、、ですか?」

「はい。」

「よかったね。森林君。」


(当然じゃ。ワレと魂の絆があるんじゃからのう。)

(何が当然なのか分かりません。)


「どれも光っていないように見えますけど。。。」

「肉眼では光っていないように見えるけれど、情報端末の数値を見る限りギリギリ合格点だ。電気を消してみると分かるかもしれない。」


 小野先生が部屋の電気を消す。


(電気を消すと3つの線が全部ぼんやり光っているように見えなくもないね。)

(確かに微弱だけど光ってる。)


「電気を消しても分かりにくかったかもしれない。でも、3つの魔法系統すべてで合格点をギリギリ超えているというのは珍しいから、今後に期待がもてる結果だと思う。美姫さんの見立ては正しかったということが証明されましたね。」

「ほっとしました。」

「いずれにせよ、森林君も来年から東大附属高校魔法科に入学だ。おめでとう。森林君、気分は悪くないかい?」

「ちょっと、体がだるくなったかもしれません。」

「その程度であれば、問題ないよ。それでは、2人分の手続きをしないといけないから今日はすぐに帰るけれど、明日迎えに来るから。また明日。」


 そう言って小野先生は、ベルトと情報端末を手早く鞄に入れて、すぐに病室を出て行った。


(森林君、おめでとう。)

(ありがとう。でも、龍野さんはどうして僕が魔力検査を受けるられるよう言ってくれたの?)

(エレナ様と会話できる人が私の他には森林君しかいないから、一緒の高校に通えたらいいな、と思って。それにエレナ様だったら、森林君が合格できるようにしてくれると思ったから。)

(そう言えば、エレナ様が『当然じゃ』とか言っていた気がする。)


(あれは精神エネルギーの量を測定する装置のようじゃったから、検査をするときに樹に少しだけ精神エネルギーを流し込んでやったのじゃ。)

(ということは、僕の実力じゃないと。)

(当り前じゃ。樹は普通の人間なのじゃから。)


 がーん。


(これから東大附属高校魔法科に入学するのに、僕はどうしたらいいんですか?)

(まぁ、大丈夫じゃろう。樹には多少の素質のかけらがあるかもしれんしのう。)

(すごく少ないように聞こえましたけど。)

(何かあったらワレが助けてやるから、安心しておればいいのじゃ。)

(ふ、不安だ。)



 夕食後、2人しかいなくなった病室でふと疑問に思ったことを聞いてみる。


「龍野さんって、高校に入学前ってことは僕と同い年?」

「そうだけど、今更それを聞くの?」


(樹はアホの子のようじゃから勘弁してやるのじゃ。)


「森林君、これから高校3年間よろしくね。」

「こちらこそ、よろしく。」


(青春じゃのう。甘酸っぱいのう。)

(茶化さないで下さい、エレナ様。)

(これから2人の青春を特等席で見られるとは、地球に降りてきて正解じゃった。天界に帰るための精神エネルギーも貯めんといかんのじゃが、それまでの楽しみができて嬉しいのう。)


 2人の会話を聞いていて、不安な気持ちになってきた。


(ちょっと待って下さい。)

(なんじゃ?)

(今、気が付いたんですが、思ったことがエレナ様と龍野さんに伝わるということは、プライバシー全くなしということじゃないですか!)

(魂の絆を結んだ時点で樹の記憶はすべて見たし、ワレに知られて困るようなこともなかろう。)

(ありますよ!というか、『記憶をすべて見た』とか恐ろしいことをさらっと言わないで下さい。)

(よいではないかのう。別に減るものでもないのじゃ。)

(よくないです!プライバシーのない生活なんて、、、悲惨だ。)


 これからのことを思って絶望に暮れていると、龍野さんが助け舟を出してくれた。


(大丈夫よ、森林君。エレナ様に思考を読み取らせないよう鍵をかける方法はあるから。)

(美姫、そんなことを教えたら面白くなくなるじゃろう。)

(エレナ様は面白いかもしれませんが、僕は面白くないんです!)

(そうですよ、エレナ様。もう少し人間というものを学んで下さい。)

(美姫さん、その方法を今すぐ教えて!)

(いいよ。)

(なんじゃ2人して。ワレは神じゃ。偉いのじゃ。ちょとくらい、いいではないかのう?)

((よくありません!))

(ケチじゃのう。もう良いのじゃ。)


「エレナ様、すねちゃったね。」

「あれ?声に出さなくても思っただけで伝わるんじゃないの?」

「エレナ様と森林君の間に魂の絆があるから私も森林君と思っただけで通じ合うことができるんだけど、たぶんエレナ様が扉みたいなものを閉じると通じ合うことができなくなるんだと思う。」

「そうなんだ。エレナ様って人間臭い神様だね。神様かどうか怪しいけど。」

「神様だっていうのは本当だと思うよ。なんとなくなんだけど。」


(美姫にまで『なんとなく』とか言われたのじゃ。ワレは悲しいのじゃ。。。)


 これが僕と龍野さんの出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ