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竜の女王  作者: M.D
2170年春
72/688

21

 次の日の朝、情報端末の目覚音で目を覚ます。


「・・・もうこんな時間か。」

「森林、そろそろ起きろ。まだ寝ているのはお前だけだ。」

「そうなのか?」

「俺たちはもう朝の散歩に行ってきたぞ。早く起きて朝飯を食いに行こう。」

「了解。ちょっと待っててくれ。顔を洗ってくるから。」

「分かった。早くしろよ。」


 顔を洗った後、食堂に行くと朝食はバイキング形式だった。


「森林はパン派か?」

「朝は食欲がないから軽めがいいんだ。広瀬はご飯党?」

「そうだ。朝ちゃんと食べないと昼までに腹が減らないか?それに脳に糖分を供給しないと思考が鈍るだろ。」

「途中でチョコレートを食べるから、その辺は抜かりなしだ。」

「それならいいんだが。」


 食べ始めたところでちょうど美姫さんたちも来たようだった。


「美姫さん、おはよう。」

「樹君、おはよう。」

「「・・・。」」


「何かあったのか?」

「ん?」

「いや、挨拶がよそよそしかったから、2人に何かあったんじゃないかと思ったんだが。」

「特に何もないけど。気のせいじゃないか。」

「そうか。」


「しかし、あっという間だったな。もう今日で修学旅行が終わりと思うと悲しくなる。修学旅行の期間、短すぎないか?」

「1泊2日なんだから、短いのは致し方ないでしょ。」

「それに、今のご時世、東京シールドの外に修学旅行に来れるだけでもありがたいと思わないと。」

「そうかもしれんが、しかし、2泊3日にするとか、もう少し長くてもいいと思わないか?」

「それは私もそう思うけど。。。」


 朝食の後は華厳の滝の見学だ。


「これが華厳の滝か。すげーな。」

「大自然って言葉が素直に出てくるほど壮大な眺めね。」

「エレベーターで降りて観瀑台まで行くと、もっとすごいらしいぞ。」


 エレベーターを降りると、観瀑台に到着。


「さすがに間近で見ると迫力があるな。」

「それに、すげー水しぶき。っていうか、水しぶきが霧みたいになってる。」

「音も大音響で、大迫力。」

「ちらっとしか見えないが、あの滝壺に落ちたら死ぬだろうな。」

「階段の方に行ってみ。あっちもちょっとした恐怖を味わえるぜ。」



 皆の会話に適当に混ざりながら、高速思考でエレナ様に質問をする。


(昨日聞きそびれたんですが、精神エネルギーの波動が規則的であるかどうとかって、どういう意味なんですか?)

(私も気になっていました。)

(そうじゃのう、、、その話をする前に、ワレら竜族と人間が悪魔と呼んでおる魔族との違いについて説明しておくのじゃ。樹は、竜族と魔族の違いが何か分かるかのう?)

(うーん、、、何でしょう。分かりません。)


(簡単に言うとじゃのう、竜族の精神エネルギーの波動は規則的で、魔族の精神エネルギーの波動は無秩序なのじゃ。じゃから、両者を区別するものは基本的には精神エネルギーの波動の違いだけなのじゃ。)

(それだけですか?)

(魔族も元をただせば竜族じゃからのう。そんなに違いがありはせんのじゃ。)

(えっ!?魔族は元々竜族だったんですか?)

(そうじゃ。そのことを説明しようとすると竜族についても説明せんといかんから、また後で話をしようかのう。)

(了解。)


(魔族も生まれだした初期には、竜族と魔族の区別なく精神エネルギーを奪おうとしておったのじゃが、魔族同士じゃと奪った量よりも少ない精神エネルギーしか得られんことが分かってきたのじゃ。)

(それは魔族の精神エネルギーの波動は無秩序だからですね。)

(美姫は理解が早いのう。)

(前に何かの本で、雑音のように無秩序な信号を同じ量だけ足し合わせても2倍にならない、というのを見たことがあったので、そうじゃないかと思ったんです。)


(そのとおりじゃ。それに、魔族の精神エネルギーの波動は無秩序といっても完全に不規則なのではなく、わずかに規則性を持っておるのじゃ。他の魔族から奪った精神エネルギーによっては、自分がもつ精神エネルギーの保有量が減ってしまったり、可能性はかなり低いが対消滅してしまうこともあるのじゃ。)

(だから、魔族同士では争わず、精神エネルギーの波動が規則的である竜族から奪おうとするのですね。)

(そういうことじゃ。人間の精神エネルギーの波動も規則的じゃから、魔族は人間を襲うのじゃ。)

(悪魔が襲ってくることにそんな理由があったなんて知らなかった。)


(でも、それだと、魔族が竜族や人間の精神エネルギーを奪えば奪うほど、奪った魔族の精神エネルギーの波動も規則的になって、魔族じゃなくなるんじゃないですか?)

(美姫もいいところに気が付いたのう。竜族の精神エネルギーの波動が規則的である理由は、竜族が精神エネルギーの波動を整える整流機関を持っておるからなのじゃ。それに対して魔族は整流機関が疑似乱数発生機関に変容してしまっておるのじゃ。)

(それで魔族の精神エネルギーの波動はわずかに規則性を持っているんですね。)


(ごめん。話についていけてない。)

(つまり、疑似乱数ということは完全な乱数じゃないからわずかに規則性を持っている、ということよ。)

(分かったような分からないような、、、)

(悪魔が持つ疑似乱数発生機関に波動が規則的な精神エネルギーを入力すると、わずかな規則性をもつけれどほとんど無秩序な精神エネルギーが出力されるから、魔族は竜族や人間から精神エネルギーを奪っても、その性質は変容することがないのよ。)

(何となく分かった気がする。)


(樹はそれでよいのじゃ。逆に、竜族は魔族の精神エネルギーを自分のものに変換できるにはできるのじゃが、無秩序な精神エネルギーでは整流機関の変換効率が非常に悪くなるから、事実上できんのと同じなのじゃ。)

(一方通行ということですか。)

(そうじゃ。じゃから、竜族と魔族との戦争では、魔族は竜族の精神エネルギーを奪おうとし、竜族は魔族から精神エネルギーを奪わず消滅させようとするのじゃ。それと同じで、魔獣の精神エネルギーの波動が規則的であればザグレドに吸収させればよいし、無秩序であれば消滅させればよい、というわけじゃ。)

(そういうことだったんですね。)

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