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竜の女王  作者: M.D
2170年春
71/688

20

 部屋に戻ると皆は風呂から上がったところだった。


「あれ?森林は戻ってきたのか?てっきり今夜は龍野さんと2人でしっぽりするんだと思っていたんだが。」

「そんなわけないだろ。佐伯さんが見つからないから一緒に探してたんだよ。」

「佐伯、いなくなったのか?でも、森林が帰って来たということは、見つかったんだな。」

「あぁ。猫に肉をあげているときに眩暈がして倒れてしまったんだと。夕方の件で緊張して疲れてたんじゃないかな。」

「そうかもな。佐伯には刺激が強すぎたのかもしれん。」

「佐伯のことで森林にはまた手間を取らせたな。」


 その後、いろいろ話をしているとすぐに消灯時間になった。


「しまった。風呂に入ってない。」

「そういえば、森林は風呂に一緒に行かなかったんだったな。もう消灯時間だから、今から風呂に行ったら先生に怒られるぜ。」

「そうなんだけど、髪の毛がべとべとしているから、風呂に入らないと気持ち悪くて寝られない。仕方ない、こっそり風呂に行ってくる。」

「止めはしないが、先生に見つかるなよ。」

「あぁ。じゃぁ、行ってくる。」


 階段で静かに1階に降りると、風呂の入り口付近で美姫さんとばったり会った。


「美姫さんもお風呂?」

「うん。あれから部屋に帰って話をしていたら、お風呂に入りそびれて。それで、こっそりお風呂に入ろうと思ったんだけど、樹君も?」

「肯定。」

「奇遇だね。」


「あれ?このホテルって屋上に露店風呂があるんだ。美姫さん、折角だから一緒に行ってみない?」

「えっ!?」


(樹、エロいことを考えておるんではないじゃろうのう?)

(エロいことって、そんなわけないでしょう。エレナ様じゃあるまいし。)

(じゃが、表示には露天風呂は”混浴”と書いてあるように見えるのじゃが。ワレの見間違いかのう?)

(えっ!?本当だ。見落としてた、、、)

(その言葉、本当じゃろうな?美姫の裸を見たいからそう言ったのではないのじゃな?)

(本当です。)


(折角だから私も露天風呂に行ってみたいかな。普段は地下に住んでるから、こんな時にでもないと露天風呂なんて入れないし。)

(ぐぬぬぬ。美姫がそこまで言うのならよかろう。しかし、樹、美姫にエロいことをしたらタダではおかんのじゃ。)

(だから、しません、って。)


「さすがに屋上まで階段で行くのは大変だから、エレベータで行かない?」

「今なら誰もいなさそうだから、先生に見つからないよう早く行こう。」


 幸い、誰にも見つからずエレベーターに乗ることができ、屋上に着くと脱衣場は男女別だった。


「じゃぁ、また露天風呂で。」

「うん。」


 服を脱いで、露天風呂の扉を開けると、誰もいなかった。


「脱衣場に誰の服もなかったから男性客はいないのは分かっていたけど、女性客もいなくてよかった。」


 そう呟きながら体を洗っていると、美姫さんが入ってきた。


(コラ!樹。美姫の体をエロい目で舐めるように見るでないのじゃ。)

(ごめん、美姫さん。見とれてしまった。)

(何が『見とれてしまった』じゃ。美姫は綺麗じゃから、樹が見とれるのも分からんではないがのう。)

(別にいいよ。ちょっと恥ずかしいけど。)

(しかしのう、、、美姫の肌を見れんようにするために、樹の目を潰しておくかのう。)

(エレナ様、怖いことを言わないで下さい。)

(そうですよ。ここはお風呂場なんだから、肌を見せてしまうのは普通じゃないですか。)

(そうなんじゃが。仕方ないのう。今日は樹もほんのちびっとだけ役に立ったから、許してやるとするかのう。じゃが、また美姫をじろじろ見るようなことがあれば容赦せんのじゃ。)

(了解。)


 そくささと髪と体を洗い、露天風呂に入る。


「んんー。やっぱり大きい風呂は気持ちいい。」


 肩まで湯につかってのんびり寛いでしていると、美姫さんも入ってきた。


「お湯加減はどう?」

「このくらいだと長く入っていられるから、僕にとってはちょうどいい湯加減かな。」

「そうね。いつもはもう少し熱めにするけれど、樹君の言う様に長く入っているんだったら、このくらいの温度がいいかもしれないね。」


 美姫さんは僕の隣に並ぶようにして風呂のふちに背中を預けている。


「広い風呂を2人じめできるなんていう贅沢ができるんだから、こっそり風呂に入りに来たかいがあったっていうもんだ。」

「うん。樹君に露天風呂に一緒に行こうと言われたときにはびっくりしたけど、私も来て良かったと思う。」

「あの時は”露天”っていう文字だけを見て何も考えずに美姫さんを誘ってしまってごめん。」

「本当に混浴だって知らなかったんだ。樹君って、たまにうっかりしている時があるよね。」

「申し訳ない。」


 ふと空を見上げると、満天の星空に月が輝いていた。


「月が綺麗だね。」

「えっ!?」

「いつもは地下生活だし、こんな風に夜空を見上げることなんてないから、余計にそう思うのかも。」

「そ、そうね。」

「東京シールドの中に来る前も、意識して夜空なんて見なかったし。ん?どうしたの?」

「う、うん。なんでもない。」

「ん?あ!そういう意味で言ったんじゃない、、、こともないです。」

「えっ!?」


 美姫さんの方を見ると顔が真っ赤だ。


「樹君、これからもよろしくね。」

「こちらこそ、よろしく。って何言ってるんだろう。」

「ふふふ。」


 お互いに見つめあい、僕たちは初めてのキスをした。

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