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竜の女王  作者: M.D
2170年春
69/688

18

(これからどうしますか?)

(そうじゃのう。いろいろ対処方法はあるが、ザグレドにあの魔獣の精神エネルギーを吸収させるのが一番よかろう。)

(ザグレドは悪魔ですから仮初の魂の器から精神エネルギーを吸収することは容易いですが、うまくいくでしょうか?)

(前提条件として精神エネルギーの波動が規則的である必要があるからのう。まずはあの魔獣の精神エネルギーの波動を調べないといかんのう。)


(精神エネルギーはどうやって調べますか?)

(あの魔獣が襲いかかってきたときに一発殴れば、そのときに調べられるじゃろう。)

(大雑把な作戦。)

(いや、樹君、今の状況ではそれが一番確実な方法かもしれませんな。)

(そうじゃろう。)


 エレナ様のドヤ顔が目に浮かぶ。


(精神エネルギーの波動が規則的でなければどうしますか?)

(あの程度であれば、ワレとザグレドでかかれば、一瞬で消滅させられるじゃろう。)

(そうですな。では、ザグレドに主導権を渡します。)


(ザグレド、ばれんように樹の体から出て、あの魔獣の襲撃に備えるのじゃ。)

(承知しました。)


 ザグレドが僕の背中側からこっそり抜け出した。


(まだ動かんとは、樹の精神エネルギーは美味しくなさそうなのかのう。ザグレドとグレンは食いついたというのに。)

(エレナ様、さらっと樹君を貶すようなことを言わないで下さい。)

(それに、樹と一緒にオレたちのことも貶すのはやめて下さい。オレは悪食などではありません。)


(美姫さん、美味しいと言われる精神エネルギーもどうかと思うけど。)

(オレも貴様の精神エネルギーはまずくはないと思うのだが。)

(もしかすると、初めてなので大きすぎる精神エネルギーに警戒をしているのかもしれませんな。)

(なるほど、グレンの言う通りかもしれん。少し樹の精神エネルギーの漏れを少なくしてみるかのう。)



 そして、ついに魔獣が飛びかかってきた。


(グレンの言うことが正しかったようじゃ。ザグレド、やっておしまいなさい。)

(承知しました。)


 バコッ!


 ザグレドは向かってくる魔獣を殴りつける。


(ハッハッハー。どうだ!)

(『どうだ!』ではない。ちゃんと手加減したじゃろうのう?)

(も、もちろんです。)

(で、奴の精神エネルギーは吸収できそうかのう?)

(先程殴った感じではあの魔獣の精神エネルギーの波動は規則的でしたから、吸収できると思います。)

(ならば早う精神エネルギーを吸収するのじゃ。)

(承知しました。)


 殴られて倒れている魔獣にザグレドが触れた瞬間、半透明な姿が消え、小さな黒い塊だけが残された。


(あっという間に終わった。)

(うん。樹君も無事で良かった。)

(『危険なんてありはせん』と言ったじゃろう。一応もしもの時に備えて、ワレも結界を張る準備だけはしておったしのう。)

(エレナ様に感謝を。)


(もう近づいても大丈夫でしょうか?)

(問題なかろう。)


 近づいて小さな黒い塊を確認すると黒猫のようだ。


(黒猫みたいですね。)

(それにまだ子供のようじゃから、何らかの影響で気持ちが高ぶった際に、精神エネルギーが暴走したのじゃろう。この黒猫は普通よりも精神エネルギーの発生量が多いようじゃしのう。)

(精神エネルギーを受け止めきれずに暴走したせいで本能に支配されてしまった、というわけですか。やはり、仮初の魂の器を形成したのは初めてだったのかもしれませんな。)

(ほう、グレンは詳しいのう。)

(精神エネルギーを初めて扱う魔獣の子供が、精神エネルギーを暴走させてしまうことはよくあることですからな。)


(この黒猫はどうしますか?)

(このまま放っておくのも可哀そう。)

(そうですな。このままですと確実に死ぬでしょうからな。)

(エレナ様、いい案はありませんか?)


(そうじゃのう、、、ザグレド、黒猫を依り代にしてはどうじゃ?)

(オレの依り代に、ですか?)

(そうじゃ。この黒猫は普通よりも精神エネルギーの発生量が多いようじゃから、ザグレドの依り代にしてその精神エネルギーを吸わせても問題ないじゃろうし、樹も体の中に悪魔を入れておかずに済むのじゃ。どうじゃ?一石三鳥であろう。)


(僕もずっと体の中に悪魔がいるというのは精神上よろくないので、エレナ様の意見に賛成です。)

(そうね。そうすれば全員が幸せになれるね。)

(ザグレドもよいかのう?)

(問題ありません。)


 ザグレドが黒猫の中に入っていく。


(猫としては破格の精神エネルギーの発生量ですね。精神エネルギーを受け止めきれなかった、というのも頷けます。オレの依り代としは申し分ありません。)

(なら決まりじゃのう。)

(良かったね。)


 美姫さんは黒猫をなでながら言った。


(今回の功労者である樹には、この猫の面倒をみる権利を与えてやるのじゃ。)

(そう言うと思いましたよ。。。)

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