表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の女王  作者: M.D
2174年春
678/688

29

(・・・君!樹君!)

(はっ!)


 グレンさんの呼びかけで、意識を取り戻した。


(こ、ここは?)

(4次元空間ですな。樹君は圭一によってここに強制移動させられたのですな。)

(そうなのですか?真っ暗で何も見えないし、グレンさんの声以外の音も聞こえません。)

(それは、ザグレドが結界を張っているため、外の情報が入ってこないからですな。)

(そうだぞ。あの時、グレンが咄嗟に樹の意識を落とし、オレが結界を張らなければ、今頃、4次元空間の情報量の多さに耐えきれずに樹の精神は崩壊していただろう。)


 僕はグレンさんとザグレドに助けられたようだ。


(多謝。)

(オレの結界のおかげで人間である樹が4次元空間にいても意識を保てているのだ。もっと感謝していもいいのだぞ。)

(ザグレドが展開する結界の本質は情報の遮断ですから、内から情報が漏洩するのを防ぐだけでなく、外から情報が流入するのも遮ることができるのですな。)

(その上、結界によって樹に流す情報も制限することで、3次元空間にいるように感じさせることもできるんだ。)


 確かに、今は上体を起こしている姿勢なのだが、床があるような感触がある。


(ハッハッハー。どうだ!オレの能力は凄いだろう?)

(肯定。でも、1日で2度もザグレドに助けられるなんて。)

(何だと!)


 ザグレドは僕の吐露に怒るが、ザグレドがこれ程までに役にたったことが今まであっただろうか?いや、ない。


(まぁ、そんなことを言えるのであれば、樹君は大丈夫でしょうな。それに、大きな状況の変化に対する動揺も見られないのは好ましい状態だと言えるでしょうな。)

(オレが貶されている状況は好ましくないのだが?)

(そこはザグレドが大人の対応を見せれば良いだけですな。)

(オレは魔族だから大人も何もないのだが?)

(そういう屁理屈を言うから、ザグレドは小物に見られるのですな。)

(ぐぬぬぬ、、、)


 グレンさんがザグレドをやり込めたところで、


(僕はどのくらい意識を失っていたのですか?)


 肝心なことを聞く。


(ほんの数秒ですな。)

(美姫は?)

(エレナ様が補助して魔導盾で守っておられますな。)


 ・・・パシッ!パシッ!パシッ!パシッ!パシッ!


 グレンさんの言葉に続いて、魔導盾が魔導弾を防ぐ音が聞こえてくると、


(樹、意識を取り戻したのなら、早う戦列に復帰するのじゃ。)


 エレナ様が文句をたれ、


(無理しないで、と言いたいところだけれど、私の方も余裕がなくて防戦一方だから、こっちに戻て来てくれると助かる。)


 美姫から帰還を要請される。


(了解。でも、どうやって4次元空間から出たら良いのか分からない。。。)

(いや、樹は4次元空間に留まっておるのじゃ。)


 エレナ様は美姫と逆のことを言う。


(でも、美姫は戻ってきてほしいと――――)

(美姫はワレが守るから、樹はそこからあ奴を狙撃するのじゃ。)


 えっ!?


(ここからですか!?)

(そうじゃ。樹を4次元空間に放り込んで亡き者にした、と、あ奴が慢心しておる今が絶好の機会なのじゃ。それに、あ奴もそこから狙撃されるとは思わんじゃろうしのう。)

(ここから魔導弾を撃って、美姫のお父さんに届くのですか?)

(次元跳躍魔導弾をあ奴に当てられておるのじゃから可能じゃ。ザグレドの結界によって情報が遮断されておるじゃろうから、照準はワレが示してやるのじゃ。樹はその照準に向かって魔導弾を撃つだけで良いのじゃ。)

(・・・了解。)


 エレナ様の指示に従い銃型補助具を構えて照準器を覗き込むと、狙撃点が表示されていた。


(見え方は魔法軍の仮想狙撃訓練施設で訓練する時と同じですね。)

(その方が樹に馴染みがあるから狙いやすいじゃろう?)

(肯定。)


 左に見えた白い的に照準を合わせるよう射線を調整すると、的が拡大されて中央の黒い円が見えるようになる。


(撃つのは徹甲魔導弾にしますかな?)

(それが妥当な選択じゃろう。樹は自分がここだと思った時旬で撃てば良いのじゃ。)

(了解。)


 フーフー

 ドクンドクン


 限定思考を発動すると、呼吸音と心拍音が大きくなったように聞こえ、


(全てを樹に託すよ。)


 呼吸と照準を合わせて息を止めた時、照準と目標が重なった。


(発動!)


 その瞬間を見計らって引き金を引ひく。


 バシュッーー!


 徹甲魔導弾が銃型補助具から飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ