表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の女王  作者: M.D
2174年春
674/688

25

(エレナ様、そろそろ美姫さんと樹君に教えてあげた方が良いのではないですかな?)

(グレン、まだもう少し引っ張れると思うのじゃが?)

(2人は今にも武装解除してしまいそうですから、ここいらが潮時だと思うのですな。)

(ふむ、仕方ないのう。)


 エレナ様とグレンさんは意味深な会話をしている。


(で、エレナ様は何を僕たちに教えてくれるのですか?)

(4次元空間にいるあ奴に魔法を当てる手段についてじゃ。)


 はぁ!?


(さっきは『手も足も出ないじゃろう』と言いませんでしたか?)

(『普通の魔法であれば』とワレが付け加えたのを、樹は忘れておるのじゃ。)

(つまり、エレナ様は僕たちの誤解を招くように言ったのですね。)

(そうじゃ!)


 嬉しそうに断言するエレナ様は確信犯だった。


(・・・落ち込んで損した。)

(そうね。考えてみれば、4次元を認識できるエレナ様がおられるのだから、エレナ様に狙いを定めてもらって、そこに魔導弾を撃ち込めばいいのよ。)

(確かに。そんな簡単なことも思い付かなかったなんて、、、)

(それだけ父が4次元空間いるという事実が衝撃的だった、ってことかも。)


(いや、ワレが照準をあわせても、あ奴に”通常の”魔導弾を当てるのは無理なのじゃ。)


 エレナ様は美姫の案を否定する。


(そうなのですか?)

(美姫は次元の制御ができないのに、どのようにして4次元空間に魔導弾を撃ち込むつもりなのじゃ?)

(先程、4次元空間を脳内に投影して下さいましたが、あの方法は使えないのでしょうか?)

(あれは、あくまで簡略化して情報量を最低限に絞っておるから、正確な狙いを定めることはできないのじゃ。それに、ワレは『普通の魔法であれば』と言ったはずじゃ。)

(つまり、エレナ様は新型の魔法を用意して下さっている、ということでしょうか?)

(そうじゃ!)


 勿体つけられたが、ようやく正解に辿り着いたようだ。


(それはどのような魔法なのでしょうか?)

(それはじゃのう、、、)


 エレナ様は更に勿体ぶって一呼吸おいてから、


(次元を跳躍させることによって相手の障壁を無視して直接射撃するための魔導弾、名付けて、次元跳躍魔導弾じゃ!)


 新型魔法を披露する。


(おぉ!それなら4次元空間にいる美姫のお父さんにも通用しそうだ!)

(そうね。でも、次元跳躍魔導弾を開発されていただなんて、以前からエレナ様はこの局面を想定されていたのですね。流石です!)

(ワレにかかれば、美姫が未来に出会うであろう障害など、まるっとお見通しなのじゃ。ふふんっ。)


 エレナ様は鼻高々と言い放った。


(嘘くせぇ。)

(何じゃと!樹はワレを愚弄するのかのう?)


 僕が正直な思いをポロっと漏らすと、エレナ様はそれに即反応する。


(だって、こんな都合の良いことなんてあるでしょうか?グレンさんもそう思いませんか?)

(・・・。)

(新型魔法をエレナ様と一緒に開発していたグレンさんなら真相を知っているはずなので、正直なところを教えて下さい。)

(・・・。)


 グレンさんはエレナ様を伺う様子を見せた後、


(・・・元々は対悪魔用に、魔法防壁を跳び越えて直接悪魔を射撃するために開発しておった魔法だったのですな。悪魔が展開する複数枚の魔法防壁を貫くのは難しいですからな。)


 と、真相を語ってくれたが、


(・・・開発時にグレンには伝えておらんかったが、4次元を認識できる悪魔と出会った時のこともワレは考慮しておったのじゃ。)


 エレナ様は後付けした苦し紛れの言い訳をする。


(それがエレナ様の言い分ですか。)

(でも、父の優位性を崩せるのだから、新型魔法を開発して下さったエレナ様には感謝しかないよ。)

(そうじゃ。美姫の言うとおり、経緯はどうであれ、この状況で使える魔法があるというのが重要なのじゃ。樹は細かいことに拘りすぎなのじゃ。)


 美姫の擁護にエレナ様が勢いづく。


(それで、次元跳躍魔導弾はどのようにして次元を跳躍するのでしょうか?)

(美姫はいいことを聞くのじゃ。簡単に言うと、圧縮された強力な魔導弾同士を時旬よく衝突させることで次元振動を引き起こすことが出来るのじゃが、その際に低次元の空間が折り畳まれ離れた地点間が繋がるのを利用するのじゃ。)

(しかし、次元振動を引き起こすためには魔導弾の威力と衝突の時旬を緻密に制御する必要があり、その制御に膨大な量の演算が必要なのですな。)

(その演算を肩代わりさせるために、銃型補助具の補助演算装置を使う、と。)


 そこまで聞いて気が付いたことがあった。


(つまり、御二人が開発していた新しい魔導弾は次元跳躍魔導弾だったのですね。)

(そのとおりじゃ。単純な演算の繰り返しは人間よりも機械の方が得意じゃから、補助演算装置に任せた方が良いからのう。)

(適材適所、という訳ですな。しかし、それでも補助演算装置が行う演算の制御と演算結果の取りまとめは人間が行わないといけませんから、大変なことには変わりないのですがな。)

(補助演算装置を使ったとしても、エレナ様やグレンさんの補助が必要なのですね。)

(そうじゃ。それに、あ奴を射撃しようとすれば、ワレが4次元空間を簡略化して、あ奴の位置を2人の脳内に投影する必要があるしのう。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ