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竜の女王  作者: M.D
2170年春
67/688

16

「修学旅行の飯はまずいと思ってたけど、意外とうまかったな。」

「あぁ、そうだな。東京シールドの外側の食事としては悪くない。」


 部屋に戻った僕達は、風呂の時間までまったり雑談中である。


「その言い方がお坊ちゃんっぽいんだよ、斎藤。」

「そうなのか?」

「森林は高校からの編入組だから知らなかったのか。こいつの親父さんは内務尚書補佐官なんだよ。」

「それって偉いのか?」

「上から数えたほうが早いくらいには。知らなかったのか?」

「あぁ。」

「官僚になろうと思ってなきゃ、東京シールドの外側に住んでる者にとってはそんなもんだろう。」

「広瀬は知ってたのか?」

「もちろんだ。」

「そうか。」


「これからどうするよ。俺たちは2番目だから、あともう少しで風呂の時間だし、何をするにしても中途半端になりそうだ。」

「夕食の後すぐに風呂、というのも良くないんだがな。」

「大勢いるんだから、そうする他ないんじゃねーの。」

「24時間風呂に入れるのにか?」

「そこは修学旅行だから秩序だった行動を求められてるんだよ。」

「頭の固い考えは好きじゃない。」


「そういうなよ。暇つぶしにトランプでもするか?負けた奴が恥ずかしい話をする、ってことで。」

「そう言うのはなしで、普通にやろうぜ。」

「しゃーねーな。」


 暇つぶしに始めた大富豪は意外と盛り上がった。



(樹君、今時間ある?)


 皆と風呂に入りに行こうとしていたところに、美姫さんから連絡があった。


(今から風呂に行こうと思っていたから、時間はあるけど。どうしたの?)

(ヒロポンがいなくなったの。)

(いなくなった?)

(うん。ホテルの玄関近くに猫がいて、『その猫にお肉をあげる』って言って出て行ったきり、帰ってこないの。)


(玄関近くは探した?)

(うん。でもいないの。樹君、ホテルに入るときに猫を見なかった?玄関近くを探したんだけど分からなくって。)

(そう言えば、木の茂みに黒猫がいたような気がする。)

(それってどこ?)

(今から行こうか?)

(お願い。)


「すまん。少し用事を思い出したから、先に風呂に行っておいてくれないか?」

「何だ用事って。龍野さんか?」

「まぁ、そうだけど。」

「おぉ、いいぜ。男同士の友情よりも女のほうが大事だもんな。」

「佐野、お前何言っているんだ。森林、気にせずに行ってこい。」

「ありがとう。」


 ホテルの玄関を出ると、美姫さんが待っていた。


「樹君、来てくれてありがとう。」

「猫はあそこの木の茂みあたりにいたんだけど、佐伯さんも猫もいないみたいだ。」

「ヒロポンがあのあたりにいたんだったら、探したらすぐ見つかるはずなんだけど、、、」


 木の茂みの近くまで行くと、見えにくくなっているところに何がか落ちていた。


「佐伯さんって『猫に肉をあげる』って出て行ったんだったよね?」

「そうよ。」

「これって、その肉じゃない?」

「え、、、本当だ。ラップも落ちてる。でも、お肉が半分くらいしか食べられてない。」

「それに、この跡。微かに何かを引きずって林の中に入っていったように見える。」

「そう見えるような気もするけど、、、」


(その跡を追ったほうが良さそうですな。)

(ワレも同感じゃ。)


 グレンさんとエレナ様が話しかけてきた。


(グレンさんも、エレナ様も、どうしてですか?)

(美姫さん、ザグレドが大きな精神エネルギーの存在に気が付きました。)

(おそらく魔獣じゃろう。)

(エレナ様もそうお思いですか?ワシも魔獣だと思いますな。)

(だとすると、早く見つけ出さんといかんのう。)

(魔獣って、どういうことですか?)

(先生に言って助けてもらった方がよくないですか?)

(いや、時間が惜しいのじゃ。ここはワレらで追ったほうが良かろう。)

(ワシもそう思いますな。樹君、美姫さん、魔獣の位置はザグレドが捉えていますので、早く追いましょう。理由は後から説明します。)

((分かりました。))


 林に入って20秒程走ると、大きな動物の姿を見つけた。


(あれってもしかして――――)

(魔獣ですな。ザグレドがあの魔獣と同じ場所から佐伯さんの精神エネルギーを感知しました。)

(跡を追って正解じゃったのう。)

(気づかれないよう、ゆっくり近づきましょう。)

(はい。)


(グレン、ザグレド、結界は張っておるのじゃな?)

(はい。林に入る前からザグレドが結界を張っておりますな。)

(張ってある結界から樹の精神エネルギーだけを漏らすことはできるかのう?)

(特定の精神エネルギーだけを漏らすのはオレの力量では無理ですが、グレンが手伝ってくれれば可能です。)

(なるほど。ザグレドが張った結界を、樹君の精神エネルギーを使ってワシが内側から突き破るんだな。)

(そういうことだ。)


 僕の精神エネルギーを使うのに、僕の了承などいらないらしく、勝手に話が進んでいく。

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