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竜の女王  作者: M.D
2174年春
666/688

17

「もう良さそうね。行きましょう。」


 警備ロボットをやり過ごした僕たちは、再び実験区画に向かって進み始めた。


「しかし、本当に人気がないですね。」

「こんな辺鄙な海域にある島に沢山の人がいたら食料の調達だけでも一苦労だから、小さな人工光合成工場でまかなえる人数しかいないのよ。」

「それもそうですね。幽霊島が消えている間は外に出ることもできませんし。」

「圭一だけはいつでも出入り可能だと言っていたわ。」

「そうなのですか?」

「えぇ。どういう訳かは教えてくれなかったけれど。」


(圭一と融合した悪魔の能力でしょうな。)

(十中八九そうじゃろう。そうなると、あ奴は4次元を認識できる、と考えるべきじゃのう。)


 グレンさんとエレナ様は、真夏さんの発言から、美姫の父親と融合した悪魔の能力を推察する。


(しかし、以前、エレナ様は『天界からこの宇宙に来る際には次元が落ちるために、次元の認識力も制限されるようになっておる』と話して下さいませんでしたか?)

(そうなのじゃが、固有設定値の組み合わせの妙で、この宇宙に来ても4次元を認識できる魔族が稀におるようなのじゃ。)

(そうだったのですか、、、)


 何事にも例外はある、ということか。



(ロベルトが私たちの存在に気付いたようね。こちらに向かってくるわよ。)


 しばらくして、ガレリアが百合子さんに警告を発した。


(それじゃ、私たちの出番ね。)

(百合子さん!)


 ロベルトとの戦闘に備えようとする百合子さんを美姫が制する。


(美姫さん、指揮官の重要な役割は知っているわよね?)

(はい、、、部下に『命を賭して戦え』と命令すること。)

(そうよ。そして、その命令を私にするべき時が今この瞬間なのよ。)

(・・・。)

(さぁ、早く決断して頂戴。丁度この先の交差路でロベルトを迎え撃つのが良さそうだから。)

(・・・分かりました。お願いします。)


 美姫は苦しそうに百合子さんに言った。


(承知したわ。)


(でも、必ず無事に私たちと合流して下さい。)

(分かっているわよ。直ぐに片づけて追いつくわ。)

(妾がついているのだから、万が一にも百合子が負けることは有り得ないわ。安心して先に進みなさい。)


 百合子さんとガレリアの答えが心強い。



「てめぇら、何者だ!?」


 交差路を曲がろうとしたとき、別の通路の先からロベルトの声が聞こえてきた。


「ちっ!見つかったわね。」

「てめぇ、真夏か!?裏切った、と圭一が言っていたのは本当だったんだな。」


 ロベルトが真夏さんを見つけて食って掛かる。


「裏切ったのは圭一の方が先よ。」

「そんなことは関係ねぇ。圭一の言うことが正しいんだから、俺はそれに従うだけだ。」


(『人格が破綻したロベルトを、圭一は上手く手懐けた』と真夏さんは言っていたけれど、発言を聞く限りでは、ロベルトさんは父のことを妄信しているようね。)

(同感。この手の輩は諦めることをしないから、相手をするのが面倒なことが多い。。。)

(その相手をするのは私なのだけれど?)


 美姫と僕の思考伝達での会話に百合子さんが入ってきた。


(そうですね。でも、百合子さんから言い出したことなのですから、責任をもってお願いします。)

(あら?『それなら一緒に』とか話をぶり返すと思ったけれど、美姫さんも指揮官の自覚が出てきて何よりよ。)

(一度百合子さんに任せたのですから、私は百合子さんを最後まで信頼することにしました。)

(言うわね。)

(ですから、必ず勝って下さい。)

(勿論よ。美姫さんも私が合流しようとしたら負けてました、なんてことにならないようにしてね。)

(はい。)

(それじゃ、行きなさい。)


 百合子さんは片手を上げて、僕たちを送り出す。


「百合子さん、ご武運を。」

「任されたわ。」


 僕たちは交差路を曲がって進み、百合子さんは通路を塞ぐように立ち止まった。


「あぁん?てめぇ、何のつもりだ?」

「この先には行かせないわ。」

「1人でここに残ったってことは、俺とやり合うつもりか?」

「えぇ。あなたの命運もここまでよ。」

「俺に勝つ気でいるのか?ハハハ。面白いことを言うな。」

「私は冗談を言ったつもりはないわ。」

「そういう強気なところは俺好みだ。そうだな、、、残りはこの先の圭一とスナモスに任せるとして、俺はてめぇを弄んで楽しむことにしよう。その綺麗な顔をぐちゃぐちゃに歪ませてやるから覚悟しておけ。」


 ロベルトと百合子さんの言い合いに後ろ髪を引かれる思いだったが、百合子さんとガレリアを信じて僕たちは歩みを止めることはなかった。

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