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竜の女王  作者: M.D
2174年春
664/688

15

 真夏さんが石像から悪魔の分体を吸収しつつ島を進んでいると、


 ヒュッ!


 後ろから和香が投げた刃物が美姫の真横を通り、


 トンッ!


 木に突き刺さる音が聞こえた。


「和香、危ないじゃない!」

「申し訳ありません。しかし、毒蛇を見つけましたので、美姫様を守るために事前排除しておくべきだと考えました。」

「そうなの?」


 刺さった刃物を見ると、見事に蛇を木に縫い付けている。


「本当ね。ありがとう。でも、声をかけてから投げてほしかったよ。いきなり横を刃物が通ったらビックリするんだから。」

「承知しましたが、一刻を争う場合は美姫様の安全を最優先させて頂きます。」


 和香はそこは譲る気はないらしい。


(なんか、和香と初めて会った時を思い出すね。)

(同感。虫を排除するために目に止まらぬ速さでクナイを投げたんだったっけ?)

(そうよ。それで、和香が身体強化できる魔法能力喪失者だって分かったのよね。その時に、グレンさんに『魔法使い自らが手綱を握らなければならない』と言われたのに、私が和香を御せているとは全然思えないよ。)

(無駄に有能だからなぁ。)

(和香が逃げ出したり反抗したりするとは思えないけれど、私のためを思ってする行動が過剰なのよね。。。)


(それと、さっきの会話って実習に行った時にした会話に似てなかった?)

(私もそう思った。あの時は魔導弾が掠めたのは麗華さんで、その魔導弾を撃ったのが私だったよね。)

(麗華さんと同じ立場になってどうだった?)

(あまりいい気分じゃなかった。当時の麗華さんの気持ちが分かった気がするよ。)


(どちらも高校2年生の時のことか。最近のことのような気もするけど、随分昔のことのようにも感じる。)

(そうね。あれから色々あったし、こうして幽霊島にいるなんて、あの頃の私たちに言っても信じてもらえないでしょうね。)

(肯定。)



 その後も1度も戦闘せずに進み、何事もなく緊急出口まで辿り着いた。


「あれが緊急出口なんですか?」

「えぇ。そうよ。」

 

 緊急出口は森の木に偽装されているため、言われないと気が付かない。


「普段は地面に隠れていて、緊急時に開いたりするんだと思ってました。」

「緊急時は動力も切れているかもしれないから、そんな仕組みだったら出口が開かなくなってしまうかもしれないじゃない。」

「成程。」


「研究施設は地下にあると聞いていましたが、地上には本当に何もないんですね。」

「周りは木が立ち並んでいるばかりで、研究施設があるとは思えないです。」

「少しでも施設が露見する確率を減らすためよ。圭一はそこら辺が抜かりないわよね。」


(確かにこの先に魔族との融合者がいるようじゃのう。魔族の気配を感じるのじゃ。)


 エレナ様が悪魔の存在を告げる。


(数は分かりますでしょうか?)

(・・・3体、いるようじゃのう。)

(真夏さんが言っていた数と符号しますね。)

(いよいよじゃのう。どんな展開になるのか楽しみじゃ。)


(いつもながらに、エレナ様は緊張感のかけらもないですね。)

(エレナ様にとっては、毎回遊びのようなものですからな。)

(そんなエレナ様は、シィルさんにコッテリ絞られればいいんだ。)


(樹、なんてことを言うのじゃ。樹も1度シィルにこき使われてみればいいのじゃ。そうすれば、ワレの苦労が分かるから、そんなことを言えなくなるのじゃ。)

(拒否。)


 有能な秘書の鏡であるようなシィルさんに迷惑をかけるエレナ様が悪いのであって、僕はそんな目にはあいたいくない。



「今なら大丈夫そうだから、近づきましょう。」


 辺りを探っていた真夏さんに続いて緊急出口に向かう。


「ここまでは順調だったね。」

「肯定。ここからが本丸。」

「でも、”出口”というだけあって、こちら側からは扉を開けられそうにないです。」

「そのようね。無理矢理こじ開ける、という手もあるだろうけれど、そうしたら、私たちはここかから侵入します、って宣言するようなものだし、、、」


 緊急出口に着いたはいいものの、中に入ることが出来なさそうだ。


「そこは天才の真夏さん。こういうこともあろうかと、緊急出口を開ける手段は開発済みで、持ってきているのよ。」


 自慢げに小型機器を取り出す真夏さん。


「これを使えば、扉を開けたことすら施設の管制系に伝わらない優れものよ。」

「でも、以前、緊急脱出用の船で釣りに行ったのだったら、帰りにここを通って施設の中に入ったんだから、そんな物を開発しなくても扉を開ける機器を持ってたりするんじゃないですか?」

「当時は、中に連絡して開けてもらっていたのよ。」

「そうだったのですか。」


「それじゃ開けるわね。」


 真夏さんは扉の端にその小型機器を取り付け、何やら操作すると、


 ズズズ


 扉が開いた。

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