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「海賊船の他に、この幽霊島で見かけた遺物ってあったん?」
歩き出して直ぐにロジャー教授が問うと、
「そうね、、、島の北側に古い飛行機が放置されていたわ。」
真夏さんは記憶を探って答えた。
「それってどんな形だったん?」
「確か、、、頭に回転羽根が1つある、ずんぐりむっくりした大型の機体だったわ。」
「おぉ!それは旧アメリカ海軍のアベンジャー雷撃機なんよ!凄い発見なんよ!どうしてそれを発表、、、出来るわけないんよ。。。」
発表できない理由を察してロジャー教授はションボリしていたが、
「アベンジャー雷撃機って何ですか?」
と、珠莉が質問すると、
「1945年の12月に訓練飛行中に消息を絶って行方不明になった飛行機なんよ。通信記録から、コンパスが誤動作していたことが分かっているんだけれど、こんな島があったらコンパスも狂う、というものなんよ。この海域の海流は速いから、海に墜落していたら見つかることはないと思っていたんだけれど、存在しているのを知ったからには、やっぱり見てみたいんよ!」
興奮したように返答を捲し立る。
「そうだったのですか。私はあまり興味がないのですが、事が終わった後であれば見に行ってもいいのではないでしょうか?」
「はっ!そうなんよ。珠莉君はいいこと言うんよ。小生は今じゃなくても問題ないから、美姫さんも、それでいいかなん?」
珠莉の思い付きに食いついたロジャー教授に、
「島を出るまでに時間があればいいですよ。」
「やったー、やったー、ヤッターマン!」
それで大人しくなるのではあればと美姫が了承すると、ロジャー教授は訳の分からないことを口にして小躍りしながら喜んでいた。
(はぁ、、、クソエロじじぃにも困ったものだわ。)
(普段の百合子さんの心労がしのばれます。)
(そう思うのだたら、樹はもっと私を労わってくれてもいいのよ。)
(拒否。)
(えー、どうしてー。)
そのまま島の中を進むと、
ズンズン
こちらに向かってくる音が聞こえ、
「止まって。あれが、この島を警備している石像よ。」
真夏さんが示す先に四つ腕を持つ人型の石像が姿を現した。
「四角い角ばった形状を想像していたけれど、人間らしい姿をしているのね。」
「しかも四つ腕で、銃、槍、剣、盾、と遠近問わない攻撃手段と防御手段を持っているので、戦いにくい相手のように感じます。」
「それに、多分戦闘を行ったら仲間を呼ぶのでしょうから、真夏さんがいて助かるわ。」
「そう言ってくれると嬉しいわ。動かないようにするから、ここで待っていて。」
口々に感想を言っていると、真夏さんが石像に近づき、
「戻ってきなさい。」
手をかざして悪魔の分体を吸収すると石像は動かなくなった。
「もう大丈夫なんですか?」
「えぇ。終わったわ。」
「良かった。」
戦わずに済んだことに安心する僕たちに対し、
「もっとこう激しい戦いを想像していたのに、なんか、あっさりでつまらないんよ。」
不平を言うロジャー教授だったが、
「激しい戦いとやらがお望みなら、次に石像が現れたら、クソエロじじぃに相手をしてもらいましょう。」
「そうですね。人間は痛い目を見ないと理解できない、と言いますから、ロジャー教授も自分が体験なされば、安全に敵を排除できたことの有難みを分かって頂けると思います。」
「・・・ゴメンなんよ。」
百合子さんと和香に窘められて平謝りだ。
(でも、こうもあっさりだと拍子抜けだと思うロジャー教授の気持ちも分からなくはないけど、それを言ってしまったらお終いだ。)
(そうね。今程は1体だけだったから良かったものの、仲間を呼ばれて複数の悪魔の分体との戦闘になったら厄介だものね。)
僕たちは真夏さんの悪魔の分体と戦った時のことを思い出し、
「そう言えば、真夏さんの悪魔の分体って、『魔力の供給が断たれると緩やかに消滅してしまう』のではなかったのでしょうか?」
「なのに、真夏さんが幽霊島からいなくなっても悪魔の分体が石像を動かせているのは不思議よね。」
石像を排除して再び歩き出した後に、ふと疑問に思って真夏さんに聞いてみると、
「それは、研究施設で適当な悪魔を拘束していて、それから吸いだした魔力を石像に供給する機構があるのよ。私が悪魔の分体に下した命令は、『島を徘徊して侵入者を排除すること』と『魔力が少なくなったら供給地点まで戻ってくること』だから。」
とのことだった。
「まるで、自動お掃除ロボットみたいだ。」
「そして、石像に掃除されるのは侵入者、って訳ね。」
「美姫さんは上手いこと言うんよ。」
「はい。これは記録しておかねばなりません。」
美姫の言葉に感心するロジャー教授と情報端末にメモ書きする和香。
(今の言葉って、ミセシメ会の会報に載せられちゃうかな?)
(絶対。)
(やっぱり。和香の前では失言しないように気を付けないと、、、)




