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竜の女王  作者: M.D
2170年春
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(僕達人間が固有設定値という数値を持っているなんてゲームの世界みたいですが、固有設定値ってどういうものでなのですか?)

(固有設定値はこの世界の全ての存在がもつ能力限界の設定値じゃが、人間はワレらに作られたゲームの中の存在とは言えなくもないから、樹の言うことは外れてはおらんじゃろう。)

(最初にエレナ様と会話した時に、そんな話をされていましたね。あの時は混乱していたから聞き流してしまっていたけど、本当のことだったなんて、、、)

(貴様はエレナ様がおっしゃったことが嘘だったとでもいうのか?)


 ザグレドにまた睨まれた気がする。


(ザグレドもそう言うでないのじゃ。樹がそう思ったのも致し方ないのじゃ。)


(エレナ様、私達の固有設定値について教えてもらえませんか?)

(よかろう。美姫の固有設定値は100万人に1人くらいしかいない程高い数値じゃ。樹は、、、まぁ、普通?)

(何故に疑問形なんですか?)

(固有設定値の数値自体は普通なのじゃか、今はその数値の組み合わせがワレが持つ固有設定値の一部と相似形をなしておるのじゃ。ワレと魂の絆を結べたのじゃから、普通とはいえんじゃろう。)


(樹君がエレナ様と魂の絆を結べたのは、本当に偶然なんですね。)

(偶然と言えば偶然なのじゃが、少しだけ違っておったから魂の絆を結ぶために、あの時に樹の固有設定値をいじったがのう。)

(さっきの”今は”という言葉に引っ掛かっていたんだけど、そういう意味だったんですか。それに、そんな話聞いてないです、、、)

(あれ?言っておらんかったかのう。美姫を助けるためじゃと思って諦めるのじゃ。それに、上方修正じゃから樹は損をしておらんしのう。)

(はぁ、、、もういいです。分かりました。)


 会話が途切れ、バスはホテルに向かって坂道を上がる。


(エレナ様、紹介したい者がいます。)

(よかろう。誰じゃ?)

(オレと融合した人間です。)

(ご挨拶が遅れて申し訳ありません。桐生紅蓮です。以後お見知りおきを。しかし、ザグレド、紹介するのが少し遅すぎやせんか?)


 廃墟で聞いたザグレド以外の声が聞こえた。


(すまない。言い出すタイミングを逃した。)

(紅蓮さん、ってもしかしてグレン・ハーデスさんですか?)

(よくご存じですな。そうです、杏樹と結婚する前はグレン・ハーデスと名乗っていましたな。)

(美姫さん、グレン・ハーデスって、、、あの”楯系”の?)

(そうよ。)

(証明のしようはないのですが、人間であったころのワシは”楯系”の魔法使いでしたな。もっとも、ザグレドと融合したので少しずつ変容していますが。)

(すごい!学校で習った歴史上の人物と話ができるなんて。)


(歴史上の人物と言われると恥ずかしいですな。)

(そんなことありせん。東京における実質的な”楯系”の創始者である桐生杏樹と結婚した人なんですから。)

(そうですよ。 グレンさんがいなければ、今の桐生家はなかったかもしれないんです。)

(ワシがいなくてもハーデス家の誰かが杏樹と結婚していたでしょうな。)

(そうなんですか?)

(杏樹と見合いをした者はワシの他にもおりましたからな。ワシは杏樹に一目惚れしてしまったので、強引に縁談を進めたのですな。)

(一目惚れした女性と恋に落ちて結婚なんてロマンチックですね。)


(まぁ、グレンはヒューストンに妻子をおいて東京に来ていたので、杏樹と結婚するためにちょっともめたらしいですけど。)

(ザグレド、余計なことを言わないでくれ。)

(えっ!?グレンさん奥さんがいたのに別の女性に一目惚れして結婚したんですか?)

(言い訳にもなりませんが、当時は一部の魔法使いを除いて恋愛の自由はありませんでしたから、ワシと最初の妻は子供を作るためだけの関係でしたな。そんなんでしたので、東京に来て杏樹に会い、話をし、恋に落ちたワシは、杏樹と結婚する以外の選択肢を選ぶなんてことはできんかったのですな。)

(でも、優秀な魔法使いは3人まで結婚が許されているんじゃないんですか?)

(それは第1次悪魔大戦の後にできた制度ですな。優秀な魔法使いを生み出すことが最優先事項となりましたので。それまでは、魔法使いは今のような地位を得ておりませんでしたので、普通の法律が適用されていましたから。)

(そうだったんですね。)

(はい。こんなワシですが、よろしくお願いします。)


(ところで、樹君の精神エネルギーを大きく見せてワシらを誘い出すとは、エレナ様も策士ですな。)

(ワレもお主たちに会ってみようと思っておったからのう。他の生徒も来ると聞いて、ワレらを選ぶよう餌を撒いておいたのじゃ。)

(その餌にまんまと食いついてしまったというわけですか。いや、お恥ずかしい限りですな。)


(餌って僕のことですか?)

(そうじゃ。何か文句でもあるのかのう?)

(大有りですよ。)

(そうです。樹君を危険な目に合わせないで下さい!)

(何じゃ美姫まで。常に警戒しておったし、ザグレドが襲ってきたときにはちゃんと防壁を張って樹を守ったではないかのう。)

(そうだ。エレナ様だからこそ防壁を張ってオレが樹の精神エネルギーを奪うのを阻止できたのだ。折角だから貴様たちにエレナ様の素晴らしさを教えてやろう。オレたちのいた第6王領では――――)


 突然ザグレドがエレナ様のことを称賛しだした。


(グレンよ。ザグレドはいつもこんな感じなのかのう?)

(いえ、普段はそうでもないのですが、エレナ様のことは時折熱く語っておりましたから、ザグレドはエレナ様のことを心酔しているのやもしれませんな。)

(そうか。)


 窓の外を見ると、坂を上り終えたようだ。


(もうすぐホテルに着くみたいだから、話はここまでにしませんか?)

(そうじゃのう。グレンとザグレドの話を聞くのはまた今度にしようかのう。)

(承知しました。)



 バスがホテルに到着する直前に純一先生から今後の指示があった。


「バスを降りたらホテルのロビーにおいてある自分の荷物を部屋に持ってくように。それから、修学旅行のしおりに書いてあるとおり6時から2階の大広間で夕食だから遅れないように。それまでの間は自由行動とするが、ホテルからは出ないように。以上だ。」


 バスを降りてホテルに向かう途中、木の茂みに黒猫がうずくまっているのが見えた。

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