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「少し話をし過ぎたわね。続きをしましょう。」
「誓約を父に反故にさられたのに、まだ黒龍会のために戦うのですか?」
「今まで一緒に過ごしてきた仲間が黒龍会にいるから、放り出して私だけ逃げるわけにはいかないのよ。」
「真夏さんは義理人情に厚いんですね。」
「褒めても手加減したりしないわ。」
真夏さんがそう言うなり悪魔の分体が追加で現れ、その数を倍増させる。
「先刻は樹に分体たちの全方位攻撃を防がれたけれど、これならどうかしら?2人がどんなに優秀でも、物量で押されたら抗うことは難しいでしょう?」
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
数が増えた悪魔の分体たちが雨霰のように魔導弾の一斉射撃を浴びせてくる一方で、
ドガンッ!
攻撃に参加していなかった一部の悪魔の分体たちが、共同で砲撃魔導弾を撃ってきた。
(まずい!)
反撃しようとしていた美姫が行動を中止して魔導盾を発動し、
バシッ!
何とか砲撃魔導弾を防いだところに、
バンッ!バンッ!
砲撃魔導弾で開いた魔導核の隙間から真夏さんが魔導弾を撃ってくる。
(これは避けられない!?)
「きゃっ!」
無理な姿勢で魔導盾を発動していた美姫は魔導弾をやはり避けきれず、直撃を食らってしまった。
(美姫!?)
心配して即座に美姫に問いかけるが、
(大丈夫よ。咄嗟に簡易防護鎧がある所で体を守ったから。)
(良かった。。。)
無事なようで安心した。
「そんなものを戦闘服の下に装着していたのね。」
破れた戦闘服から見える簡易防護鎧を見て、魔導弾が直撃したにも関わらず美姫が健在でいる訳が真夏さんにも分かったようだ。
「防護鎧から着想を得て国防軍の開発部に作ってもらった簡易防護鎧の試作品です。」
「成程ね。その存在を知らない相手には、一度だけなら驚きによる寸時の硬直時間を与えられるのだろうけれど、私にはもう効かないわよ。」
「はい。奥の手をもう晒させられてしまいました。」
「ふふふ。残念だったわね。」
真夏さんは余裕の表情を見せる。
「さて、これで頼みの綱も失ったし、私には勝てないことが分かったんじゃないかしら?降参したらどう?」
「・・・。」
「そう。まだ続けるつもりなのなら、私は別にいいわよ。」
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
今度は一斉射撃による魔導弾を撃つ悪魔の分体の数が減り、
ドガンッ!ドガンッ!
砲撃魔導弾を2発撃ってきた。
(そうくるなら!)
美姫の魔導盾では1発の砲撃魔導弾を防ぐのが精一杯のため、1発は回避しつつ、もう1発は魔導盾で阻止する。
バンッ!バンッ!
更に真夏さんが同じように砲撃魔導弾で開いた魔導核の隙間を狙ってくるが、
(同じ手は通用しない!)
防がないといけない悪魔の分体からの魔導弾の数が減ったことによる余力を生かして魔導核の穴を素早く修復し、
パシッ!パシッ!
真夏さんが撃った魔導弾を妨げる事に成功すると、
「むぅ、やるわね。」
真夏さんは悔しそうに唸った。
「徐々に真夏さんの攻撃方法が分かってきましたから。」
「防御するだけじゃ私には勝てないわよ。」
「それは分かっています。」
「だったら、あなた達がまだ諦めていないのは、簡易防護鎧以外にもまだ隠し玉を持っているのかしら?」
(当たり前だのクラッカーじゃ。)
真夏さんの問いにエレナ様が即座に反応するが、そんな話は聞いていない。
(えっ!?そうなのですか?そんな切り札があったことを美姫は知ってた?)
(ううん。知らなかった。でも、エレナ様には秘策がおありなのよ。)
(そうじゃ。真夏とやらは精神エネルギーに支配格をのせることで悪魔の分体に命令をしているようなのじゃ。)
(支配格?)
(ワンちゃんと戦った時に、エレナ様がご褒美として手伝って下さった時のことを思い出して。)
(・・・あぁ、 『上下関係が確立した後、下位者に対して上位者が命令するときに使用される令格のこと』だっけ?)
(そうよ。)
(でも、それが分かったからと言って、どうなるわけでも――――)
(その支配格を奪い取ってしまえば、悪魔の分体にワレらの命令を聞かせることができるようになるのじゃ。)
僕の発言に被せてエレナ様が解決策を提示してきた。




