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「ちっ、美姫に救われたな。」
恭介さんは苛立ち気に舌打ちし、
「これならどうだ!」
グゴーッ!グゴーッ!グゴーッ!グゴーッ!グゴーッ!グゴーッ!
細切れにした魔導砲を両手を使って雨霰と放ってきたため、
(こんなこともできるのか。)
(魔導砲だから一発一発が重いのに、それを連発してくるなんてね。)
その全てを防ぐべく、美姫と僕は魔導盾を発動し続けることに専念する。
(悪魔の分体の力を使い、魔導砲を強制的に遮断して細切れにしておるようジャ。)
(しかし、魔導砲を細分したことによって手数は増えていますが、威力は落ちてしまっているのですな。)
(肯定。魔導砲は連続する高圧力の魔導力へ対応し続けないといけないところが辛いのですが、これなら威力のある巨大な魔導弾とほとんど変わらないです。)
(そうよね。命令規則を強度以外にも割り振れるから、こんなこともできてしまう。)
美姫は魔導盾の形状を変え、魔導砲を恭介さんの方に反射させた。
「何!?」
僅かに戸惑った恭介さんだったが、
バゴンッ!バゴンッ!
反射された魔導砲に魔導砲をぶつけて対消滅させる。
(瞬時に回避ではなく迎撃を選んだとは、あ奴も良い判断をしたのジャ。)
(そうね。もし避けてくれていたら、魔導弾の追い打ちができたいたのに。)
(魔導力の衝突による閃光を目くらましにして立ち位置を変えておりましたから、美姫さんによる追撃も考慮にいれていたのでしょうな。)
(あの一瞬でそこまで考えられる恭介さんだけど、それでも魔法能力の低さを補いきれていないのは残酷に思えます。)
(しかも、悪魔の分体の力を得た上でジャ。)
(そう考えると、恭介さんは兵士ではなく指揮官向きなのかもしれませんね。)
(しかし、兵士は弱い指揮官には従おうとしませんから、難しいところですな。)
(痛し痒し。)
(後ろ盾を得て参謀として働く方が、あ奴としては適しているとワレは思うジャ。)
(そうかもね。その話をして説得したらこちら側に来てくれるでしょうか?)
(あの様子だと無理でしょうな。)
(同意。)
「くそっ!これも駄目だったか。」
クシャリと髪の毛を掴んで不満気に恭介さんは僕たちの方を睨んだ。
「恭介さん、もう止めませんか?」
「あくまで俺を軽んじるか!そんなに魔法使い御三家の魔法使いは偉いのか!?俺だって魔法使い御三家に生まれてさえいれば、貴様らなど軽く蹴散らしてやれるというのに。」
恭介さんは悔しさを露わにし、歯を食いしばる。
「そうかもしれませんが、今更出自は変えられません。」
「だからこそ、悪魔と融合までして力を得たのだ。それなのに、まだ足りないというのか!」
「恭介さんが融合した悪魔が本物であれば、私たちも苦戦を免れなかったでしょう。」
「貴様も同じことを言うのか!?」
「はい、私もお義母様と同じ意見です。融合者と戦ったことがありますが、こんなものではありませんでしたから。」
「貴様の言う融合者とは、麻由美大将閣下のことか?」
「そうです。」
「・・・上級魔法使い候補となるだけの実力を持ち、悪魔との融合を果たした麻由美大将閣下でさえ貴様らに勝てなかったのか。」
「決着は付きませんでしたが、私たちが優勢であったことは、ここに私たちがいることが証明しています。」
「最終的には悪魔同士が討ち合い、女神によって終止符が打たれたのだったな?」
「はい。」
「そうか、、、」
美姫の話を聞いて、恭介さんは考え込んでいるようだ。
(このまま恭介さんが引いてくれたらいいのにね。)
(同感。恭介さんにも勝ち目がないことが分かっているだろうし。)
そう僕たちが期待をしていたところ、
(あのまま激高していたら良かったのに、時たまこいつがこうやって冷静に考えてしまうのは俺っちの魔術がかかりきっていないからだべさ。)
恭介さんの中から別の声が聞こえてきた。
(この声って、、、)
(恭介さんの中にいる悪魔の分体の声じゃないかな?)
(そうジャ。)
(その声が聞こえるということは、悪魔の分体を取り込めてすらいなかったようですな。)
(『融合する悪魔も見たし、儀式も行った』と恭介さんは言っていたけれど、恭介さんは騙されていたのか。)
(そうみたい。黒龍会も酷いことをするね。)
(謀られる方が悪いのジャ。)
(その時にはもう悪魔の分体に取り付かれていて、誑かされておったのかもしれませんな。)
(でも、悪魔の分体に取り付かれているなんて、南部さんや鈴蘭と同じだ。)
(もしかしたら、2人も黒龍会の融合者によって悪魔の分体を送り込まれたのかもね。)
(だとしたら、その融合者がここにいる可能性もあるってことか。)
(黒龍会の長老か真夏さんが元凶だったらね。)
そんな話をしていると、
(盛り上がる展開になっておるようじゃのう。間に合って良かったのじゃ。)
楽しそうに呟く声をふと捉えた。
(ん?ギレナ、何か言った?)
(ワレは何も言っておらんのジャ。)
(樹、どうしたの?)
(エレナ様に似た声が聞こえた気がしたけど、エレナ様がここにいるはずないし、気のせいかも。)
無理矢理納得した僕だったが、僕たちの方を見つめる鼬が居ることに、この時はまだ気が付いてなかったのだった。




