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竜の女王  作者: M.D
2174年冬
624/688

07

(そんなことより、ここに着いてからずっと気になっていたのだけれど、どうして不二子さんが居るのかな?)

(亜紀様が許可されたからだろうけど、僕も不思議に思ってた。聞いてみたら?)

(そうね。)


「不二子さんは何のためにここにいるのですか?」


 美姫は、桃色の看護服を着た不二子さんにそう問いかけた。


「勿論、私も参戦するためです。龍野家に御厄介になっている身としては、少しでもお役に立つことをして恩返ししなければならないと思った次第です。」

「それで、本音は?」

「富士の修練場には魔法使いの方々の源流となった陰陽師がいるとか。まだ解明されていない能力を持つその陰陽師を捕らえ、人体実験をしたり解剖したりしながら御兄様とホルホルしようかと。」


(はぁ、、、不二子さんらしい、といえばらしい考えね。)

(同感。)


「でも、不二子さんは戦えるのですか?結構激しい戦闘になると思いますが大丈夫ですか?」

「はい。そこいらの強人薬を使用した魔法使いの紛い物よりは働けると自負しています。」


 そう言って不二子さんが亜門の方をチラリと見ると、


「ぐっ、言い返せないところが辛い、、、」


 亜門は悔しそうな顔で俯く。


「強人薬を使用した亜門は初級魔法使いなら倒してしまえるのに、不二子さんはその亜門よりも強いのですか!?」

「はい。御兄様に横恋慕している亜門は、事あるごとに私に突っかかってくるのですが、その悉くを退けております。」

「不二子ちゃんは義体だから人間離れした動きが出来るし、模擬戦ではその義体を完璧に操って亜門を圧倒していたものね。私も初めてみた時には驚いたわ。」

「そうだったのですか。であれば、ジョージ王子が連れ去られた反魔連の研究所では、六波羅が不二子さんを止めてくれていなかったらどうなっていたか分かりませんね。」

「いえ、龍野家の情報収集部隊を片づけるだけなら可能でしたでしょうが、美姫様と樹様が相手では御兄様の身を守りながら逃げおおせていたかどうか分かりません。」


「それでも不二子ちゃんは亜門よりも強いのだから、六波羅に恋焦がれる亜門にとっては護衛として側に付くこともできないし、高い壁なのよね。」

「亜門は六波羅を崇拝しているだけかと思っていたけれど、そうではなかったのですね。」

「御兄様に告白したければ私を倒してからにしなさい。もっとも、簡単には倒されてあげませんが。」

「ぐぬぬぬ、、、」


 何故か途中から亜門を弄る会のごとくなっていたが、


「只今、作戦が第2段階に入った、との報がありました。我々も行動を開始した方が宜しいかと。」


 左衛門さんが会話を遮って亜紀様に声をかける。


「そうね。行きましょう。」

「はい。では、亜門が先導致しますので、ご同行願います。」


 それから、短い距離だが登山が始まった。


(作戦が第2段階に入った、ということは、雄平大将が魔法軍に動員をかけたのか。)

(そのようね。魔法軍の哨戒兵に龍野家で調教した狼魔獣を発見させるまでが作戦の第1段階で、その報を受けた雄平大将が魔獣の群れがいた場合を想定し、過剰とも思える兵を動員して狼魔獣の討伐を始めるまでが作戦の第2段階。)

(そして、狼魔獣が黒龍会の本拠地に逃げ込んで”偶発的に”魔法軍と黒龍会の戦闘が開始されるまでが作戦の第3段階で、戦端が開かれて黒龍会の警戒が緩んだ隙に僕たちは別の入り口から乗り込む、と。)

(そう。魔法軍内にいる黒龍会の間者が気が付いた時にはもう戦端が開かれているわけ。それと、狼魔獣は機械の獲物を追うように調教されているのだけれど、調教の際にはワンちゃんも協力したみたい。)

(普通は狼魔獣の調教なんて出来ないから、黒龍会の間者も狼魔獣が富士の修練場に向かうなんて思わないだろうし。バイローは狼魔獣の親玉みたいなものだから、狼魔獣も素直に従ったんだろうけど、この案を思い付いた、ってことは、亜紀様にはバイローのことが知られている、と考えても良さそうだ。)

(今更だけれどね。)


 しばらく歩くと、崖の下に設置された簡易トイレが見えてきた。


「あそこが目的地?」

「うん。和香、あれが黒龍会の本拠地への入り口なのよね?」

「はい。非常時の逃避用の出入口のようですが、我々はあそこから最短距離で黒龍会の長老の居室まで向かいます。」


「魔法軍と黒龍会の戦闘が開始されされたら、黒龍会の長老も居室から出てくるんじゃない?」

「その場合も考慮して、居室までの通路の選択を行っているらしいよ。」

「良く練られた作戦だ。」

「それもこれも、美姫様と樹様が黒龍会の情報を手に入れて下さったから可能になったことです。」


「もう一人の融合者である真夏元中尉は何処にいるのか分かっているの?」

「いえ。ですが、修練場の中にいることだけは確かめられています。」

「だったら、今度こそ逃げられないようにしないと。」

「真夏元中尉の行動には注意しておいてね。」

「はい。得られた情報をもとに、修練場の全ての出入口を龍野家の情報収集部隊が監視していますので、そのどこからか真夏元中尉が逃げ出せば直ぐに知らせが入る予定です。」


「と、言っているうちに、魔法軍の先遣隊が到着したみたい。」


 美姫につられて上空を見上げると、空を飛んできただろう魔法使いと、高速飛空艇から降下している魔法使いが見えた。


「聞いていた通り、魔獣を狩るだけにしては人数が多い。」

「近くにこれだけの魔法使いが来ているのだから黒龍会も警戒はするだろうけれど、見つかったわけじゃないから、このまま大人しくしていればやり過ごせる、と考えているはずよ。」

「魔法軍の魔法使いの方々も、まさか黒龍会と衝突することになるとは思っておられないでしょうね。」

「どちらにとっても想定外の交戦になるのか。」

「何にせよ、私たちの決戦ももうすぐよ。」


 僕たちが突入する時間は間近に迫っていた。

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