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竜の女王  作者: M.D
幕間17
616/688

01

 今日、美姫と僕は華恋と珠莉、それから右京君の高校卒業を祝う食事会に来ている。


「華恋ちゃん、卒業おめでとう。」

「ありがとうございますの!多くの人から『おめでとう』と言われましたが、御姉様からの祝福が一番嬉しいですの!」


「珠莉も卒業おめでとう。」

「樹様、お祝いの言葉ありがとうございます。」


 華恋と珠莉は美姫と僕から祝言を貰って、晴れやかな笑顔だ。


「卒業式には行けなかったけれど、華恋ちゃんの答辞は素晴らしかったと聞いたよ。」

「御姉様と比べたら全然ですの。」

「美姫様の答辞は衝撃的でしたから、あれを超えようとすると仮装して答辞を読むくらいしないといけない気がします。」

「仮装か、、、過去には代表者が仮装して卒業証書を受け取る慣習のある大学もあったらしいから、やってみたら面白いかもしれない。」

「そうね。華恋ちゃんだったら、どんな仮装がよかったかな?」

「御姉様、想像するのはいいですけれど、私は絶対にしませんの。」

「可愛らしい猫とかどうでしょう?」

「チンチクリンだから鼠とかがいいじゃないか?」

「衝撃的なのだったら、背中に羽をつけて天使とかどう?」

「3人とも、私は絶対にしないと言いましたの。この話題はこれで終わりですの!」


 華恋は心底嫌そうな顔で幕引きを図った。


(あれからもう1年経つのね。)

(時が過ぎるのはあっという間だ。)

(卒業の季節だからか、高校時代が懐かしく思えるよ。)

(同感。僕たちにとっては激動の1年だったから、遠い過去のように感じる。)

(そうね。)


「右京君も卒業おめでとう。」

「ありがとうございます。」


 前菜を持ってきた右京君にも卒業祝いを言う。


「右京君、今日くらいは給仕なんかせずに、一緒に食事したら?」

「私もそう言ったのですが、給仕をしている方が気が楽だから、と言って右京は私の提案を拒否したんですの。主人の言うことがきけないなんて怪しからんですの。」

「そう言われましても、一般人の僕が魔法使いの方々と一緒に食事をするなんて畏れ多くて落ち着かないので、ご勘弁して頂きたく。」


「あれ?でも、いつだったか、右京君は珠莉と普通に話しながら食事をしてなかったっけ?」

「それは、お嬢様の従者として珠莉さんとは普段から会話することも多く、慣れているので平気だからなのだと思います。」

「右京が珠莉と食事をしたことがあるなんて初耳ですの。もしかして、右京は珠莉のことが――――」

「違います!僕は珠莉さんのように胸の大きな女子に興味はありません!」


 右京君は華恋が言い終わる前に否定しようとして、勢いあまって性癖まで言ってしまった。


(右京君のこの台詞も聞いたことがある気がする。)

(ハンバーガー屋さんで2人を見かけた時ね。)

(それって、2年くらい前だっけ?)

(そうよ。それでもって、その時に樹の不注意で珠莉に思考伝達で会話できることが露見したのよね。)

(反省。。。)


「・・・そ、そうなんですの?」

「次の料理をお持ちしないといけないので、失礼致します。」


 そう言って、右京君はそくささと厨房に行ってしまった。


「右京も変わった嗜好ですの。珠莉の大きな胸に顔を埋めると気持ちいいですのに。」

「右京君にも思うところがあるのよ。」

「そうですね。右京も華恋様に仕えようと精一杯やってますから。」

「ペタンコ好きという意味では、右京君は諒太さんと似た者同士なのかもしれない。」

「樹様、そんなこと言ったら諒太様に怒られますよ。」

「諒太だけでなく、私にも失礼ですの。」


「その諒太さんは今日は来れないんだっけ?」

「そうなんですの。諒太には桐生家の仕事の手伝いをしてもらうようになったのですが、今日は急な用事ができたらしいですの。幹事がドタキャンとか有り得ませんの。」

「美姫も突発的な龍野家の仕事で予定を変更することもあるし、今後もこういうことが増えるだろうから、仕方ないと心の折り合いをつけるしかないんじゃないか?」

「そうなのですが、華恋様は諒太様に優先的にかまってほしいようなのです。」

「華恋ちゃんは諒太さんのことが大好きだものね。」

「ち、違いますの!」


 顔を真っ赤にして否定する華恋だが、それが嘘であることはバレバレだ。


「素直じゃないな。」

「そうですよね。諒太様との婚約も決定したのですから、気持ちを偽る必要などないと私も思うのですが、長年染みついた癖が抜けないのだと思います。」

「樹のみならず珠莉まで、、、」


 ぐぬぬぬ、と唸る華恋だったが、


「華恋ちゃんが高校を卒業したら2人の婚約が発表される、と聞いたけれど、日にちはもう決まっているの?」

「はい!明日ですの。」

「そう。おめでとう!」

「ありがとうございますの!」


 美姫に祝福されると嬉しそうな笑顔を見せ、


「私も高校を卒業したので、樹様のもとに嫁ぐことができます。早めにお嫁に貰って下さいね。」

「珠莉は卒業よりも樹のお嫁さんになる方が嬉しいんだ。」

「はい。勿論です。」


 そう言い切った珠莉に対して不機嫌になる美姫。


「僕はまだ能力があると認められた訳じゃないから、この先どうなるか分からないよ。」

「樹様は魔法軍に入隊してから1年もたたずに中尉になり、来年は間違いなく大尉に昇進されます。それこそ能力があると認められた証拠です。なので、近いうちに許可が下りると私は思っていますよ。」


 僕も何とか躱そうとするが、珠莉に理路整然と言い返されてしまった。

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