27
「いつも一緒にいるだけあって、2人の連携は素晴らしい。2対1では俺の分が悪いことは認めよう。」
「ありがとうございます。」
「狙撃を阻止された時点でそのことに気が付くべきだった。だとしても、素直に捕まってやる気はない。」
「そうはさせません。」
動こうとした豊中佐に美姫が指先を向け、避けられないと判断した豊中佐は動きを止めた。
「もう諦めて貰えませんか?」
「確かに、このままでは2人の守りを抜けないか、、、」
豊中佐はしばし思案し、
「仕方がない。あまり使いたくはなかったのだが、、、魔獣解放!」
そう宣言すると、豊中佐から野性味ある魔導力が噴出し全身を覆っていく。
「これは!?」
「まるで、空鮫の主みたい。もしや、豊中佐は魔獣薬を使っているのですか?」
「ほぼ正解だ。」
「何てこと、、、」
バンッ!バンッ!
魔導力が豊中佐の全身を覆いつくす前に倒そうと、美姫は魔導弾を撃つが、
「ふん!」
パシパシッ!
豊中佐は魔導力を左手に集めて魔導弾を弾き飛ばした。
「”楯系”魔法使いの拳闘型!?」
目を見張る僕を見て、豊中佐はニヤリと笑う。
「どうして”大砲系”魔法使いである豊中佐がそれを使えるのですか!?」
「樹中尉は”楯系”魔法を使えるから、”楯系”魔法使いの拳闘型と誤解したようだが、違うのだ。」
「どういうことでしょうか?」
「俺に切り札を切らせたことへの称賛として、冥途の土産に教えてやろう。魔獣の超越種は悪魔に近い性質を持っている。そのため、悪魔と同様、魔法系統に関係なく魔導力を手足のように使えるのだ。」
「それで、豊中佐は最初に僕たちを攻撃した”銃剣系”魔法使いが使う魔導弾も撃てたのですね。」
「そうだ。俺は”大砲系”魔法使いと認識されているから、魔導弾で狙撃すれば犯人捜しの捜査が俺に及ぶことはなく、重宝していたのだ。俺は狙撃の腕前はかなりのものだと自負しているから、魔導弾であれ実弾であれ、失敗することはほとんどなかったのだが、樹中尉には防がれてばかりだ。」
「そんなことを僕たちに話してしまって良いのですか?」
「あぁ、君たちをここで消してしまえば問題ない。」
そう言うと同時に豊中佐は後方に飛び退き、
グゴーー!!
着地するやいなや魔導砲を放ってきた。
(それなら、これでどうだ!)
魔導砲を反射させようと凹型の魔導盾を展開するが、
パリンッ!
凹型の魔導盾はいとも簡単に砕かれたため、
パリンッ!パリンッ!ビシュー!
慌てて凸型の魔導盾を複数枚発動し、2枚の魔導盾を砕かれたものの魔導砲を受け流すことに成功した。
(危なかった。予備の魔導盾の発動準備をしておいて良かったです。。。)
(『備えあれば患いなし』ですな。)
(でも、魔力倍化を使った魔導砲がそよ風に感じられるくらいに、豊中佐の魔導砲の威力は想定をはるかに超えて強力でした。)
(ココたちが使っていた魔獣薬よりも強力な薬を使っているのでしょうな。)
(魔獣の超越種がどうこう言っていましたから、そうなのかもしれません。)
「魔獣解放を行った俺の魔導砲を止めるとは、樹中尉の”楯系”魔法は見事だ。」
「感謝。」
「だが、これはどうかな?」
豊中佐はそう言うなり、
ドンッ!ドンッ!バンッ!バンッ!ドンッ!バンッ!バンッ!
今度は巨大な魔導弾と通常の魔導弾を織り交ぜて撃ってきた。
ビシュッ!ビシュッ!パシッ!パシッ!ビシュッ!パシッ!パシッ!
先の魔導砲の威力から換算して、強度を上げた魔導盾で防いでいるが、巨大な魔導弾に隠れて迫ってくる通常の魔導弾への対処が厄介だ。
(魔導弾に込められた魔導力の密度が違うから、それに合わせた魔導盾の発動が面倒です。。。)
(全ての魔導盾を同程度の強度で発動出来ればよいのですが、樹君の魔力にも限界がありますからな。)
(でも、魔導砲に比べると、魔導弾は隙間がありますから――――)
バンッ!バンッ!
美姫がその隙間を見つけて魔導弾を撃つが、
パシパシッ!
豊中佐は魔導力に覆われた左手を振って魔導弾を弾き飛ばす。
「美姫大尉は頭が良いと思っていたのだが、同じことをするとは芸がない。」
「そうですか?豊中佐は私の魔導弾を弾く時には攻撃が出来ないようですね。」
「今の魔導弾は、その確認のためだったのか。」
「はい。攻防を同時にこなされてしまったら私たちに勝ち目はなかったのですが、私の魔導弾を弾くために魔導力の大部分を防御に割かないといけないのなら、やりようはありますから。」
「大口をたたくな。美姫大尉の魔導弾は俺に通用しないのに、どうするというのだ?」
「こうします。」
美姫は徹甲魔導弾を撃とうとするが、
バンッ!
魔導盾で弾頭を形成した瞬間、豊中佐に魔導弾で弾頭を砕かれてしまった。




