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「誰もいないみたいだ。僕が先行する。」
「お願い。」
念のため魔力探知を行い、周りを確認して部屋の外に出ると、
ビシッ!ビシッ!
僕に続いて出てきた美姫に向かって放たれた魔導弾が、あらかじめ展開してあった魔導盾に防がれた。
「攻撃された!?魔力探知で誰もいないことを確認したのに!?」
「あそこね!」
バンッ!バンッ!
瞬時に美姫が魔導弾を撃ち返して、曲がり角の先に逃げようとする敵に牽制を行う。
「ぐっ!」
魔導弾の直撃を受けた敵が怯んだ隙に、魔導盾を敵の周りに展開して取り押さえた。
パリンッ!パリンッ!
しかし、敵が魔導盾を壊して逃げようとしたため、最大限に強度を上げた魔導盾で再度抑え込む。
「何が起きたのですか!?」
「攻撃を受けました。」
「えっ!?大丈夫なのですか?」
「はい。樹と私で敵を抑えていますので、その間にココさんたちは先にホテルを出て下さい。」
「応援を呼んだ方が良いでしょうか?」
「いえ、私たちで対処しますので、もし私たちのことを聞かれたら、既にホテルを出た、と報告して下さい。」
「・・・分かりました。」
ココさんたちが僕たちから離れく途中、
「あの僅かな時間で攻防を行うなんて信じられない。我々では手も足も出ないはずよ。」
そう呟く声が聞こえてきた。
(美姫を狙ったのは花子さんなのでしょうか?)
(違うようですな。)
(誰でしょうか?)
(行けば分かるのじゃ。きっと2人は驚くのじゃ。)
エレナ様の言葉に期待感を抱いて敵の元まで行くと、見知った人物が魔導盾に封じ込まれていた。
「豊中佐!?」
「何故!?」
「少し落ち着け。美姫大尉と樹中尉は俺を見て驚いているようだが、狙撃に失敗した上に逃げらえれないように動けなくさせられていた俺の方が驚いているのだからな!」
パリンッ!パリンッ!
敵が豊中佐だと知って仰天している美姫と僕と違って、冷静だった豊中佐が魔導盾を破壊して束縛から逃れる。
「驚愕して魔法の制御が疎かになるとは、樹中尉もまだまだ鍛錬が足らないようだ。」
「くっ。」
(いやはや、痛いところを突かれましたな。)
(こうなること分かっていたのなら、敵が豊中佐だと察した時点で教えておいてほしかったです。)
(樹は阿呆なのかのう?あ奴と距離がある時点で教えておったら、拘束を解いて逃げられてしまっていたかもしれんじゃろう。)
(それに、エレナ様やグレンさんに頼り切ってしまうのは良くないですし。)
(そうですな。不用意なワシらの助言は、2人の成長を阻害してしまいますからな。)
(納得。でも、あの状態で動じないでいられた豊中佐は凄いです。経験の差、ですかね?)
(それもあるじゃろうが、襲う側は相手を知っている分だけ有利じゃし、あ奴には2人が近づいてくるまでの時間的余裕もあったからのう。)
(そうですね。)
「では、俺はここで失礼する。」
「待って下さい!豊中佐が私を狙った理由を教えて貰えませんか?」
美姫は豊中佐の進路を妨げる位置に移動した。
「その必要性を認めない。そこを退くんだ。」
「どうしてですか!?」
「逆に聞くが、美姫大尉は俺が動機を聞かれて、はいそうですか、と話すと思うか?」
「いえ、それは、、、」
(あ奴と話し合っても無駄なのじゃ。)
(そうですな。無理矢理にでも聞くしかありませんな。)
(やはり、それしかありませんか、、、)
美姫が魔導弾を撃つ構えをとる。
「ほう。美姫大尉は中佐である俺の命令を聞けないというのか。軍法会議ものだな。」
「裁かれるべきは先に仕掛けてきた豊中佐の方です。」
「龍野家当主の養女になったから一条家の俺などどうとでもなると考えているようだが、思い上がり過ぎだ。」
「豊中佐こそ、権力の不正利用ですよ。」
「樹中尉はどうだ?」
「僕は美姫に賛同します。」
「即答か。だが、それだとどこまでいっても金魚の糞のままだぞ。」
「悪に与するより、そう言われた方がマシです。」
「一丁前なことを言う。」
豊中佐はヤレヤレと首を振った。
「では、2人は俺と敵対する、と言うのだな。」
「したくありませんが、やむを得ません。」
「ならば、俺も実力で押し通るまでだ!」
行動を開始しようとした豊中佐に対し、
バンッ!バンッ!
機先を制して美姫は魔導弾を撃つが、それを予測していた豊中佐は斜め前に移動することで魔導弾を避け、
ドンッ!
更にそれを見越して僕が発動した魔導盾に行く手を阻まれた。




