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「困ったことなったね、、、」
「ココさんがあれ程強弁に反対するなんて、、、」
「あの言い様だと、今度は実力行使に出てくるぞ。」
「それを防ぐためには、珠莉にはキャサリンとレダがベッタリ張り付いておくしかないだろうね。」
「はい。珠莉さえ良ければ、此方は構いません。」
「私も。念のため、ホテルの部屋も変わってもらおう。珠莉もそれでいいか?」
サンダラさん、キャサリンさん、レダさんが珠莉の方を見る。
「・・・はい。それより、妖精石をお返しした方が良いのでしょうか?」
珠莉は可哀想になるくらい恐縮して俯いた。
「何を言っているんだい。珠莉は妖精石ダーナに認められただけで何も悪くないんだから、そんなことしなくていいんだよ。」
「そうよ。妖精石ダーナの意志が尊重されるべきであることは、ここにいる皆が理解しているわ。」
「それに、いつの日にか、こうなることは分かっていたんだ。だから、珠莉は落ち込まなくていい。」
「そうなのですか?」
珠莉が顔を上げる。
「だってそうだろう?私たちの始祖であるディアナ様以前にも妖精石ダーナを使っていた者がいたはずなんだよ。」
「だから、妖精石ダーナは次の使い手が現れるまでマックフィールド一族が一時的に預かっているだけなのだけれど、それを忘れてしまっている残念な人もいるのよ。」
「しかし、妖精石ダーナの使い手になれるのは美姫だと私は思っていたが、珠莉の方だったとはな。」
レダさんの呟きに、代表者たちが、
「でも、ココの気持ちも分からなくもないわ。妖精石ダーナが珠莉を認めるなんて想定外だったもの。」
「承認はどうする?代表者による全会一致が原則だぞ。」
「だったら、一族大会議を開くしかないでしょうね。」
「賛成だ。妖精石ダーナが認める者が現れたのだから、一族の意見をまとめる必要がある。」
「出来ればマックフィールド一族から出てほしかったのだけれど。」
と、口々に言う。
「決まりだね。今夜にでも一族大会議を開催するから、他の者にも伝えておくれ。」
「いいわよ。」
「時間と場所は?」
「それはおって連絡するよ。」
「承知した。」
「早速このことを皆に伝えねばならないから、失礼するわ。」
サンダラさんの告知に、代表たちは続々とこの場を去っていく。
「私たちも帰るとするか。」
「此方は後片づけをしていくから、来た時と同じように美姫たちをレダが送っていってくれない?」
「元よりそのつもりだ。」
僕たちもレダさんに続いて歩き出すが、行きと違い、帰りは洞窟を出るまで無言のままだった。
(珠莉はかなりまいってしまっているようね。)
(同意。僕の思い付きで負担を強いてしまって、凄く申し訳ない気持ちで一杯だ。)
(そうじゃ。全面的に樹が悪いのじゃ。)
(しかし、樹君の提案にのったワシらも同罪かもしれませんな。)
(グレンさんの仰るとおり、一概に樹のせい、とは言えないと思います。)
(感謝。)
(何故じゃ!?ワレの時には慰めてくれんくせに、樹の時だけズルいのじゃ。)
(エレナ様の場合は同情できないことが多いですからな。)
(今回も、エレナ様とイアフ様が悪乗りしてディアナの固有設定値を変更しなければ起きなかったことですし。)
(同感。)
(それじゃと、精霊を使役する者も現れず、ダーと出会えておらんかったのじゃ。それでも良かったのかのう?)
(ダーによって珠莉が救われることもあるでしょうから、どちらが良かったのかは、後にならないと分かりませんな。)
(そうですね。取りあえずは、ホテルに帰ったら今までのことも含めて珠莉に説明することにします。)
(賛同。)
ということで、ホテルに帰った後、珠莉にエレナ様のことを含め全てを話した。
(ずっと騙していてゴメン!)
(・・・樹様は悪くありません。それに、何となくそんな気もしていたんです。)
(そうなの?)
(美姫様と見つめ合っただけで、まるで意思疎通したかのように行動できるなんて有り得ないでしょう?いつもは鈍感な樹様が、守り神様の時だけ敏感になったのもおかしいですし。)
(ギョウソウさんの時は僕も苦しい説明だな、とは思っていた。)
(それに、樹様を短期間で”楯系”魔法を使いこなせるようにしたという桐生家の関係者が誰なのか、桐生家当主家の調査では全く分からなかったんです。)
(桐生家でも調べていたんだ。)
(当然です。”楯系”魔法使いの能力向上はどの都市国家でも至上命題ですから。)
(でも、その桐生家の関係者が、桐生家の創始者であるグレンさんだったなんて、分からないはずです。)
(ワシは表に出てはいけない存在ですからな。)
(グレンさん、私にも”楯系”魔法を教えて貰えないでしょうか?)
(勿論ですな。しかし、ワシの特訓は厳しいのですな。)
(ありがとうございます!望むところです!)
(それから、これでやっと美姫様と同じ所に立てた気がします。)
(そう?)
(今までは美姫様のように余裕を持てていなかったのですが、ダーちゃんの協力を得て、対等とまでは言えないまでも美姫様に対抗できるようになったはずですから。)
(あら?珠莉は私と戦うつもりなの?)
(樹様をお守りするために、時と場合によっては。)
そう言う珠莉の笑顔を見て安心するとともに、今後起こるであろう美姫と珠莉との争いを想像して恐怖したのだった。




