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竜の女王  作者: M.D
2173年秋
602/688

21

『ダーを受け取るのですぅ。』


 ダーが再び精霊を使って空気を震わせて声をつくると同時に、


 ギギギッ


 祭壇に埋め込まれていた妖精石ダーナが外れて珠莉の方にゆっくりと落ちてくる。


「珠莉!上を見て!」


 キャサリンさんの呼びかけに目を開けた珠莉は、目の前にあった妖精石ダーナを慌てて受け止めた。


「また声が聞こえた!」

「それに、今度は妖精石ダーナが祭壇から外れたわ!」

「今までにこんなことが起きたなんて話を聞いたことがない。」

「先の言葉を疑う者がおった故、妖精石ダーナが意志を示したのかもしれないよ。」


 サンダラさんの言葉に代表者たちが一斉にココさんの方を見る。


「私は、、、そんな、、、」


 ココさんは動転して言葉を紡げないようだ。


(ダー、更に珠莉を派手に光らせて印象を強めるのじゃ。)

(はいですぅ。)


 エレナ様が調子に乗ってダーに追加の指示をすると、


 ピカッ!


 珠莉から強烈な光が放たれ、その眩しさに目を閉じる。


(光マシマシにしておきましたですぅ。)

(エレナ様、これはちょっとやりすぎじゃないでしょうか?)

(同感。『過ぎたるは猶及ばざるが如し』という諺を知っていますか?)

(知っているのじゃ。)

(知っていたのですか、、、)

(しかし、このくらいした方が容易に人間を信用させられると思うのじゃ。)

(酷い言い様、、、)


 光が収まると、皆、唖然とした表情で珠莉を見つめるばかりで、誰も声を出せない。


「えっ、私、、、樹様、どうしたら良いのでしょうか?」


 その状況に珠莉は混乱して、僕に助けを求めてきた。


「・・・現状を受け入れるしかないと思う。」

「そうね。激烈な精霊の祝福を受けたと思えばいいんじゃないかな。キャサリン少佐はどう思われますか?」


 美姫がキャサリンさんの方を向くと、キャサリンさんはハッとした表情になり、


「・・・此方では判断できないから、サンダラ様に委ねたい。」


 と、サンダラさんに問いを投げ渡した。


「そうさね、、、あたしは美姫の意見に賛成だが、まずは珠莉が精霊魔法を使えるかどうか確かめてみるのが先決じゃないかい?」

「そ、そうですね。珠莉、こちらに来て精霊魔法を披露して頂戴。」


 サンダラさんの言葉を受けて、キャサリンさんが珠莉を呼ぶ。


「はい。」


 珠莉は僕たちのところまで来た後、


「ルビーはどうしておきますか?」

「そうね、、、珠莉には妖精石があるから精霊石はいらないわね。此方が預かっておくわ。」


 珠莉はキャサリンさんが差し出した箱にルビーを入れた。


「それじゃ、精霊魔法を披露して頂戴。美姫の後だから必要ないかもしれないけれど、此方がもう一度手本を見せた方がいいかしら?」

「いえ、大丈夫です。」


 珠莉は目を閉じ、左手に妖精石ダーナを持って右手を開くと、手のひらの上に大きな水玉が形成された。


「一発で精霊魔法を成功させるなんて、、、」

「しかも大きいわよ。」

「流石は妖精石ダーナが共にあることを選んだだけのことはある、ということか。」

「そのようだね。あたしは珠莉が精霊魔法を使えることを認めるよ。」

「私も認めます。」


 代表者たちが驚きとともに次々と美姫を承認していくが、


「認めない!絶対に認められない!」


 ココさんは猛烈に反対の言葉を口にした。


「珠莉は精霊魔法を完璧に成功させました。なのに、どうして認めて下さらいのですか?」

「キャサリン、それに他の者も、あんたたちはこんな部外者の小娘に妖精石ダーナが盗み取られようとしているのを見て何とも思わないないのかい!?」

「そんな、、、盗み取るだなんて、、、」


 ココさんの非難に珠莉は困惑する。


「妖精石ダーナがなくなったら我々マックフィールド一族は終わりだってことが、どうして分からないの!?」

「栄枯盛衰はこの世の理なんだ。あんたもそれを分かっているはずだよ。それはこれまで何度も話し合ったじゃないかい。」

「分かっていること認められることは違うのです。それに、今までの議論は一族以外に精霊の祝福を受けさせるか否かで、妖精石ダーナについては1ミリも話題にも上がっていなかった!」


 サンダラさんの言葉を理解しながらも受け入れられないココさん。


「それじゃ、あんたは妖精石ダーナが珠莉を認めていることを、どう考えるんだい?」

「それこそまやかし。あいつらが妖精石ダーナを盗もうと仕組んだ仕掛けに引っかったのよ。」

「あんた、まだそんなことを言っているのかい、、、」

「コロッと騙された奴らとこれ以上話をしても無駄だから、この場は一旦引かせてもらいます。」

「ちょっとお待ち!」

「絶対に妖精石ダーナは取り戻すから覚悟しておき!」


 サンダラさんの言葉を無視し、珠莉を一睨みしてからココさんは走り去っていった。

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