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竜の女王  作者: M.D
2169年秋
6/688

06

 経過処置として数日入院していたが、検査結果にも問題がなく、明日には退院できることが決まった日の午後、龍野さんに東大附属高校の教師が面会を求めてきた。


「美姫さん、初めまして。私は東京大学附属高校で教師をしています小野純一と言います。美姫さんが明日にでも退院できるようになるため、魔力検査をするよう左衛門様から言われて来ました。急だったものですから、事前に連絡できず驚かせてしまったようで申し訳ありません。」

「左衛門様?」

「龍野家の筆頭執事である流川左衛門様です。美姫さんはご存じなかったのですか?」

「すみません。父は親戚付き合いがあまり好きではなかったですし、私も体が弱かったこともあって、龍野家で会ったことのある人は少なくて。」

「龍野教授からは何も教えてもらっていませんか?」

「すみません。」

「謝る必要はありません。龍野家の人達のことについは今後は会う機会も増えると思うので、自然と覚えていくでしょう。」

「はい。」


「それともう一つ美姫さんに伝えなければならないことがあります。本来であれば龍野家から使者が来てお伝えするのが筋なのですが、早めに伝えたほうがよいということもあって、私から伝えてほしいとのことです。」

「父のことですか?」

「はい。龍野教授は何かの事件に巻き込まれたようで、現在行方が分からなくなっています。警察に捜索をして貰っていたのですが、手がかりがほとんどなく、まだ見つかっていません。」

「やはりそうだったんですか。看護師さん達が話しているのを聞いてしまって、そんなはずはないと思っていたんですけど。」


 父親がいなくなったことを聞いた龍野さんは悲しそうだった。


「そうですか、少し遅かったようです。不安な思いをさせてしまい申し訳ありません。もしかしたら、警察が美姫さんのところに何か聞きに来るかもしれないので、その時には思いついたことは何でも話してもられると助かります。」

「分かりました。でも、父がいなくなったと聞いても実感がわかないものですね。一週間に一度しか会えなかったからかもしれないけれど。」

「龍野教授も忙しい方でしたから。美姫さんのことを考えてのことだとは思いますが、山奥だと頻度はそのくらいになるでしょう。」


(山奥?)

(高尾山。)

(それで、僕が崖から落ちた時に近くにいたのか。)

(そういうこと。)

「言うのが遅れましたが、私は美姫さんがこれから住む場所を確保するための手続きの一環として来ました。」

「これから住む場所ですか?」

「退院したあとに住む場所のことです。3年前に龍野教授と美姫さんが住んでいた都市国家東京の家はすでに売られていまして、取り返せなくはないのですが、『広い家に美姫さんを一人を置いておくのも不憫だ』と亜紀様がおっしゃっているそうです。」

「亜紀様が?」

「はい。左衛門様から聞いた話では、今まで美姫さんが住んでいた家を探したのですが見つからなくて、どうしたものかと。」


(さすがにあそこは見つからんじゃろう。)

(そうですね。それに、あそこでは私1人で生活していくのは無理ですし。)


(高尾山だったら1人でなくても普通の生活も無理だと思う。)

(そうでもないよ。食料品とかは父が一週間に一度来てくれるときに買って来てくれていたし。電気は発電機があるから少しだったら毎日使っても問題なかったし。)

(それでも不便そうだ。)

(慣れればそうでもないよ。)


「龍野家の方でいろいろと検討をされたところ、東大附属高校の魔法科に編入して学生寮に入ってもらうのがよいのではないか、ということになったようです。美姫さんなら魔力は問題ないでしょうから魔法科への編入も可能だろう、と。」

「学生寮ですか?」

「はい。東大附属高校には遠方から入学してくる学生のための学生寮があります。美姫さんは来年から高校生になりますので、ちょうどよかろうと。そのための編入試験がわりの魔力検査をしに来た、という訳です。」

「気を使って頂いてありがとうございます。」


「龍野教授がいなくなったと聞いて悲しいところ申し訳ありませんが、魔力検査を受けてもらえないでしょうか?」

「分かりました。よろしくお願います。」

「それでは、早速ですが準備をしますのでちょっと待っていてもらえませんか?」

「はい。」


 そう言って小野先生が鞄から取り出したのは、3つの線がついたベルトのようなものだった。


(あのベルトみたいなやつをつけて魔力検査を受けたことを思い出した。何をしているのか分からなかったけど、不合格なんだ、ってことは分かった記憶がある。)

(私はその検査を受けたことがないの。)

(そうなの?義務化されてるから、小学6年生で皆受けさせられるんじゃなかったっけ?)

(父の方針で検査の日はお休みしたのよ。)

(そうだったんだ。)


 小野先生がベルトを龍野さんの手首付近に巻いて線を情報端末につなぐ。


「美姫さん。何もせずに、安静にしていて下さい。」

「はい。」


(おぉ!あのベルトって光るんだ。)

(ベルトにつけられた3つの線のうち2つが青と緑に強く光ってるけど、どういう意味があるのかな?)

(さぁ?どうなんだろう?僕には分からない。)


「美姫さん、合格です。魔法系統は”銃剣系”ですね。魔力量も申し分ない。」

「ありがとうございます。」

「それでは、東大附属高校魔法科への編入と学生寮へ入寮するための手続きはこれからすぐ始めますので、明日の午後には迎えに来れると思います。」


 ベルトと情報端末を鞄にしまってすぐに帰ろうとしている小野先生に龍野さんが声をかけた。


「隣の森林君も検査してくれませんか?」


 えっ!?


 小野先生と2人そろって驚いた顔を龍野さんに向けた。


「ダメですか?」

「ダメということはないですけれど、もう彼の検査はやっているはずですし、、、」


 小野先生が戸惑っていると、扉をノックする音が聞こえた。

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