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竜の女王  作者: M.D
2173年秋
599/688

18

「キャサリン、儀式を始めておくれ。邪魔したね。」

「では、美姫、祭壇の前へ。」

「はい。」


 美姫が祭壇へ向かい、跪いて祈り始めると、


(エレナ様が来て下さったのなら、実験はもう終わりで良いですかぁ?)


 再びダーが話しかけてきた。


(・・・うむ。良いじゃろう。)

(ずっと閉じ込められて退屈していたのでよかったですぅ。それじゃ、ダーは宝石の外に出ますぅ。)


 エレナ様が許可を与えると、ダーは外に出ると言う。


(この場でそれはまずくないかな?)

(同意。ダーが外に出たら妖精石の能力が失われてしまうし、美姫の儀式の最中にそんなことが起きたら、美姫のせいにされてしまう。)

(そうですな。ここには精霊の動きを見ることが出来る者もおりますから、ダーが妖精石の外に出たことは確実に分かるでしょうからな。)

(そうじゃのう。ダー、少し待――――)


 エレナ様がダーを止めようとするが、


(あれぇ?おかしいですぅ。出られなくなってしまったですぅ。)


 そもそも出てこれないようで助かった。


(・・・エレナ様、どうしましょぅ?)

(そう言われてものう。その宝石はイアフが試行錯誤をして造ったものじゃからのう。解析するとなるとワレでも時間がかかるから、直ぐに出してやることはできないのじゃ。)

(そ、そんなぁ、、、)


 ダーの落ち込んだ声が聞こえてくる。


(ダーちゃん、可哀想に。。。)

(でも、これは珠莉の側にいてくれるよう頼むいい機会なんじゃない?)

(そうですな。『退屈していた』と言っておりましたから、珠莉といればそれを紛らわせることもできますしな。)

(それに、珠莉は樹の側におるのじゃから、退屈などしている暇がないほど事件が起きるからのう。)


 エレナ様が余計なことを言う。だいたい、その事件を引き起こしているのはエレナ様なのに。


(・・・。)

(美姫、どうした?)

(今気が付いたのだけれど、ダーちゃんに珠莉と共にいてもらうってことは、妖精石をここから持ち出す、ってことよね?マックフィールド一族の人たちはそれを許してくれるかな?)

(確かに。儀式を受けること自体に反対する人たちもいるくらいだから、美姫や珠莉が精霊の祝福を受けることは認めても、妖精石の保有までは認めてくれないような気がする。)

(でしょ。私たちが妖精石を持ち出すなんてもっての他だろうし、妨害工作なんかじゃ済まなくて実力行使に出てくるかもしれないよ。)

(それは困った。。。)


 美姫と僕は妖精石の持ち出しについてあれこれ話をしているが、


(グレン、美姫と樹は何に悩んでおるのじゃ?抵抗されたら蹴散らせばよいだけじゃし、2人にはそのくらいの実力はあると思うのじゃがのう?)


 エレナ様は全然その理由が分かっていない様子だ。


(それをしてしまうと、暴力の連鎖によって、最悪、東京とパースの都市国家間の争いに発展してしまうことを2人は危惧しておるのですな。)

(それそれで面白いから良いじゃろうに。)

((駄目です!))


 美姫と僕は全力で反対すると、


(エレナ様はもう少し人間社会というものを学んで下さい。)

(肯定。神様だからといって何をしても良いわけではないのです。)

(じゃが、イアフはやりたい放題――――)

(それもエレナ様が止めて下さい。)

(同意。)

(・・・分かったのじゃ。グレン、2人の懸念を解決する案はないかのう?)


 エレナ様も渋々折れてくれた。


(そうですな、、、精霊を使って神託という形でダーから告げてもらうのはどうでしょうかな?)

(おぉ!それなら、マックフィールド一族の人たちも認めざるを得ないと思うので、良い案だと思います。)

(同感。反対派の人たちが実力行使に出ようとしても、賛成派の人たちが止めてくれるでしょうし。)

(決まりじゃ。)


 エレナ様が早速ダーに話しかける。


(ダー、人間と共に行動するつもりはあるかのう?)

(それはエレナ様が一緒にいる人間と、ですかぁ?)

(いや、あそこにおる珠莉という人間じゃ。)

(そうですねぇ、、、普通の人間よりもちょびっと精神エネルギーが多そうでうし、ここにいても退屈なだけですから、ダーとしても有難い提案なのですぅ。)

(では、美姫の儀式は通常どおり進め、行動を共にすることを珠莉の時に皆に伝えるのじゃ。)

(分かりましたですぅ。)


 ダーがそう言うと、上から光が降ってくるような現象が起き、歓声が上がる。


(何が起きたの?私は目を閉じているから分からないから教えて。)

(美姫の周りに光が降ってきたんだけど、これって精霊を使って光を反射させてるとか?)

(そうなのですぅ。このようにすると神秘性を持たせられて効果的、とイアフ様が仰ったのですぅ。)

(リーちゃんも同じようなことを言ってたよね。)

(エレナ様とイアフ様は似た者同士、ってことか。)

(人間はこんな些細なことでコロッと騙されてくれるからのう。楽で良いのじゃ。)


 神様からは聞きたくない台詞だ。


(これでルビーも精霊石になったのかな?)

(はいですぅ。)

(ダーちゃんは何をしたの?)

(精霊石に閉じ込めた精霊にダーの権限の一部を使うことを認めたのですぅ。そうすると精霊石を介して人間も精霊を使役できるようになるのですぅ。)


(なんじゃと!妖精の権限一部をを精霊に与えたじゃと!?)


 それを聞いたエレナ様が驚きと怒りの混ざった声をあげた。


(これも実験の一部だとイアフ様からの指示なのですぅ。なんでも、精霊石はダーが閉じ込められている宝石の試作品で、どこまで権限を渡せば人間が精霊を使役できるようになるのか調べるためだと仰っていたのですぅ。)

(そうじゃったのか。これについては、イアフを問い詰めねばならんのう。)

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