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竜の女王  作者: M.D
2170年春
59/688

08

 学校から2時間半弱、中禅寺湖に隣接するホテルに着いた時にはもうお昼だった。


(何事もなくホテルに着いて良かったね。)

(禿同。)


 ホテルの食堂で昼食をとり、再度バスに乗って東照宮へ。


「これからは自由行動とする。集合時間は5時だから、各班遅れないように。」


 学年主任の先生の言葉とともに生徒が東照宮の参道へ向かう。


「僕たち行こうか。」

「そうね。」


「参道からして雰囲気があるね。」

「そうだな。でも、東京シールド外に修学旅行なんてよく学校も許可するよな。」

「そうよね。修学旅行中に悪魔が襲ってきたらどうするのかしら?」

「どこかに避難所があるとか?」

「こんな辺鄙なところに避難所なんてないでしょ。多分、見捨てられるわ。」

「国防軍は高速飛空艇を持ってるから、悪魔が現れたらすぐに来てくれるんじゃない?」

「それを願うしかないか。」


「悪魔は月の裏側から来るんだっけ?」

「そう。人工衛星で常に監視していて、悪魔が来ることが分かってから1時間は逃げる猶予がある。高速飛空艇で助けに来てくれたら間に合う。」

「そう言えば、第2次悪魔大戦って、どうして東京に多くの悪魔が集まってきたんだろう?人口で言ったら東京より多い都市国家があるんだから、そっちのほうが悪魔的には魂をたくさん集められておいしいと思うんだけど。」

「当時は北京の方が人口は多かったけど襲来した悪魔は東京より少なかった、言われてるしね。どうしてなのかしら?」

「東京の人間の魂の方が欲望がたっぷりで美味しいとか?」

「そんな気持ちの悪いことを言わないでよ。」

「悪魔が求める何かが東京にあった、とも考えられるんじゃない?」


 東照宮を巡りながら、普通科の生徒と一緒に話をする。


「森林は東京に悪魔が集まった理由ななんだと思う?」

「うーん、どうなんだろう?不明。」


(エレナ様は、どう思います?)

(恐らく、悪魔どもはワレを狙っておったのじゃろう。)

(えっ!?)

(あの頃は、美姫の母親を魂の器としておったのじゃが、ただ中に入っておっただけじゃったから、ワレの存在が分かっていたのじゃろう。)

(こんなところで重大な事実を知ってしまうなんて。つまり、第2次悪魔大戦はエレナ様のせいで起きたと。)

(そんなことあるわけなかろう!ワレが東京におったから、近くの悪魔が東京に集まってきただけじゃ。)


(そうだとすると、エレナ様がいなかったら第1次悪魔大戦と同じくらい悲惨なことになっていたかもしれませんね。第2次悪魔大戦は東京に悪魔が集まってきたから、他の都市国家は壊滅するほどの被害がなかったんだし。)

(そうじゃ、美姫は状況を的確に判断できておるが、樹はどうしようもないのう。)

(はいはい、すみませんでした。)

(反省が足らんようじゃのう。)

(エレナ様も、そんなに樹君を貶さないで下さい。)

(よかろう。)


(でも、エレナ様が東京にいる限り、悪魔が襲ってきたら東京がまた主戦場になるんじゃないですか?)

(それはないじゃろう。ワレは今は美姫の魂と結合しておって、美姫の母親を魂の器としておった頃と状況が異なるからのう。魂の結合をするとワレの存在は美姫の存在と同一に見えるじゃろうから、悪魔どももワレの存在に気付かんじゃろうし。)

(なるほど。)


 第2次悪魔大戦について心の中で会話していると、中田明美が聞いてきた。


「龍野さんはどう思う?」

「私も悪魔が求める何かが東京にあったんじゃないか、という考えに賛成かな。何かは分からないけれど。」

「そうかぁ。龍野さんがそういうならそうかもな。」

「なにが、『龍野さんががそういうならそうかもな』よ。佐野も自分の頭で考えなさいよね。」

「うるせぇ。」


(この高速思考って便利ですね。)

(樹が精神エネルギーの扱いに慣れてくればもっと早くできるのじゃ。)

(好美さんと征爾さんに襲われたときに高速思考ができていれば、と思うと、悔しいですけど。)

(あの時はまだ樹が高速思考をできるところまで成長しておらんかったのじゃから、致し方ないのじゃ。)

(そうよ。樹君は頑張っているもの。もう2倍の速さまで思考速度をあげられているんだし。)

(これからも頑張ります。)


(樹、よからぬことを企んではおらんじゃろうのう?)

(よからぬことだなんて。高速思考ができれば、期末試験で美姫さんと解答の相談ができるから成績を上げられるなぁ、と思っているくらいですよ。)

(樹君、いいこと思いついたね。)

(美姫までもか。。。)


 その後も東照宮を見て回った。


「見ざる・言わざる・聞かざるの3匹以外にも猿がいる。」

「陽明門って思った以上にゴテゴテしてる。」

「眠り猫って意外と小さいんだな。ちょっと見にくい。」

「鳴き竜すごい。」

「奥社までの石段にはヘキヘキしたけれど、厳かな感じでいいところだな。」


 何だかんだ言って、皆素直に感激していた。

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