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竜の女王  作者: M.D
2173年秋
583/688

02

 翌週、珠莉を伴って亜紀様のお屋敷に赴き、『西園寺研究室』と書かれた扉を開けると、


「来たか。」

「お待ちしておりました。」


 六波羅と不二子さんが待っていた。


「お嬢ちゃんが珠莉か?」

「は、はい。」

「美姫さんから話は聞いている。早速いくつか検査を受けてもらうが、いいか?」

「は、はい。」


 六波羅はろくに挨拶もせず珠莉に質問し、


「では、珠莉さん、こちらへどうぞ。」

「・・・はい。」


 流れるように不二子さんに別室に連れていかれる珠莉は、売られていく子牛のように怯え、僕の方を見てきた。


(不二子さんはギリギリの境界線を攻めてきたりするけど、何かあったら思考伝達で連絡をしてくれたら、すぐに助けに行くから安心して。)

(ありがとうございます。でも、それを聞いて余計に不安になりました。。。本当に大丈夫なのでしょうか?)

(ちょっとおかしい人だけど、害はないと思うよ。多分。)

(分かりました。樹様を信じます。)


 ギョウソウさんがいなくなっても珠莉が思考伝達を使えるのは、亜紀様のお屋敷に来る前に確認済みだ。


「六波羅はいつもながらに不躾ね。」

「美姫さんはそう言うが、幽霊を取り込んでしまった者がいるから検査してほしい、とか意味不明なことを突然言われた俺の身にもなってほしいところだ。」


 美姫の抗議するような声に、六波羅は異議を唱える。


「悪魔の力に関する研究もしていたのだし、幽霊も同じような精神エネルギー体なのだから六波羅の研究範囲内じゃないの?」

「そんなことない、と言えない自分が悔しい。」

「その口ぶりからすると、研究したことがあるのね。珠莉への影響について知りたいから、どんな研究をしていたのか教えてくれない?」

「いいだろう。そもそも幽霊とは――――」


 それからしばらく六波羅の幽霊に関する研究について聞いていると、


「い、樹様、、、」


 別室での検査を終えた珠莉が何とも言えない表情で僕の方へ駆け寄ってきた。


「珠莉、どうした?」

「あの人に触られると気持ちが良くなって、おかしな気分になるんです。それが嫌でもなかったので、助けも呼べなくて。。。」


 珠莉が不二子さんの方を伺う。


「不二子さんは何やってるんですか、、、」

「珠莉さんがあまりにも抱き心地のよさそうな体つきをしておられたので、つい出来心で。最大限の自制をしたつもりだったのですが、珠莉さんには少々快感を与えてしまったようです。」

「最大限を超えてもっと自制して下さい。」

「・・・善処します。しかし、許可して頂けるのなら天国を見せて差し上げることをお約束しますよ。」

「止めてあげて下さい。」

「ちぇっ。」


 口ほどに不二子さんは不満そうでもない。


「それで、検査結果はどうだったの?」


 との、美姫の問いに、


「特に体に異常は見られないし、極軽度の過剰魔力症だな。この程度なら何の問題もない。」


 六波羅が画面に映し出されている結果を見ながら答えた。


「もし、頭痛が続くようなら魔力を制限する魔制剤を――――」

「それより、これはどうでしょうか?最近開発した、魔製剤を飲み薬にして更に魔力の放出を促す効果を加えた薬なのです。」


 六波羅の言葉を遮って不二子さんが毒々しい色の薬を出してくる。


「・・・これ、大丈夫なやつですか?」

「はい。安全性は確認済みです。」


 不二子さんは自信満々だが、見るからに怪しい薬だ。


「ちょっと待て。それは亜門が魔力を出し尽くして危うく死にかけた薬じゃないか!?」


 六波羅もその薬を見て仰天した。


「それは人体実験の途中だったからです。あの時は薬効が強すぎたので、最新の薬は弱く長く効果が出るように成分を調整してありますから、普通の人間である御兄様の食事に混ぜても”体が重く感じる”程度にしか効かないはずです。」

「最近妙に体がだるい日があると思ったら、不二子は俺でも薬の実験をしていたのか!?」

「稀によくあることではないですか。それに、御兄様に関わることについて私は失敗しないので。」

「そういう問題じゃない、、、」


(珠莉に言った言葉を撤回するようだけど、六波羅より不二子さんの方が危険な気がしてきた。)

(私も。2人の危険性は方向性が違うようだけれど。)

(そんな危険人物を龍野家当主のお屋敷に置いておいて不都合はないのでしょうか?)

(逆に、野に放つと何をしでかすか分からないから龍野家で匿っている、とも言える。)

(そうね。鎖をつけておいた方が安心できるよ。実力が確かなのは分かっているのだし。)

(実力があったとしても、もうあの2人に診てもらいたくはないです。。。)


「珠莉、どうする?どちらかの薬をもらう?」

「そうですね、、、今のままで特に支障がないのなら、どちらの薬もいりません。」

「私としては良い薬だと思っており、お勧めなのですが、、、」

「薬を飲まないで済むのなら、それに越したことはない。しかし、頭痛が続くようなら魔制剤を処方しよう。」


 不二子さんの方を横目見ながら、六波羅は医者らしいことを言う。


「六波羅も偶にはまともなことを言うのね。」

「俺は不二子と違って常識人だからな。」

「「・・・。」」


 皆『そんなことない』と言う表情で六波羅を見た。


「ごほん。お嬢ちゃんの体に異常はないようだから、もう帰ってもいいぞ。」

「そうですね。では、これで終了です。お大事に。」

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