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竜の女王  作者: M.D
2173年秋
582/688

01

「守り神様がいなくなってしまわれました。。。」


 悲痛な声で珠莉が電話してきたのは、とある日の夜だった。


「ついにこの日が来たか。」


 ギョウソウさんが消えてしまうことは確定事項だったが、実際にいなくなったと聞くと寂しい気持ちになる。


「樹様は、こうなることをご存じだったのですか?」

「肯定。黒鍔村で鬼と戦った後に少しだけ会話して、守り神様から今後のことについて聞いていたんだ。自分がいなくなった後に珠莉のことを僕たちに頼んでもいたよ。」

「そうだったのですか。私には何も仰って下さらなかったのに、守り神様はそんなことまで美姫様と樹様に話されていたのですね。。。」

「珠莉に心配させまい、と思ったからじゃない?」

「それでも、話してほしかったです。」


 更に珠莉の声が沈む。


「・・・出会いがあれば別れもあるんだし、珠莉が悲しんでばかりいたら守り神様も辛いんじゃないかな?」

「そうですね。でも、私と樹様が心の中で会話できるのは守り神様の力によるものだったので、守り神様がいなくなってそれが出来なくなると、私が樹様の側にいられる理由が無くなってしまいます。。。」

「それについては大丈夫。」

「樹様がそう思われる理由は何ですか?」

「いなくなった時のことを考えて能力の一部を珠莉に移すことにする、と守り神様が言っていたから。それが本当かどうかは今度会った時に試したらいい。僕は真実だと思うけど。」

「そうですね。守り神様がいなくなって悲しいような、樹様と心の中で会話する能力が失われていなくて良かったような複雑な気分です。」


 情報端末から聞こえてくる珠莉の声に幾分か元気が戻ってきたようだ。


「守り神様がいなくなって、体調に変化はあったりする?」

「体調ですか?そうですね、、、少し頭が痛いような気もしますが、これといって不調な感じはありません。」

「僥倖。でも、検査はしておいた方が良いかも。」

「守り神様なんて超常的な存在に関する検査なんて出来る医者がいるのでしょうか?」

「僕に心当たりがあるから、美姫に頼んでおくよ。」

「美姫様関連なのですね。。。」

「止めておく?」

「いえ、樹様が心配して下さってのことなので、検査は受けてみたいと思います。」

「了解。」


 それから珠莉と互いの近況など、たわいのない会話をして電話を切った後、


(ギョウソウさんが消えてしまったらしい。)


 美姫に珠莉からの電話があったことを伝える。


(そう。。。ちょっと前に、ギョウソウさんからエレナ様に別れの挨拶があったし、そろそろだと覚悟はしていたんだけれど、いなくなってしまうと寂しいね。)

(消えてしまったというより、珠莉による吸収が完了した、という方が正しいじゃろうのう。黒鍔村で出会ったのは一昨年の冬じゃから、長くもったほうじゃろう。)

(そうですな。ワシらが出会った時点で消えてしまいそうな程弱っておった上に、珠莉に全ての力を渡してしまいましたからな。)


(それで、ギョウソウさんがいなくなって珠莉に支障はないでしょうか?)

(そうね。私もエレナ様がいなくなられたときには、ギレナが吸収できていない余剰精神エネルギーが頭痛を引き起こしていましたし。)

(珠莉は美姫ほど精神エネルギーの発生量が多くないようじゃし、ギョウソウも珠莉から精神エネルギーをそれ程吸収しておらんようじゃったから、問題ないじゃろう。)

(とは言え、魔力貯蔵具の予備があれば安心だったのですがな。)


(それならオレが吸収してやってもいいぞ。そうすれば、精神エネルギーの蓄えも増えるから、オレとしても願ったり叶ったりだ。)


 ザグレドが出てきて妙な提案をしてきた。


(ザグレドは何か悪いことを企んでおらんかのう?)

(そうですな。ザグレドを介さずとも、直接やり取りすれば良いだけの話ですからな。)

(ヒューストンで、美姫が軽度の過剰魔力症、僕が中程度の魔力障害になった時に、美姫の過剰な精神エネルギーを魂の絆を介して僕に流し込んだのと同じことをする、と。)

(でも、樹と珠莉の間には魂の絆なんてないんだから、精神エネルギーの受け渡しなんてできなくないですか?)


 美姫の単純な疑問に、


(お肌の接触回線なるものがあるのじゃ。)

(その中で最も効率が良いのが、所謂、接吻というやつですな。)


 エレナ様とグレンさんが赤面するような方法を提示するが、


(ダメです!!)


 即座に美姫に否定された。


(美姫なら否定すると思ったのじゃ。しかし、ザグレドの提案は一理あるのじゃ。ギョウソウに代わって珠莉の精神エネルギーを吸収させる者を探せばよいのじゃからのう。)

(ありがとうございます!エレナ様にお褒め頂き、不肖ザグレド、猛烈に感動しております!オレがまだ竜族であった頃、第6王領でもエレナ様が領民の行いをしばしば賛美されておられたことを覚えております。それに、先の第9次聖魔大戦においても――――)


 ザグレドは嬉し涙を流しながらエレナ様を讃えているが、それ程褒められたか?


(そもそも、ギョウソウさんがいないときには珠莉は魔力が過剰でもなんでも無かったんだから、そのうち落ち着くのではないでしょうか?)

(確かに。ギョウソウさんを取り込んだことで、生成する魔力が一時的に増えただけかもしれないし。)

(そうなのじゃが、折角、幽霊もしくは思念体を取り込んだ人間がおるのに、黙って見ているだけでは面白くないのじゃ。グレンもそう思うじゃろう?)

(・・・黙秘させて頂きますな。)


(エレナ様らしい言い様というかなんというか。。。それでも、珠莉のことを一度検査しておいた方が良いと思うから、六波羅に珠莉の検査をしてもらえるよう頼めないかな?)

(分かった。お義母様の許可を得てから、六波羅に珠莉の検査について言っておくよ。)

(感謝。)

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