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竜の女王  作者: M.D
幕間16
581/688

02

「乾杯!」

「「乾杯!」」


 店に入って飲み物が出てくると、諒太さんの掛け声とともに杯を合わせた。


「どうして諒太が仕切っているのかしら?」

「店を選んだり俺がこの会合の幹事みたいなものなんだから、いいだろう?」

「その諒太が選んだ店が居酒屋とはね。」

「不満があるのだったら、店の種類を伝えた時に言ってほしかったな。」

「こういうお店の存在は知っていたけれど来たことがなかったから、良い経験だと思えば問題ないわ。」

「そうかい。」


「征爾は居酒屋に来たことがあるの?」

「従者同士の付き合いで何度か。こんな高級なところは初めてだけれど。」

「そう。それじゃ、征爾の方が詳しいのだから、私にいろいろ教えて頂戴。まずは、お品書きの内容からね。これは――――」


 直ぐに出てくるものは諒太さんが最初に頼んでいたが、麗華さんは征爾さんと次に何を頼むか仲良く話し始めた。


「征爾さんの言うとおり、このお店は居酒屋にしては高級っぽいですね。」

「個室で雰囲気もいいですし。」

「美姫さんや麗華さんを連れてくるんだから、場末の汚い飲み屋はマズいだろう。」

「賛同。僕も遠慮したいです。」

「諒太さんはそういったところに行かれたことはあるんですか?」

「いや、俺に居酒屋を教えてくれた先輩も、お勧めしない、と言っていたし、二の足を踏んでいる。」


 そうこうしていると、


「失礼致します。」


 店員が注文品を持ってやってきて、


「こちらが”実演付き1000回混ぜた納豆”になりますので、これから混ぜさせて頂きます。1秒間に10回かき混ぜますので、100秒お待ち下さい。」


 そう言って納豆が入った器に何やら機械を差し入れる。


 ウィィーーン


 機械が納豆をかき混ぜ始めると、みるみる納豆の粒が無くなり滑らかになっていく。


「面白いですね。」

「はい。当店で人気の商品で、ほぼ全てのお客様が注文されます。」

「そうなのですか。食べて美味しいだけでなく見て楽しめるのなら、人気が出るのも頷けます。」

「ありがとうございます。完成しましたので、どうぞ召し上がって下さい。」


 小匙で掬って自分の小皿に取り、一口食べる。


「鰹出汁が効いてて美味しい。」

「納豆って言われないと分からないね。」

「そうだろう?俺も初めて食べた時には驚いたんだ。」

「納豆臭さもあまり感じられないから食べやすい。」

「えぇ。これなら私も食べられるわ。」


 皆、口々に感想を言いながら食べていると、あっという間になくなった。


「諒太にしては趣向を凝らした店を選んだわね。」

「その言い方だと、貶されているのか褒められているのか分からないな。」

「麗華にとっては称賛しているつもりなんだ。」

「そ、そうよ。諒太には感謝してほしいわ。」


(麗華さんもこのお店を案外気に入ったみたいね。)

(同感。もっと気取った感じなのかとも思ったけど、堅苦しくなくて丁度いい。)



 それから、銘々好きな物を注文して食事をしながら近況を話し合ったのだが、


「そうそう、諒太はあのチンチクリンと婚約することになったのだったわね。」


 麗華さんが爆弾発言をした。


「ぶほっ!麗華さんは何故それを知っているんだ?まだ、内々でしか話をしていないのに。」

「あら?やっぱりそうだったのね。諒太の母親が最近頻繁に桐生家に出入りしている、との報告があったから、そうじゃないかと思ったのよ。」

「しまった、、、カマかけだったのか、、、」


 諒太さんは項垂れる。


「それじゃ、諒太さんは本当に華恋ちゃんと婚約することになったんですね。」

「あぁ。華恋が高校を卒業したら婚約が発表されるはずだ。」

「おめでとうございます!」

「ありがとう。」


 祝言を受けた諒太さんは恥ずかしそうだった。


「目出度いことなのに、諒太さんはあまり嬉しそうではないですね。」

「この歳で婚約とか早すぎると思わないか?それに、婚約が発表されたら、やっかみも込めて有る事無い事言われるようになるだろう?」

「有る事の代表例は、諒太さんがロリコ――――」

「それ以上言ったらシバく!」

「「ハハハ。」」


 久しぶりに諒太さんの素早い突っ込みを聞いて、皆、笑う。


「そう言う麗華さんと征爾さんはどうなんだ?」

「ん?私たちの場合は征爾次第かしら。でも、征爾も私の想像以上の速度で成長しているから、そう遠くないうちにお母様を説得できると思うわ。」

「俺も麗華に見限られないよう精進するよ。」

「私が征爾を見棄てるわけないわ。一生一緒にいるつもりだから覚悟しておきなさい。」


(やっぱり麗華さんは変わったね。)

(同感。今の征爾さんにデレデレした姿は、昔の周りに対してツンツンしていた麗華さんからは想像できない。)



 楽しく時間はあっという間に過ぎ、店を出る時に、


「たまにこうやって食事する機会を作ってもいいかもしれないな。」

「諒太が永久幹事をするのだったらいいわよ。次も私を楽しませるような店を探しておきなさい。」

「なんでだよ!」

「次は俺が幹事をするよ。」

「征爾さんは分かっていますね。それじゃ、お願いします。」


 と、諒太さんと麗華さんと征爾さんが言っているが聞こえた。

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