07
「美姫さん、おはよう。」
「樹君、おはよう。ついに修学旅行が始まるね。楽しみ!」
修学旅行の当日、いつものように美姫さんと時間を合わせて一緒に寮を出る。
「でも、早い時間に起きないといけなかったから、ふわぁ、まだ眠い。」
「私は目覚ましよりも早く起きたくらい、寝覚めはバッチリ。深呼吸して朝の爽やかな空気を取り込めば目が覚めると思うよ。」
「地下空間で朝の爽やかな空気と言われても、、、」
「地上から空気を取り入れているんだから、少しは爽やかだと思うけど。それでも眠いんだったら、校長先生の話を耐えきれば、バスの中で寝られるよ。」
「何とかバスに乗るまでは寝ないようにする。」
修学旅行は高校からバスに乗っていく。
「バスかぁ、この前みたいなことにならなければいいけど。」
「純一先生も修礼で言っていたけど、治安維持軍の人達が同行してくれるみたいだから安心してもいいんじゃない?」
「『少し物々しい警備になるけど、気にせずに修学旅行を楽しんでほしい』って言ってたし、今回は大丈夫だと思いたい。」
教室に着くと、すでに大半の生徒が集まっていた。
「眠そうだな。修学旅行が楽しみで、昨日寝られなかったとか?」
「聡と一緒にしないでくれ。ただ単に朝に弱いだけだ。」
「樹って低血圧なのか?」
「そうでもないんだけど、何故だか暗いうちから起きるのが苦手なんだ。」
「そうか。生活習慣は人それぞれだからな。」
「バスに乗ったら、前の方に座ってひと眠りするつもり。」
「じゃぁ、到着したら起こしてやるよ。」
「よろしく。」
聡と雑談をしていると、純一先生が教室に入ってきた。
「おはよう。みんな揃っているな。」
「「はい。」」
「朝早いというのに元気だな。」
「それは修学旅行が楽しみだからです。」
「ハハハ。でもその前に、これから講堂に集合して校長先生の話を拝聴する。眠くなっても寝てはいけないぞ。」
念のための出欠確認の後、文句をたれながら講堂へ向かう。
「修学旅行前に校長の話を聞く必要なんてない、と思わないか?」
「あぁ、全く。何が嬉しくて校長先生の話を聞かないといけないのか。」
「静粛に。これから修学旅行に出発するにあたり、校長先生からお言葉を頂きます。」
学年主任の先生の言葉とともに、皆雑談をやめる。
「皆さん、おはようございます。」
「「「おはようございます。」」」
「さて、この修学旅行は東大附属高校にとって伝統のある行事です。私も何十年も前に皆さんと同じように修学旅行への出発を前にして、つまらない校長先生の話を聞いていました。・・・・」
(校長先生って、東大附属高校出身だったんだね。って、樹君、寝ちゃだめよ。)
(・・・・何とか耐えられてる。)
(今一瞬寝かけてたでしょ。)
(大丈夫。立って寝られるような器用な真似はできないから。)
(本当に?)
(本当に。)
「・・・・この平和は先人達が自らの命を賭して作ってくれたものです。そして、皆さんにはこの平和を守っていく使命があります。しかし、今はまだ学生。短い修学旅行ですが、気兼ねなく楽しんできて下さい。皆さんが無事戻ってこられることを祈念して、出発の挨拶と致します。」
「校長先生、ありがとうございました。事務連絡の後、生徒諸君はこれからバスで日光へ向かう。普通科1組から講堂を出て、バスに乗るように。」
学生主任の先生から修学旅行における注意事項や今後の予定などの連絡があった後、バスへ移動した。
(座席は決まっていないけど、樹君はどうするの?)
(前の方の席に座って寝ることにする。)
(分かった。じゃぁ、私は美沙たちとおしゃべりすることにするね。)
バスに乗り込んで、席に座ろうとすると、女子の嬌声が聞こえてきた。
「キャー。諒太さんもこのバスなんですか?」
「あぁ、毎年生徒会役員は席に余裕のある魔法科のバスに乗ることになっているからね。」
「じゃぁ、私たちとお話してくれませんか?」
「もちろんだとも。」
「うれしー。」
「桐谷は下級生にモテモテだな。」
見知らぬ生徒が2名バスに乗り込んできたな、と思うと、そのうちの1人が僕の隣に座った。
「ん?」
「君は森林君で、あってるかな?」
「肯定。」
「よかった。私は普通科2年生の涼宮紫。生徒会で会計をしているの。あっちは書記の桐谷諒太。あれでも桐谷家のボンボンだから”楯系”の女子には人気なのよ。」
「そうなんですか。でも、どうして生徒会役員がこのバスに乗ってるんですか?」
「君は高校からの編入生だから知らないのね。東大附属は生徒の自治を重んじていて、修学旅行で生徒がはめを外しすぎないよう監視するために、先生達以外に生徒会役員も修学旅行に同行することが伝統なの。面倒な伝統よね。」




