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竜の女王  作者: M.D
ミセシメ会3
578/688

01

 深夜23時。皆が眠りについた頃、4人の人物が1つの机を囲むように座っている。


「・・・この前振り、ずっと使うんですか?」

「その方が秘密結社的な雰囲気が出て良いかと。」

「樹君が嫌なんだったら止めるわよ。」

「森林君は細かいわね。極細目#1000の紙やすりくらい細かいわ。その紙やすりで森林君の脳ミソを磨いたらいいんじゃない?と言おうと思ったけれど、森林君は紙やすりで磨くまでもなくツルッツルで皺のない脳ミソでしたね。」


 その4人とは、僕、和香、花梨さん、竜胆さんだった。


「それでは、美姫様の非公式同友会である”美姫様による世界支配を目指す会”略して”ミセシメ会”の記念すべき第10回最高幹部会を始めましょう。はい、拍手。」


 パチパチパチパチパチパチ


 僕を除く3人が控えめに拍手をする。


「では、上島副会長、今日の議題をお願いします。」

「はい。今日は遺跡探索での美姫様の華麗な活躍に関する流川会長の手記について精査を行う予定です。」

「ありがとう。その前に、2人にはお土産があります。」


 和香がバクーで買ったアゼルチャイを淹れてジャムとともに全員に配る。


「ジャムと一緒に紅茶を飲むなんて、ロシアっぽいですね。」

「バクーはシルクロードの中継地だったため、ロシア文化も融合されているからでしょう。それに、旧アゼルバイジャンは紅茶の産地だったんですよ。」

「そうだったんですか。」

「濃く淹れた紅茶がまだ残っていますので、おかわりはそれを各自で少量コップに注いでお湯で好みの濃さに薄めて飲んで下さい。」


「美味しい紅茶ですね。柔らかい味がします。」

「そうですね、って、樹君は紅茶にジャムを入れないの?」

「肯定。東京では緑茶には砂糖を入れませんよね?それと同じで、何となく甘い紅茶が苦手なんです。」

「樹様にとっては緑茶も紅茶も同じお茶としてのくくりなのですね。」

「クルクルッポーな鳩よりも愚鈍な森林君の頭の回転が鈍い理由が分かったわ。糖分が足りていないのよ。脳の栄養源はブドウ糖なんだから、もっと糖分を取らないといけないんじゃない?」


 いつもながらに、竜胆さんの僕に対する言葉の暴力が酷い。


「樹様にはチョコレートなどで糖分を摂取して頂くとして、手記の精査を行いましょう。今回は私も同行しましたので、次回の会報に掲載しようと美姫様の活躍をずっと記録していたのですが、500ページを超える分量になってしまったため、余分な贅肉を削ぎ落さなければなりません。」

「事前に読みましたが、不必要な部分は全くないかと。」

「同じく。優美な美姫様への愛が溢れていて、ミセシメ会の会員であれば500ページなんて容易く一気読みできてしまうでしょう。」


 花梨さんと竜胆さんは和香の手記を読了済みのようだったが、


「和香が手記を渡してから1日も経っていないのに、もう全部読んだのですか?僕はまだ100ページも読めていません。」

「このくらい一心不乱に読めなくてどうしますか。」

「やはり、樹君には糖分が足りていないのよ。その胡桃のように小さな脳ミソが一杯になるくらい糖分をとるべきだわ。」


 僕がまだ読み終えていないと言うと、花梨さんと竜胆さんは呆れた様子だった。


「僕のことはいいとして、この手記は少し美姫を美化しすぎじゃないですか?」

「そうですね。あくまで私の目を通した美姫様に関する記録ですので、少々盛っている部分がないとは言い切れません。」

「しかし、誇張とまでは言えないのでしょう?だったら全然問題ないと思います。」

「そうです。小姑のように指で階段の手すりをツツッーとなぞって『ここにまだ埃が残っていますわよ。ふっ。』的な小言を言っていたら、美姫様に嫌われるわよ。・・・いえ、その方が端麗な美姫様についた醜悪な虫がいなくなって良いかも。今後はそうなるように仕向けましょうか、、、」


 竜胆さんは良からぬことを考えてるが、全部聞こえている。


「それでは、今のまま次回の会報に掲載する方向で良いですか?」

「はい。しかし、手記の精査は予定通り行いませんか?流川会長が知らない美姫様の奮闘を樹君なら知っているはずですから。」

「確かに、樹様は美姫様と戦闘に参加されていましたし、私が気絶していた時間もありますので、樹様に補足頂いた方が良いですね。樹様もよろしいですか?」

「・・・了解。」


 否定は許されない雰囲気だったので、頷かざるを得なかった。


「最初の章はバクー空港で食事をして仮眠を取るまでの記録です。」

「それにしても、遺跡探索への同行をとりつけるなんて流川会長は上手くやりましたね。」

「そうですよ!美姫様の活躍を間近で見られるなんて羨ましすぎます。行先が古代遺跡だと、流石の私でもコッソリ後を付けるなんてできませんから。」

「美姫様の侍女をしている私の役得ですね。しかし、そもそも、侍女を同行させずに美姫様を海外に行かせていた今までがおかしかったのです。」

「そうですね。未来の龍野家当主に何かあれば事ですから。美姫様が将官になられたら、私も護衛として連れて行ってもらえるよう取り計らってもらいましょう。」

「龍野副会長、ずるいです。そうなったら私だけ除け者じゃないですか。私も何とかして美姫様と一緒にいられるような方法を考えないと、、、」


「それから、バクーで食事する美姫様の描写は秀逸ですね。文章を読むだけで、美姫様が美味しそうに料理を食べられる情景がありありと目に浮かんできました。」

「ありがとう。私も食事をするのを忘れて普段とは違う美姫様の食事風景に見入ってしまっていましたし、今でもその情景を思い出すといくらでもホルホルできます。」

「流川会長、羨ましいです。私も美姫様と、、、そうですよ、私は美姫様と同じ大学に通っているのですから、学食で食事をご一緒することができるのでした。そこで優雅に食事される美姫様を見て(*´Д`)ハァハァすればよいのです。私としたことがこんな大事なことを失念していたなんて、樹君の脳ミソが胡桃みたいだと笑えませんね。」


 竜胆さんは一々僕を貶さないと気が済まないだろうか。。。

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