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竜の女王  作者: M.D
2173年夏
577/688

31

(違います。)


 即座に美姫が百合子さんの思い違いを否定した。


(それじゃ、どういうことなのかしら?)

(ここを出てから徐々に、と思っていましたが、仕方ありません。私たちのことを掻い摘んで説明します。)


 美姫が僕たちの事情について百合子さんに極簡単に話をする。


(・・・つまり、美姫さんと魂の結合をしたエレナ様の力で樹は魔法使いになって、悪魔の力を使っているわけではない、と。)

(そういうことです。)

(非現実的な内容だけれど、私の身に起こったことを鑑みると、あながち嘘とも言えないわね。美姫さんと樹が年齢以上の実力を有していたのもそのせいかしら?)

(はい。しかし、エレナ様やグレンさんの力をただ借りているだけでなく、特訓によって私たち自身も成長したから、と自負しています。)

(そう。それから、今までも私の知らないところで樹と美姫は思考伝達で会話していたのね?)

(はい。)

(そんなのズルいわ!でも、考えようによっては、これで私と樹の心は繋がったのだから、後は体が繋がれば――――)

(百合子さんの発言は不健全です!)

(どこが?)

(どこがって、、、)


 いつものごとく美姫と百合子さんが言い争いを始めた一方で、


(ザグレドと融合したのがグレンね。覚えておくわ。)

(よろしくお願いしますな。)

(仲良くはしたくはないが、オレは下級魔族だから中級魔族であるガレリアには逆らえん、、、)

(ザグレドは良いとして、グレンはワレと補助具の開発を行っている仲じゃ。無下に扱ったりしたら容赦はせんのじゃ。)

(承知しました。)

(エレナ様、酷すぎます!)


 グレンさんたちも挨拶のようなものをしていた。


(さて、俺様はもう行くとする。長居するとキルカが五月蠅いからな。)

(ヴァロ様、お会いできて嬉しゅうございました。次はいつお会いできますでしょうか?)

(美姫や樹といると面白いことがあるからな。百合子を2人の側にいさせれば、直ぐにでも会うことになるだろう。)

(分かりました。百合子にはそうさせます。)

(さらばだ!クッハッハッー!)


 そう言って、ヴァロ様は姿を消した。


(ちっ!キルカにチクって説教させようと思っていたのに、逃げられてしまったのう。)

(キルカさんには知らせないんじゃなかったでしたっけ?)

(『ワレからキルカに話はせん』とは言ったが、キルカには知らせない、とは言っておらんのじゃ。シィルかギレナから話をさせればヴァロとの約束を違えることにはならんのじゃ。)

(極悪。)


 エレナ様に隙を見せたヴァロ様も悪いのだが。


(そろそろ、ロジャー教授と和香さんを起こした方がよくない?)

(そうだった。2人はヴァロ様の威圧の余波を受けて気絶してしまったんだった。)

(それ、私にやらせて。ガレリアの力を試してみたいし。)

(いいですけど、ちゃんと制御できるんですか?)

(大丈夫よ。)

(百合子の言うとおり。擬魂の殻の中に入ったからといって、妾の精神エネルギー制御が甘くなることはないことを見せてあげるわ。)


 百合子さんがロジャー教授と和香さんの肩に手を置くと、


「「うがっ!」」


 2人が目を覚まし、


「小生たちはどうなってしまったん?」

「『誰がトカゲモドキだ!』との大声が聞こえて幼竜が現れたところまでは覚えているのですが、そのあとすぐ気絶してしまったようですね。」


 ロジャー教授はキョロキョロ辺りを見渡し、和香は頭痛がするのか頭を押さえた。


「そう、幼竜なんよ!あれ?もう、いなくなってしまったん?」

「はい。ギルガメッシュを倒してサッサと帰っていきました。」

「それは残念なんよ。」


「中心にある棺桶にはギルガメッシュが入っているのでしょうか?」

「そうよ。ギルガメッシュを完全に倒しきれなかったから、あの中でギルガメッシュが眠らせてあるの。」

「そうだったのですか。しかし、流石は私たちの美姫様。幼竜に助けられたとはいえ、あの様な強敵であるギルガメッシュと堂々と渡り合えるなんて、もはや史上最高の魔法使いになられたと言えるでしょう。改めて美姫様の侍女になれたことの喜びを感じています。」


 美姫を褒め称える和香がザグレドと被って見えた。


「さて、ここがエリドゥ遺跡の終着地点のようだけれど、クソエロじじぃはこれからどうするつもりなのかしら?」

「うーん、軍用輸送機が小生たちを迎えに来ないと帰れないから、それまではまだ調査出来ていない部分の探索を行うんよ。」

「分かったわ。美姫さんたちもそれでいい?」

「はい。」

「肯定。帰れないんだったら、地上に出ても暑いだけだし。」

「しかし、遺跡探索をするのなら蠍の魔物にまた出くわすかもしれません。危険です。」

「そうなったら今度は私が前に出るわ。和香さんは美姫さんと一緒に後ろで見ていればいいのよ。」


(百合子さんはガレリアの力を使ってみたいだけでしょう?)

(そうよ。いざとなった時にガレリアの力を引き出せないなんて事にならないように、ガレリアとの連携を確認しておきたいの。)

(悪魔の力にのまれないで下さいね。)

(私を誰だと思っているのかしら?)

(百合子さんだったら大丈夫だと思いますが、念のためです。)


 この会話を聞いていたガレリアが何やら百合子さんに呟く。


(これまでの2人の会話からすると、百合子は樹をめぐって美姫と対立しているのかしら?)

(そういう訳でもないのだけれど、美姫さんがいちいち突っかかってくるのよ。)

(妾もヴァロ様をエレナ様と奪い合う仲だから、妾たちは共闘関係みたいね。協力は消極的にするつもりだったけれど、積極的に力を貸してあげるわ。)

(ありがとう。よろしく。)


 その後、残りの遺跡探索が行われ、様々な古代の遺物を収集したロジャー教授はホクホク顔で、軍用輸送機が迎えに来る時間に合わせて地上に戻ったのだった。

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