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竜の女王  作者: M.D
2173年夏
573/688

27

「魔法の撃ち合いはもういいだろう。次は近接戦闘だ!」


 いつの間にかギルガメッシュの手には黄金の剣が握られていた。


 キンッ!


 ギルガメシュが上空から急降下して美姫を切りつけようとするが、美姫とギルガメッシュの間に割って入ってそれを阻止する。


「ほう。切替が速いな。」


(ギルガメッシュが話をしているときに、手のひらに魔導力を集めておいて正解でした。こうしていれば、極直近に限られますが魔法を発動するよりも早く魔導盾を形成できますから。)

(こうなるであろうことはエレナ様が予測しておられましたからな。)

(あ奴のやりたいことなど、ワレにはまるっとお見通しなのじゃ。)

(でも、さっきの樹の魔導盾の発動速度は今までで最速だったんじゃない?)

(グレンさんに教えてもらってから散々練習したし。)

(樹君は、美姫さんのために努力を惜しまずコツコツと鍛錬を続けておりましたからな。)

(樹にしては殊勝なことじゃ。)

(樹、ありがとう。)


 キンッ!キンッ!キンッ!


 幾度かギルガメッシュが切りかかってくるが、美姫と僕は連携をとって難を逃れ続ける。


「接近し過ぎているから、魔導砲で援護もできないわ!」


(百合子さんがああ言いたくなる気持ちも分かるよ。)

(近接戦闘になってからつかず離れずだし、ギルガメッシュは美姫と僕しか狙ってないし。)


(期待外れなど放っておけばよいのだ。)


 !?


 僕たちの思考伝達にギルガメッシュが割り込んできたことに動揺してしまったのだが、


(やはり、貴様らは思考伝達ができるな?そっちの小僧にも女神の加護とやらのおこぼれがあったか?)


(樹があ奴のはったりに引っかかってしまったようじゃのう。)

(はい。ギルガメシュの高速機動への対応として、行動予測をするために情報収集感度を上げ過ぎてしまったのが失敗でしたな。)

(それを逆に利用されて、意図的に樹に向けて放たれた思考を拾ってしまったからのう。)

(これは今後の課題としないといけませんな。)


 実際には割り込んだように見せていただけだった。


(反省。)

(でも、どうしてギルガメシュは私たちが思考伝達ができることに気が付いたのでしょうか?)

(2人にそういう素振りがあったからであろう。)

(達人ともなれば、僅かな違和感の積み重ねからその要因を推察できますからな。)


(余との戦いの最中に思考伝達で会話するとは、ずいぶん余裕なことだな。余もなめられたものだ。)


 そう言った直後から、ギルガメッシュの剣戟が苛烈さを増した。


(まずいです!これ以上は対応できません!)

(もう少し耐えるのですな。)

(そうじゃ。さすれば、あ奴の動きに慣れてきた美姫が反撃を開始するのじゃ。)

(樹、頑張って。)

(了解。)


 キンッ!キンッ!

 バンッ!バンッ!


 僕の防御動作に合わせて美姫が魔導弾をギルガメッシュに撃ち込む。


(何!?)


 ギルガメッシュは予想外の反撃に思わず距離をとった。


 グゴーー!!


 そこに百合子さんの魔導砲が襲い掛かるが、ギルガメッシュは事もなさげにそれを振り払う。


(余を引かせるとは見上げたものだ。しかし、人間にこのようなことが出来るわけがない。貴様ら、何者だ?)

(・・・。)

(だんまりか、、、それなら、言わせるまでだ!)


 ギルガメッシュが動き出そうとした、まさにその時、


(ギルガメッシュ、待ちなさい。)

(母様、、、どうして余を止めるのですか?)


 壁に鎖でつながれた悪魔と思われる声がギルガメシュを引きとどめた。


(その人間からは八竜王のうちの第六王エレナ様と同じ精神エネルギーの波動を感じます。)

(何ですと!?であれば、あの小娘は本当に女神の加護を受けているというのですか、、、)

(えぇ。あのまま突っ込んでいったら、敗者はあなたでしたよ。)


 悪魔は冷静に状況を見極めていたようだ。


(あ奴がワレの精神エネルギーの波動を感じて、その意図を察してくれて良かったのじゃ。)

(エレナ様が私たちを助けて下さったのですね。ありがとうございます。)

(隠していた精神エネルギーを解放すれば、あ奴も気が付くと思ったのじゃ。そうでなければ、あ奴の言うとおり、ワレがギルガメッシュとやらを止めておったのじゃ。その時は原型を留めておるかどうかは分からんがのう。)


 エレナ様が何やら怖いことを言っている。


(エレナ様の加護を受けた小娘が、どうしてここに?母様を解放しに来てくれたのでしょうか?)

(妾は好きでここにいるのです。解放などしてほしくありません。)

(しかし、母様の精神エネルギーも残り僅かですし、余としてはせめて母様を拘束している鎖を――――)

(待ちなさい!・・・あぁ!私の愛しきお方がこちらに来られます!)


「ちっ!母様を拘束した、あの忌々しいトカゲモドキがここに来るだと!」


 怒りからか、思考伝達ではなくギルガメシュは思わず口に出して言ってしまっていたが、その言葉を聞いて、僕はいやーな予感がした。

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