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竜の女王  作者: M.D
2173年夏
569/688

23

「今更だけれど、ここで索を切られたら、私たち一巻の終わりじゃないかしら?」


 昇降機を動かした後で、百合子さんが思わせぶりに呟くと、


「百合子君、怖いことを言うのは止めてほしいんよ。」

「それに、そういうことは動かす前に言って下さい!」


 ロジャー教授と和香が焦りだす。


(もっともらしいことを言っているけれど、あの女はそんなこと全然思ってないよね。)

(同感。あの顔は百合子さんが悪巧みをしているときの顔だ。)


「大丈夫よ。百合子さんの表情からして真剣にそんなこと思っていないから。」

「肯定。どうせ、索を切られても僕たちが魔導飛行でこの籠を持ち上げればいい、と思っているんでしょうし。」

「ちっ、美姫さんと樹にはお見通しだったか。」

「百合子さんと1年も一緒にいれば、意地の悪い考えを見抜くこともできるようになります。」

「同意。でも、確率は低いけど。」

「ということは、ロジャー教授は2年以上百合子様の指導をされていながら、百合子様の考えを見抜けなかったことになりますね。」

「・・・小生は忙しくてそれ程頻繁に百合子君と話をしていないんよ、、、」


 ガタンッ

 チンッ


 籠の中のベルが鳴って、最下層に着いたこと告げる。


「ふざけるのはここまでにしましょう。」

「鬼が出るか蛇が出るか。」

「注意一秒、怪我一生。」


 魔導盾を発動して扉の向こう側からの攻撃に備えていたが、、、何も無かった。


 ゴゴッ


 石造りの扉を手で少しだけ開けて顔を覗かせる。


「ここはちょっとした広間になっているみたいです。」

「食屍鬼が待ち伏せしている様子もないわ。」


 百合子さんも顔を覗かせて周囲の様子を探っていた。


「正面に扉がありますね。」

「あれが次の部屋に繋がっているのよ。他の方向はどう?」

「上上下下、左右左右、BABA、、、問題なさそうです。」

「どういう確認の仕方よ、、、まぁ、いいわ。樹、行くわよ。」

「了解。」


 昇降機の扉を一気に開けて百合子さんとともに籠を飛び出し、四方に銃型補助具を向ける。


「・・・大丈夫そうですね。」

「えぇ。隠れる場所もないようだし、正面の扉だけ注意しておけばよさそうね。」

「扉の先も確認しますか?」

「後にしましょう。」

「了解。」


 安全そうであることを伝えると、美姫たちも昇降機から出てきた。


「遺跡に入ってから初めての部屋のような空間を見たんよ。」

「造りとしては通路と変わりありませんが、何もありませんね。」

「昇降機の乗り降りをするためだけの空間だからじゃない?」

「小生もそう思うんよ。だから、ここには見るべきものはなさそうなんよ。」

「では、次の部屋に参りますか?」

「そうね。ここに留まる意味もなさそうだから、そうしましょう。」


 美姫の指示を受け、次の部屋に続く扉を手で少しだけ開けて顔を覗かせる。


「うわっ!」

「樹、どうしたの!?」

「石像がずらっと並んでます。」

「こんなところにある石像が普通の石像なわけないわよね、、、」

「肯定。絶対に動きますよ、あの石像。」

「注意していくわよ。」

「了解。」


 扉を少しだけ開けて、百合子さんとともに次の部屋に滑り込む。


「・・・動かないわね。」

「途中まで進まないと動かないのかもしれません。」

「そこで動く石像に前後を挟まれる、という訳ね。ありがちな展開だわ。」

「とりあえずは大丈夫そうです。」

「石像が動く条件がこの部屋に入った人数でなければ、だけれど。」

「それはそれで嫌な条件ですね。。。」


 しかし、美姫たちが入ってきても石像は動かず、百合子さんの心配は杞憂に終わった。


「おぉ!これは良い石像なんよ。」

「ロジャー教授、むやみに石像に触らないで下さい!動いたら危険です。」

「美姫様の仰る通りです。って、石像にのぼろうとなさらないで下さい!」

「小生の勘は大丈夫だと言っているんよ。」

「その勘は当てになるんですか?」

「残念ながら、これだけ無鉄砲なことをしても生き延びられてきておられなので、ある程度は当たるのではないかと思われます。」


「フッハハッ。その通りだ。ここの石像は動かないようにしておいた。」


 突然、声がしたのと同時に、部屋の反対側にある扉が開く。


 ピカッ


「眩しっ!」


 扉から見えたその姿は、光り輝く黄金の鎧を着た美大夫だった。

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