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竜の女王  作者: M.D
2173年夏
563/688

17

 休憩後にしばらく歩くと、目の前の通路が途切れていた。


「何だこれ?」

「堀?があって、先に進めないね。」


 近づくと、通路を分断するような深い横長の凹みがあることが分かった。


「落下罠の仕掛けが作動した後に故障したか何かで、通行不可能なままになっているのではないでしょうか?」

「深くはないけれど向こう側まで結構距離があるから、魔導飛行で小生たちを向こう側に運んでほしいんよ。」

「それはいいとして、この堀の横に空いている穴は深そうよ。先が見えないもの。」


 百合子さんは勇敢にも堀の淵に立って横穴を覗き込んでいる。


「そうなんですか、、、って何か聞こえませんか?」


 ガサガサガサガサガサガサガサガサ


 聞き覚えのある嫌な音が聞こえる。しかも、大量に。


「私と樹以外は退避!」


 美姫の指示を横で聞きながら堀の淵に近寄ると、ワラワラと横穴から出てくる多数の蠍の魔物が見えた。


 バシュッ!ボンッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!ボンッ!バシュッ!バシュッ!


 徹甲魔導弾と散乱魔導弾で向かってくる蠍の魔物に応戦する。


「撃てば当たるのはいいけれど、これだけ数が多いとキリがないね。」

「同感。倒しても倒しても横穴から無限に湧いてくる。」

「それに、少しずつ距離を詰められてるし、もしかしてこれって危機的状況?」

「肯定。百合子さんにも参加してもらった方がいいかもしれない。」

「そうね。」


 ドゥンッ!ドゥンッ!バシュッ!ボンッ!バシュッ!バシュッ!


 美姫の要請に即座に百合子さんは答えてくれた。


「やっぱり、銃型補助具を使った私の魔導弾では蠍の魔物の外骨格に弾かれてしまうみたいだわ。」

「それでも、戦線を後退させれられていますから助かります。」

「このままだと埒が明かないから、魔導砲で薙ぎ払ってもらえませんか?」

「先が見えないくらい横穴は深かそうだから、威力を抑えれば蠍の魔物だけに当てられそうね。」

「では、お願いします。」


 ゴー―!


 百合子さんが魔導砲を放つと、魔導砲に押されて蠍の魔物の歩みが止まる。


「おっ!いけるんじゃないですか?」

「駄目ね。威力を絞りすぎて蠍の魔物の外骨格に弾かれてしまうから、倒しきれていないわ。」

「遺跡を崩してしまう可能性があるので、魔導砲の威力をどこまで上げれば蠍の魔物を倒せるのか試すことも出来ませんし。」

「だったら、魔導砲で蠍の魔物を横穴の中に押し込んでおいて、その間に堀を飛び越して先に進むとか?」

「それだと、蠍の魔物の方が足が速くて直ぐに追いかれてしまうから、今と状況は変わらないわ。」

「そうですね。どうしたものでしょうか、、、」


 バシュッ!ボンッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!

 バシュッ!ボンッ!ゴー―!


「!?」


 魔導砲を撃った後の溜めの時間を使って蠍の魔物の様子を観察していた百合子さんが何かを発見したようだ。


「どうしました?」

「美姫さん、さっきのをもう一回。」

「分かりました。」


 バシュッ!ボンッ!ゴー―!


「やっぱり!散乱魔導弾に貫かれた蠍の魔物だったら、私の威力を絞った魔導砲でも蠍の魔物の内部に到達するわ!」

「成程。外骨格に穴をあければ、そこから百合子さんの魔導砲で傷を広げられるのか。」

「そうだと思う。これならいけそうよ。樹も散乱魔導弾に切り替えて。」

「了解。」


 バシュッ!ボンッ!バシュッ!ボンッ!ゴー―!ゴー―!


 美姫と僕が散乱魔導弾で蠍の魔物の外骨格に穴をあけ、百合子さんの魔導砲が止めを刺していく。


「倒しても倒してもまだ向かってくるなんて、こいつらどれだけいるの?って話よね。」

「これほど執拗に僕たちを狙う蠍の魔物の目的って何だろう?」

「樹、分かってて言ってるでしょ。私たちは餌だと思われているのよ。」

「そうよね。こんな遺跡の中で餌になるようなものなんて、仲間か、遺跡の中に入ってきた人間や動物しかないものね。」

「これだけ数がいたら、分け前なんてほんの僅かだろうに。」

「だから独占しようと我先に襲ってくるのよ。」


 バシュッ!ボンッ!バシュッ!ボンッ!ゴー―!ゴー―!


 どれだけ蠍の魔物を倒したのか分からなくなる程、時間が経った頃、


「だいぶ向かってくる数が減ってきたみたいだけれど、樹は辛そうね。」

「でも、後もう少しよ。樹、へばらないで頑張りなさい。」

「了、、解、、」


 バシュッ!ボンッ!バシュッ!ボンッ!ゴー―!ゴー―!


 最後の力を振り絞って散乱魔導弾を撃ち続け、限界を超えようかというところで、漸く蠍の魔物の進撃が止まる。


「お、終わった?」

「そうみたい。樹、お疲れ様。」

「よくやったわ。少し休んでなさい。」

「2人とも疲れているのに、僕だけ休むなんて出来ない。」

「いいのよ。私たちは樹よりも魔力量が多くて余力があるから大丈夫。」

「そうよ。樹はもう限界なんでしょ?休むのも仕事のうちよ。」

「・・・了解。後はよろしく。」


 そう言って、僕はその場にへたり込んだのだった。

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