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次の日、朝食を取った後、遺跡探索を再開した。
バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!
「歩き始めて10分もしないうちに、蠍の魔物と遭遇するなんて幸先悪いね。」
「寝込みを襲われなかっただけでもマシと思しかない。」
「それもそうね。」
バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!
美姫とともに徹甲魔導弾を叩き込んで蠍の魔物を駆逐する。
「倒した数は樹の方が多かったみたい。」
「2回目だからか、落ち着いて対処できたのが良かったのかも。」
「それより、樹が昨日使っていた銃型補助具の方が若干反応が鈍かったせいじゃないかな?」
今日の朝、美姫と僕は互いの銃型補助具を交換していたのだった。
「蠍の魔物を相手にして銃型補助具の反応を気にできるなんて美姫さんは余裕綽々ね。」
「美姫様なら当然です。」
「エクセレントなんよ!」
嫌味を言う百合子さんと、それを意に介さない和香とロジャー教授。
「ふと思ったんですが、僕たちはこうやって徹甲魔導弾で蠍の魔物を一掃できるけど、以前、遺跡の調査にきた調査団はどうやって対処したんでしょう?」
「調査団には魔法使いだけでなく一般兵もいたのだから、手榴弾とか強装弾とか通常弾以外の弾薬で対処したんじゃない?」
「それに、上級魔法使いもいたのだから、蠍の魔物の外骨格なんか気にならなかったのかもしれないわ。」
「であれば、遺跡の調査から帰ってくる者がいなかった理由は、蠍の魔物とは別にあることになりますね。」
「そうなるんよ。」
何となく不穏な空気が漂ったが、気にしても仕方がないので先に進む。
(僕たちにはエレナ様やグレンさんがいるから、このエリドゥ遺跡に悪魔がいると分かってもわりかし平気でいられるけど、他の人たちは不安そうにしてる感じがする。)
(それはそうよ。だから、安心させるためにも私たちが楽勝しているように見せてあげないといけないね。)
(同意。)
(お話し中ですが、この先に魔物がいるようですな。)
(またですか、、、)
バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!
再び蠍の魔物との交戦に入った。
「さっきより数が多い!」
「それなら、これはどうかな?」
バシュッ!
ボンッ!
美姫が撃った徹甲魔導弾が蠍の魔物の手前で爆発し、飛び散った弾頭部分が複数匹の蠍の魔物を貫き、致命傷は与えないものの行動を鈍らせる。
「おぉ!これなら、前にいた蠍の魔物に詰まって、後ろは乗り越えるため少しだけ進撃が遅れるから時間を稼げる。」
「最初に徹甲魔導弾を見せてくれた時に樹が言っていた案に、私の桜吹雪を組み込んだ散乱魔導弾という魔法をエレナ様と一緒に作ったのだけれど、こんなところで役に立つとは思わなかったよ。」
バシュッ!ボンッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!ボンッ!バシュッ!バシュッ!
その後も散乱魔導弾と徹甲魔導弾を撃ちまくって蠍の魔物を撃滅していく。
「何も考えてないようにただ向かって来られると、でかくて数が多いだけに心理的圧迫がきつい。」
「そうね。戸惑ったり怯んだりしないから虫は嫌いなのよ。でも、もう終わり。」
バシュッ!
屍になった仲間を踏みつけ乗り越えて向かってこようとしていた最後の蠍の魔物を無力化して、ホッと一息ついた。
「お疲れ様でした。」
「ありがと。今回は数が多かったから、少し疲れたよ。」
「それでは、私と百合子様で蠍の魔物を退かして通り道を作りますので、その間、美姫様、樹様は休憩なさっていて下さい。」
「分かった。百合子さんもお願いします。」
「いいわよ。でも、この蠍の魔物はどこから湧いてくるのかしらね?」
和香とともに蠍の魔物を通路のわきに退け始めた百合子さんの問いに、
「私もそれを疑問に思っていました。この遺跡は通路ばかりで部屋がないのに、蠍の魔物はどこを寝座にしているんだろう?って。」
美姫が答える。
「この先に蠍の魔物がうじゃうじゃいる魔物部屋があるとか?」
「樹、気持ち悪いこと言わないで。それに、ここまで無かったのに、いきなり部屋が現れるとか考えにくいわ。」
「そうですね。ただ、魔物の数も徐々に増えてきてますから、部屋に準ずる何かはあるのだと思います。」
美姫は百合子さんに同意しつつも、蠍の魔物が湧き出る地点があることを示唆した。
「それって何だろう?」
「私にも考えつかないから、これからは今まで以上に警戒して進むしかないわね。」
「そうですね。樹の負担が増えて申し訳ないけれど。」
「了解。」
(グレンさんはどう思われますか?)
(『何も言うでないのじゃ』と、エレナ様に指示されていますので、申し訳ありませんが、何もお教えできません。しかし、すぐに分かると思いますな。)
(エレナ様がそう言うのなら僕たちを驚かそうとしているんでしょうし、碌でもない事なんでしょうね。)




