05
今日は修学旅行2日前で、放課後に普通科と魔法科で構成される各班で修学旅行時の行動を決めるための時間がある。
「普通科の生徒ってどんな人たちかな?」
「あまり張り切りすぎていないと嬉しい。」
「樹君、もうちょっと修学旅行を楽しもうという気を起こそうよ。」
そんなことを話しながら僕と美姫さんが割り当てられた教室に向かうと、普通科の生徒はもう来ているようだった。
「龍野さんだ。」
「あ、本当だ。やっぱり綺麗。」
「当たりくじを引けたんだ。ラッキー。」
(私、あんなふうに言われるのは嫌。)
(同感。美姫さんは賞品なんかじゃない、っていうのに。)
(そうじゃのう。ワレが懲らしめてやろうかのう。)
(いえ、エレナ様にそこまでして頂かなくても大丈夫です。)
普通科の生徒を見ると、何も言わなかった生徒の中に見知った顔を見つけた。
「あれ、広瀬?」
「森林か。久しぶりだな。」
「東大附属に合格していただなんて、知らなかった。」
「俺は森林が東大附属高校の魔法科に入学したことは知っていたけどな。」
「そうか。ごめん。」
「いいさ。高校から魔法科に編入したのは森林と龍野さんだけだから、東大附属高校の生徒であれば誰でも森林と龍野さんの名前くらいは一度は聞いている。」
「そうか。」
「それに比べて、普通科は高校から編入することが珍しいことでもないから、森林が知らなくても仕方ない。」
「樹君の知り合い?」
美姫さんが不思議そうに聞いてくる。
「広瀬とは同じ中学だったんだ。」
「そうなんだ。知り合いがいてよかったね。」
「皆うるさいぞ。それに広瀬、知り合いと話すのもいいが自己紹介からはじめないか?魔法科の2人ともまずは席に着いてくれ。」
普通科の生徒が着席を促す。
「そうね。」
「了解。」
と言いながら、僕と美姫さんは普通科の生徒の前に座った。
「魔法科の2人も来たことだし、自己紹介から始めよう。まずは俺からでいいかな?」
「あぁ、いいぜ。」
「斎藤隆です。この班の班長を任されている。部活はバスケットボール部だ。中学から東大附属だからこの修学旅行は楽しみにしていたので、一緒に有意義な修学旅行にしよう。」
斎藤君は一番手と言うこともあり、硬めの挨拶をした。
「順番は時計回りにしよう。次は佐野だ。」
「佐野稔です。部活は野球部に所属していて、斎藤と同じく中学から東大附属です。龍野さんと同じ班になれて超嬉しい。それでさぁ――――」
「中田明美です。部活は斎藤君と同じバスケットボール部。」
「おい、中田、ちょっと待て。俺の話が終わってな――――」
「私は2人とは違って高校から東大附属だから、魔法科についてはほとんど知らないの。修学旅行中にいろいろ教えてくれたらうれしいな。」
佐野君が美姫さんに話しかけようとするのに、華麗に自己紹介をかぶせた中田さんを佐野君が恨めしそうに睨んでいた。
「次は広瀬、よろしく。」
「広瀬浩二です。部活は囲碁・将棋部で、囲碁をやっています。俺も高校から東大附属だから、魔法科でどんなことをしているのか後で森林に教えてもらうことにするよ。」
「広瀬って魔法科の森林君と同じ中学だったの?」
「あぁ、一学年一クラスしかない小さい中学だったから、森林のことはよく知っていたはずなんだけど、魔法の才能があることは知らなかった。」
「三輪、広瀬、話は後にして自己紹介をしてくれないか?」
自己紹介の途中で話を始めた広瀬と女子生徒を斎藤君がとがめた。
「ごめんごめん。三輪茜です。部活は吹奏楽部でサックスを担当しています。文化祭の時には吹奏楽部で演奏会をするから聞きに来てね。」
「佐伯弘子。文芸部。美姫、久しぶり。」
「えっ?・・・あ!ヒロポン!」
「ヒロポンはやめて。それと気づくの遅すぎ。」
「ごめん。雰囲気が変わっていたから気が付かなかったよ。」
「弘子は龍野さんと知り合いなの?」
「同じ小学校だった。」
「そうなんだ。じゃあ、龍野さんは知ってるかもしれないけど、弘子は無口なだけで怒っているわけじゃないから気にしないで。ちなみに弘子も私も中学から東大附属よ。」
「三輪、静かにしろ。」
再び途中で話を始めようとした三輪さんを斎藤君が止めた。
「それじゃ、魔法科の2人も自己紹介してくれないか?」
「龍野美姫です。高校から東大附属の魔法科に編入して補講を受けているから、部活には入っていないの。修学旅行は楽しみにしていたんだけど、ヒロポンにまた会えて同じ班になれるなんて思いもしなかったから嬉しい。」
「森林樹です。広瀬とは同じ中学で、高校から東大附属の魔法科に編入したから、美姫さんと同じく放課後は補講を受けているので部活には入っていません。よろしくお願いします。」
「龍野さんと同じ班になれるなんて、幸運だわ。普通科の生徒はみんな龍野さんと同じ班になりたいと思っていたから、皆に自慢しよ。」
「そんなこと、、、」
「龍野さんは美人だから、男子なんて龍野さんのことを見るためにわざわざ用事のない魔法科の廊下を歩いたりしていたのよ。それに、教科書に載るような英雄の娘さんと直接話ができるなんてすごいじゃない!」
美姫さんは英雄の娘といわれるのがあまり好きじゃないから止めさせようとしたときだった。
「茜、うるさい。」
「え!?」
「美姫が迷惑がってる。」
「あ、龍野さんごめん。ちょっとはしゃぎすぎた。」
「ヒロポン、ありがとう。」




